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【インタビュー】一番「邪魔」なのは「感情」? 風間八宏の“コミュニケーション術”とは

2023.03.10

[写真]=野口岳彦

 川崎フロンターレや名古屋グランパスといったプロチーム、桐蔭横浜大や筑波大といった大学でのこれまでの指導経験に加え、サッカークラブ『トラウムトレーニング』では子どもたち、新たに始めた『風間塾』では指導者に対しても育成を行う元日本代表の風間八宏氏。

 2021年にはアカデミー技術委員長としてセレッソ大阪の育成に携わり、2022年に男子U-15、U-18、女子U-18のクラブユース選手権を制するなど結果も出している。

 これまでのプロ選手指導経験だけでなく、子どもから指導者まで幅広く育成に携わる風間氏が、実際に現場で活用しているグループコミュニケーションアプリ『BAND』になぞらえ、“風間流コミュニケーション術”について聞いた。

インタビュー=小松春生
写真=野口岳彦

———現在、風間さんはC大阪アカデミー技術委員長という立場です。またサッカークラブ「トラウムトレーニング」、指導者養成の「風間塾」など、子どもたちから大人の指導者に至るまで、さまざまな層に指導をしています。

風間 スクールからアカデミーまでの仕組みの構築、指導者の質の向上、そしてそれを選手にどう還元していくかがC大阪での大きな仕事の一つです。自分自身ではトラウムというスクールとチーム、スペトレがあり、そこを軸に全国へ拠点を広げているところです。同時に指導者のつながりも大切にしていて、風間塾をC大阪のスタジアムで行いました。

 今、これまで関わってきた選手や指導者もどんどんつながってきています。昨年の大学選手権で優勝した桐蔭横浜大は立ち上げ時に僕が監督を務めたチームで、今の監督の安武亨はその2期生。僕が筑波大の監督時代に教えていた選手も、学びに来ていた指導者も今、現場にたくさんいます。指導者も子どもたちも理解が変わり、20年前から言ってきたことが今つながって、形として表れてきています。

———Jリーグの監督など、現場での風間さんを請う声もあった中で、アカデミー技術委員長に就任したのはなぜでしょう。

風間 Jリーグや大学で監督、日本サッカー協会で理事などもやってきましたが、結局「選手の技術をもっと伸ばす必要がある」ということに行きつきました。20年くらい前に「サッカーが面白くなければ観客は入らいない」と僕が言い始めた中、選手がもっとサッカーを理解しないといけないと思い、スクールを最初に始めました。10万人の子どもたちにちゃんとした技術を教えたかったんです。筑波大に在籍していた谷口彰悟(現:アル・ラーヤン)なども、当時スクールにも参加してくれていました。Jリーグに行ってからももっと面白いサッカーをするには、まず選手の技術を伸ばす必要がある。ただ、海外から選手は簡単に来てもらえないし、そうなれば育てなければいけない。指導者に対して、もっと仕掛けていかないといけないと以前から思っていた中で、今に至ります。結局はすべて同じで「楽しいものを見たい」「選手に躍動してほしい」からです。

———現在子どもから大人まで、幅広い層の人たちを指導する立場ですが、「指導」ということについて、どう見えていますか?

風間 まず、教えを受けている人たちは選手も指導者も、「明確に見えていない」んです。例えば「目を揃えること」がグラウンド上でのテーマとしてあります。同じグラウンドにいても見えているものは個人で違う。それを揃えるために僕は「技術を6項目に分ける」(※1)ことをしました。そのすべてを定義付けした。するとみんなに伝わるようになります。ただ、この6項目を練習中にすべて直接言ってしまっては「注意しているだけ」になる。6項目の前提は、「どこに目を向けさせるか」にあります。これがあれば目を揃えやすくなり、サッカーが楽しくなる。そして、それはすべて武器になります。そうしたら今度は基準を作ってあげます。基準は数値として示す。正確に「何回」できるか、どのくらいの「速度」でできるか、といった形です。「定義は言葉、基準は数値」。そうすれば、さらに目が揃っていきます。

(※1)「止める」「蹴る」「運ぶ」「受ける」「外す」「見る・見ない」

―――風間さん流のコミュニケーション方法、感覚が見えてきたタイミングはあったんでしょうか?

