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審判委員会がJリーグ前半戦を分析…判定における課題とは

2015.07.04

日本サッカー協会審判委員会記者ブリーフィングが実施された [写真]=川端暁彦

文=川端暁彦

 7月3日、日本サッカー協会審判委員会記者ブリーフィングが東京都内のJFAハウスにて開催された。同様のブリーフィングはシーズン前などにも審判の判定基準などを説明する場として設けられてきたが、「ちょうどJ1が折り返しになるタイミングで、開幕してここからの判定についてのスタンダードに加え、ミスも含めたその原因の追究や、シェアしていくべきことを伝えられれば」(上川徹審判委員長)という考えでの開催。50人近い記者が集まり、「こんなにたくさんの方に来ていただけるとは思っていなかった」と上川委員長が語る中で活発な意見交換が行われた。


「映像に出てくる選手や審判を批判する意図ではなく、判定でどういうことが起きているかを理解していただければと思う」と切り出した上川委員長はJリーグの試合シーンを切り出しながら、各判定について順次説明。今季の傾向として「インテンシティが高まってコンタクトプレーが増え、非常に激しいプレーが多くなっている」と説明した上で、「力の強弱ではなくて、それがフェアなタックルなのか、アンフェアな反則なのかをしっかり見極める必要が強まっている」と分析した。

 その具体例として、激しいコンタクトが相次いだサガン鳥栖清水エスパルスの一戦などにフォーカスしながら、笛を吹かないプレーと吹くべきプレーの差を明示。「ボールにプレーしようとしているのか、単に相手の邪魔をしているのかを見極めないといけない」(上川)とその意図を説明した。

 激しいプレーと反則プレーのライン上にあるものとして協会内でも議論になった例として挙がったのは、コンサドーレ札幌対ロアッソ熊本戦でのFW巻誠一郎のゴールだ。CKに対して巻とGKが競って押し込んだ形で、「一見すると巻選手がGKごとボールを押し込んだプレーにも見える」(上川委員長)。ただし、映像をじっくり観てみると、「巻選手が先にボールへ触っており、GKもキャッチングできていない。ひざを入れているようなこともなく危険さはまったくないし、ボールにプレーしようとしている。ボールの状態もニュートラルだった。GKは特別なルールで守られるという規則もかつてあったが、現在は普通のフィールドプレーヤーと同じ基準で反則かどうかを見極めることになる」として、ゴールを認めた主審の判定を支持している。ちなみにヴァイッド・ハリルホジッチ監督にも意見を聞いたそうで、「この判定は正しい」との答えだったという。

 その上で判断を誤ってしまったケースについても幾つか説明が行われた。たとえば、FC東京サンフレッチェ広島の一戦で、FC東京のDF森重真人のタックルがペナルティーエリアへ侵入した広島のMF柴崎晃誠に入ったプレーはファウルとすべきだったとミスを認め、FC東京ガンバ大阪の一戦でFC東京のFW武藤嘉紀がG大阪のMF明神智和を削ったプレーについても「レッドカードを提示すべきだったが、レフェリーに死角になってしまっていた」とした。

 全体としては3人の審判で見る上での限界を感じるシーンが多かったのも印象的だ。たとえば、清水と鹿島アントラーズの一戦では、清水側が明らかなハンドリングでシュートを防いでいたのだが、主審と副審の位置からは確信を持って判定するのが難しく、結果として見落とされてしまっている。廣嶋禎数トップレフェリーインストラクターは「明らかに退場でPKとするのが正しい判定なのだが、副審からは確信を持っていない“ダウト”の状況で判断はできない」とした。確かにピンボールのようにボールが行き交う状況下で人垣もできている中で、死角を作らないことは現実問題として難しい。

 一方、ベガルタ仙台との試合で清水MF河井陽介が悪質なファウルで退場となったプレーでは、主審・副審ともにどういった形で足が入ったのか見えない状況だったにもかかわらず、第四審がコミュニケーションシステム(無線通信)を通じて主審に状況を伝え、退場処分という正しい判定を下すことができたとした。

 今季多くの議論を呼んだゴールラインを割ったか割っていないかの微妙な判定についても言及された。川崎フロンターレヴィッセル神戸の一戦では、ライン上で神戸の選手が絶妙にクリアしたにもかかわらず、ゴールインの判定が下ってしまった。これについて副審出身の廣嶋トップレフェリーインストラクターは「ボールの軌道を見る限り、後ろにはいっていないことも明らかで、これはミスです。その前にGKとの接触について主審に任せればいいのに見にいってしまっていることと、オフサイドについて意識を向けてしまい過ぎたことがミスを生んだ」と反省点を述べる。

 ただ、「特に空中にあったボールの判定は難しい」(上川委員長)のも現実だ。ジェフユナイテッド千葉セレッソ大阪の試合ではFW森本貴幸のヘディングがラインを割ったかどうか際どい場面でノーゴールと判定されている。これは映像を何度見ても確かに際どく、「完全にラインを越えない限り、ゴールとは言えない。このケースの結論としては、正しい判定だったかがそもそも『分からない』。真横の映像がないと結論は出せない」と上川委員長が言い、「ダウトでは得点と言うことはできない。確証があって初めて得点と言える」と廣嶋トップレフェリーインストラクターも言うように、“疑わしきはノーゴールに”というのが一つの基準となっていることを明かした。

 川崎との試合で湘南ベルマーレMF菊池大介のロングシュートがバーに当たってラインを越えたかに見えたシーンもそうだが、流れの中で人間の視力の限界を越えて放たれるシュートについての判定はとりわけ難しい。上川委員長は「『物理的に無理では?』といった、いろいろな議論が出ていると思うが、一番はゴールラインテクノロジーを置くしかないと思う。ただ、14台のカメラを設置するとなると屋根が必要になるし、すべてのスタジアムに設置するのは難しいし、そもそもお金もかかる」とコメント。打開策として欧州で採用されているような「追加副審を置く」アイディアもあるようだが、コスト面を度外視しても「平日開催の場合は全員がプロの審判員ではないので、絶対数が足りなくなる可能性が高い」ことがネックになるとした。

 他には川崎との試合でFW大久保嘉人を倒したG大阪DF岩下敬輔のプレーがイエローカードとして判定された場面や、ナビスコカップのFC東京ヴァンフォーレ甲府の試合で得点した武藤がオフサイドのように見える場面、浦和レッズと仙台の試合でオフサイド判定への解釈が分かれた場面などを取り上げてルールの解釈やルールそのもの、あるいは判定の機微について解説が行われた。

 今回はメディア関係者のみを対象としたブリーフィングだったが、記者陣からは「もっと逐次的に個々の判定についての審判委員会の見解を示していくべきではないか?」との声も出た。これに対して上川委員長は「ファン・観客の理解のために、Jリーグと一緒になって何かそういうチャンネルを持てればとは考えています。どの映像をどう使うかとか難しいことはあると思いますが、そういう機会があればとは思っている」と述べて、将来的に審判委員会が判定についての見解を示す場を作る可能性があることを示唆した。審判委員会の見解が素早く示されれば、判定に対するストレスは軽減されるはず。そもそもミスジャッジではない、ルールが誤解されているケースも多々あることから、逐次的に審判委員会の見解を示す意義は十二分にあるはずだ。

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