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新田|大幅なスタイル変更が奏功…大舞台でも攻撃的な姿勢を貫く【選手権出場校紹介】

2020.12.23

[写真]=森田将義

 全国大会への出場は、実に39年ぶり。昨年度の選手権予選決勝で今治東に敗れ、涙を飲んだ新田が悲願を達成した。

 昨年からの主力も多く、今年も上位候補の一角として期待されていたが、新チームのスタートは決して順調とは言えず、1月に行われた県の新人戦は初戦で敗れた。転機となったのは、スタイルの大幅変更だ。プリンスリーグ四国に所属した昨年は格上との対戦が多く、守備の時間が長かった。県の大会でも、自分たちのスタイルを出すよりも守備に人数をかけ、相手の長所を消した上で少ないチャンスをモノにするスタイルが中心だったが、今年は積極的にゴールを目指し続ける攻撃力が持ち味だ。

 スタイル変更の理由を、清水祐貴監督はこう説明する。「昨年の子たちは後ろで耐えられる力があるかなと思っていたけど、今年の子たちはリトリートして守ったり、我慢できない。勢いのある気質の子が多いので、生かそうと考えた」

 常にゴールを狙い続けるアグレッシブさが目を引くが、勢いだけではない。攻撃の際に重視するのは、相手を見てボールを動かす判断力だ。前がかりになってボールを奪いにくる相手に対しては、空いたDF裏のスペースにロングボールを入れてFWが飛び出す。相手が間延びすれば、自陣からテンポ良くパスをつないで前進する。常に裏を突いてくる攻撃ほど、相手にとって厄介なものはない。

 また、今年は清水監督が「両サイドバックがうちの攻撃の売り。激しい守備をして、サイドを駆け上がっていける」と話すとおり、右のDF大野哲平(3年)と左のDF落合空(3年)の攻撃参加も見どころの一つ。内側に絞るMF玉井斗和(3年)、中越翔悟(2年)との関係性も良く、勢いに乗ると簡単には止められない。攻撃力とともに売りとなるのは、運動量の多さなどオフザボールの部分だ。特に攻守の切り替えは速く、失ったボールを即座に奪い返し、得点につなげる場面も少なくない。清水監督は「攻撃から守備の局面と、守備から攻撃の局面をいかに詰められるかが、良さを出せるかどうかのカギ」と口にする。

 予選では、逆転を狙って攻勢を強める相手に押し込まれる場面もあったが、攻撃の手は緩めなかった。清水監督が「あれが彼らの魅力。大人っぽくキープしたり、ボールを動かすのではなく、もう1点奪うために前にいきたい。それが彼らの守備にもつながっていると思う」と認めるとおり、攻撃的な姿勢は今年の強みだ。全国の舞台でも、そのスタイルを変えるつもりはない。初戦ではサッカー王国・静岡の代表、藤枝明誠と対戦するが、ひるむことなく新田らしく果敢に挑む。

【KEY PLAYER】DF大野哲平

[写真]=森田将義


「監督からは、“強気、強気”と言われている。前線からボールを奪いにいって、高い位置から攻撃を仕掛けるのが狙い。失点しても引くんじゃなく、それでも強気に前から行くことを意識している」。主将を務める大野の言葉どおり、今年の新田は攻撃的なスタイルが持ち味だ。

 中でも、彼の存在は目を引く。対人守備が強く運動量が豊富で、サイドバックに必要な素質を備えているのが最大の特徴。「運動量がある選手で信頼しているので、やりやすい」と話すMF中越との関係性が良く、前方のタメから大外を何度も攻め上がり、クロスを上げる。縦を切られても、中央に切り込んで見せ場を作れる上に、ロングスローも投げられる。攻撃のキーマンと言える存在で、試合を見ると否が応でも彼の存在が目に留まるはずだ。

 プレー面だけでなく、キャプテンとしての貢献度も高い。小野裕太前監督は、大野がトイレでスリッパをきれいに並べる姿を見てキャプテンに任命したというが、細かいところにまで目を配り、行動に移せるのが彼の良さ。キャプテンに就任してからは、選手に応じた声掛けを使い分け、チーム力を高めてきた。選手権はそうした取り組みの成果を示す集大成だ。新田らしい積極的なサッカーで金星を挙げられるかは、彼の活躍に懸かっている。

取材・文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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