風間 わからないですね(笑)。でも、いろいろなところに行って指導する機会がありますが、初めて指導するグループに対しても「この選手が中心だけど、別の選手がすごく前に出てくるから集団が止まってしまっている」というようなことに気付くようになったんです。そして、それをどう解くかを考えるようになった。だからどういった練習をその日やるか、決めないんです。様子を見て、変えていく。講演するときもそうです。3分ぐらい会場の様子を見て決める。あとは話す内容として起承転結があればいいので。

 やっぱり言葉なんです。人間はすべて言葉で考えます。それをどう使うか。英語だと抽象的で伝わらないかもしれないから日本語を使う。そうすると、受け取った側もそれぞれ明確に考えやすくなる。「止める」と言っても自分と別の人の「止める」は違う。だから定義をするんです。あとは本気で来てくれている人を重視します。その「本気」も人によって異なりますが、例えば指導する場でも、先ほど話したように「本気」の人たちのグループをどう見抜いていくかを頭に入れる。言葉や定義、形を持っていると、それがすごく見やすいんです。そして、僕は感情を言わないようにしていて、感情と感情の話でなければ、必ず見抜くために必要なものが出てくる。それを探すんです。

 特別に僕が発明した理論は無くて、むしろ当然の理論です。それをしっかりやれば、みんなもそうなる。それがわかってくれれば、僕は手を動かさずに伝えるだけでよくなります。僕がやって1チームできるようになるより、僕が手を出さずに10チームまとめてできるようになるほうが良いに決まっています。

———スクールや指導者講習は学ぶ意欲がある人がいる場なので、学びたい意識が強いと思います。一方、プロ選手の場合、勝ちたい気持ちはありますが、また少し違う感覚でサッカーと向き合っている人も多いと思います。風間さんの有名なエピソードとして川崎Fの練習で中村憲剛さんに「ボールが止まっていない」と指摘した話があります。

風間 よく覚えてないんですけどね(笑)。

———ここまで話していただいた「見抜いて、止まっている部分を解く」ために生まれた言葉でもあるのかなと。

風間 もちろんです。グループの技術の基準になるのは憲剛だとわかっていて、「下手だな」と言ったけど、後から指摘されて言ったことに気付いたくらいなので、それくらい普通のことなんです。

 それとみんなが勘違いすることとして、「うまくなる」と「勝つ」は別と言う人がいますが、一緒なんです。そこを頭の中に入れない人は止まってしまう。そのためのコミュニケーションはすごく取っています。Jリーグの監督時代は1時間ちょっとくらいをグラウンドで直接指導する練習時間としていました。あとは1時間くらい自由にトレーニングさせる。頭の中を整理させるんです。すると、どれくらいやれば基準に達するかに選手自らが考えて挑戦するようになります。その時間がすごく大切で。そういう意味では、少年に対しても、プロ選手に対してもアプローチの仕方はほとんど変わらないと言えますね。

———「コミュニケーション」とは、「会話」や「相手の気持ちを汲む」といった意味が浮かびますが、風間さんとしては、子どもでも大人でも、何かを解決するためのアプローチは一緒で、そのための行動が結果として「コミュニケーション」になっているということでしょうか。

風間 そうです。だから、コミュニケーションという言葉も使わないですね。「コミュニケーション」とはすごく便利で、でも一番複雑で、一番人をわかりにくくさせている言葉です。「練習前後に会話している」「選手と食事を一緒にしている」といったことは僕にとって必要な「コミュニケーション」とは違います。僕の場合、直接言わずにメディアを通じて言うこともあります。すべては選手へのアプローチのため。だから感情的になってはいけないんです。「感情」というのは一番「邪魔」になるんです。

 いつも、約束事として「人のせい、物のせいにしない」ということを伝えています。それは自分が楽だからなんです。例えば試合に負けた時、誰かのせいにしてしまう。さらには「あの選手が1対1を5回も外したからだ」とまで考えてしまう。でも、僕が考えることは、誰かのせいにする「感情」ではなく、「チャンスを5回から10回に増やす」「他の選手に点を取らせる」といった解決策なので、それを翌日のトレーニングでやってみよう、となるわけです。感情は言葉にして砕いていくと、「そういった感情を抱くようなことだったか?」と思うことも意外とあります。言葉はすごく便利で、使い方を覚えればすごく大事になります。

———この10年あまりで、人とのコミュニケーションツールが多様かつ便利になり、サッカーの分析も手軽にできるようになりました。そういったデバイスやアプリなどはどのように活用していますか?

