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酷暑の連戦インターハイもあっという間に8強 復活・躍進の名門や実力校が激突

2022.07.27

履正社にPK戦で勝利して、8強入りを果たした湘南工科大学附属高校 [写真]=川端暁彦

 全国高等学校総合体育大会(インターハイ)は酷暑の連戦である。男子サッカー競技は7日間で最大6試合をこなすことになる。来年は北海道、再来年からは福島県のJヴィレッジを中心とした固定開催となるので日程含めた改善を強く期待しているが、今年はこのレギュレーションで戦うしかない。

 26日の3回戦、取材に訪れたのは、徳島スポーツビレッジ。日本サッカー協会の実験で3℃程度の暑さが「プラス」されることが分かっている人工芝ピッチの試合だった。ただでさえ暑いのに、人工的な芝生と組み込まれたゴムチップが熱を反射してくる過酷な環境だ。暑さ対策のノウハウは全国に出てくるクラスの高校であれば標準装備しているものではあるが、それでもキツいものはキツい。

 ルール上のサポートとして、こうした過酷な暑さになる日は、35分ハーフのベースに加え、クーリングブレイクと飲水タイムの両方が実施される“6分割試合”として開催されるのも特徴だ。「立ち上がりと終了間際が3倍に増える」と言われるこのレギュレーションは多点試合を誘発しやすい。大味なゲームが増えるとも言えるし、攻守で生まれる“一瞬の隙”をつけるチームが勝ち残りやすい。

湘南工科大附は履正社に勝利して8強入り [写真]=川端暁彦

 大会3日目の3回戦は多くの経験ある指導者たちが「一回戦からやっているチームにとっては一番キツいし、二回戦から登場したチームとの差が大きく出る」と口をそろえる日でもある。優勝候補の履正社高校(大阪)をPK戦の末に破った湘南工科大学附属高校(神奈川)の室井雅志監督も「(シード校の)アドバンテージはあったと思う」と率直に語る。プレー強度が重視されるようになった現代サッカーにおいて、その影響はなおさら大きくなっているのも否めない。

 もちろん、勝った湘南工科大附の戦いぶりにケチをつける気は毛頭ない。かつ理由があって勝った試合だった。試合前、室井監督は履正社の映像を観ながら「勝機が見えなかった」と笑って振り返るが、そうした強力なメンバーを揃えた相手にも恐れて消極的になるのではなく、タフにチャレンジしに行ったからこそPK勝ちという結果を引き寄せられた。180センチを超えるような選手が一人もおらず、専ら地上戦で勝負する非常にテクニカルなチームだが、だからと言って肉弾戦から逃げるような選手もいない。元日本代表の奥寺康彦氏や福田正博氏を輩出し、約40年前の1981年度大会では4強も経験している名門校が、大会で新しい風を巻き起こしている。

 28日の準々決勝では、前年度準優勝校であり、まさに強度で勝負するスタイルの米子北高校(鳥取)との対戦になる。スタイルが大きく異なるチーム同士、相当に熱い試合が期待できそうだ。

優勝候補の一角、大津は準々決勝で昌平と対戦 [写真]=川端暁彦

 そのほか準々決勝は同じく復活を遂げた名門・帝京高校(東京)が、こちらも評価の高い岡山学芸館高校(岡山)と対戦するほか、昨年度の高校サッカー選手権で準優勝を飾り、今大会も公立校で唯一の勝ち残りとなった大津高校(熊本)が、こちらも優勝候補の昌平高校(埼玉)と激突するほか、前橋育英高校(群馬)と矢板中央高校(栃木)による実力校同士の“北関東ダービー”も実現。休養日を挟んでの対戦ということもあり、戦術的な準備を含めての見応えのある攻防が期待できそうだ。

取材・文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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