風間 すべては発信する人間の力が試されるものです。伝える質という点では映像の部分ですね。作った映像が、見た人にわかるように伝わっているのか。よく映像の作り方を教えてほしいとも言われますが、自分事化して考えて作らないといけません。言語化もそうです。ただの伝言になってしまってはダメで、人に伝えるツールをどう使いこなすかが大切です。しっかりとした理論を持った人間が持てば、すごく効果があると思います。人によっては1対1で話してあげる方が伝わることもあるし、大勢の前で言った方がいいケースもあります。それぞれのやり方がコミュニケーションツールを使うことでやりやすくなっているのは間違いないので、すべては使い方ですね。

 あとは便利だからといって、やり過ぎてしまうのも違います。状況を見て、伝える必要がないと感じたら、そうしないことも大切で、一気に伝えてしまうと一方通行にもなってしまいます。僕のコピーになってしまってはダメなので、考えされることも大切です。

―――風間さんは実際にご自身の指導の場でコミュニケーションアプリの『BAND』を使用されています。

風間 自分のスタッフたち含めて使っていますが、その“使い方”の判断もできてきていると思っているので、監督やコーチ陣もうまく活用していると思います。人への伝え方の勉強にもなりますね。グループごとにコミュニケーションができるから、いろいろな可能性があると思っています。個別で連絡することもできれば、データなどを送ることも簡単にできる。こちら側がどれだけ“人に伝える”ことを理解しているかで、すごくいいものになりますよね。

―――『BAND』のようなアプリを活用すれば、新しくチームに加わった生徒もスタッフも、どういったチームなのかを知りやすくなるなど、情報共有にも役立てそうです。

風間 チームの過去の証明になりますし、未来の何かにつながる可能性もありますね。文字だけで伝えることが難しいものでも、画像や映像も伝えることができる。特に映像の部分では、最大5分くらいコンパクトにまとめた映像をスタッフには用意してもらうことが多く、それをすぐ使えることは楽にもなりますね。親御さんにも、例えば活躍した選手の映像を短くまとめたものを展開すれば喜んでもらえるかもしれません。海外に行っても、どこでもスマートにそういったことができることはいいことですね。

―――具体的な使い方はいかがでしょう?

風間 例えば僕の場合、少し前の話にはなりますが、川崎Fなどの監督時代には、分析担当スタッフが映像資料としてDVDにまとめて渡していたこともありました。それはチームとしてやることではありますが、『BAND』を使うと映像データを全体にも個人にも、スタッフ間でもすぐに共有することができる。練習が終わったら選手はすぐに帰って、その間に送ることもできます。伝える側の力で相手の力を引き出すことができれば面白いですし、無駄な時間を使わなくて済みます。簡単に共有できるのであれば、負担を減らすことにもなりますし、いろいろな可能性が増えますね。

———時代の変化とともに若い選手のコミュニケーションの感じ方が変わってきたなどはありますか?

風間 ないですね。若い人は「みんなすごい」と思っているので、「僕に当てはめよう」とか、「僕はこうやってきた」という気はないわけです。今の技術の定義をどれだけ高い基準に持っていってあげられるかだけを考えているので。あとは選手たちが楽しくなって勝っていくようになる。感じることとしては、昔より今の子どもたちの方が、いろいろなものに飢えてると思います。

 僕が選手の時は、指導者の方たちがゼロから教えることを一生懸命作ってきた時代です。その試行錯誤がありつつ、選手も自然発生的にどうやって戦うかを覚えながら戦ってきました。みんながどうするかを考えたし、何かを学ぼうとしていました。でも、ヨーロッパに学ぼうとしても環境が違うわけで、それを学んだところで彼らはもっと先へ行ってしまっている。

 そして今度は、学んだことが正しいかを自分で判断しないといけない時代になりました。日本の場合は自分たちが欲しているものに目を向けだしていると感じています。だから「次の世代に来たな」と思うんです。僕を手伝ってくれているスタッフもそうです。どんどん優秀になっていく。選手も同じです。だからこれからは指導者がもっと大変になると思います。「どうしたらうまくなる」「どうしたら速くなる」といったことを指導者が知っていないと選手の要求に応えられなくなりますからね。

風間八宏さんご利用のコミュニケーションアプリ『BAND』


BANDはグループコミュニケーションをより効率化させるアプリです。

練習や試合の予定が簡単に共有できるお知らせ機能やカレンダー、運営の手間を減らしてくれる出欠管理と投票などの便利な機能、そしてチームの活動が記録できるアルバムとライブ配信まで、スポーツチームの活動に使える様々な機能を揃えています。

BANDを使うことで、連絡の時間や手間を省くことができ、個々のグループの状況に合わせてのコミュニケーションを展開することができます。

また、BANDは他のメンバーと連絡先を交換せずに参加することができるのでプライバシーについても安心できますし、さらに情報保護に関する国際認証を取得しているので、セキュリティも問題なくご利用いただくことができます。

さらに、これだけの機能が揃って無料です!

コミュニケーションはもちろん、チーム運営までラクになるアプリ、BANDを今すぐ活用してみてください!

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