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松本国際|苦戦がもたらした競争と経験…予選で得た自信を糧に難敵に挑む【選手権出場校紹介】

2020.12.22

[写真]=森田将義

「今年は高さもなければ、経験もない。目標はアルウィン(予選の準決勝)だと思っていた」

 勝沢勝監督の言葉どおり、予選が始まるまでは戦力的に苦しい一年だと思われていた。チームには毎年のように一人で試合を決められるエースがいたが、今年は絶対的な選手が不在。昨年からスタメンで試合に出る選手はDF宮嶋歩とMF宮嶋航大の2人のみで、多くの選手や戦い方をテストしながらだったとはいえ、県1部リーグでは2敗11分けと未勝利に終わった。県外勢と行った練習試合でも負けが込んでいたため、勝沢監督は「いくらトライの場だと伝えても、勝てないので自信が生まれなかった」と振り返る。

 だが、予選では苦しみながらも多くの選手が経験を積んだことがプラスに働いた。「今年は相手や点差に応じて、いろんな選手が使える。選手層は厚い」と勝沢監督は話す。宮嶋歩も「昨年と比べてパンチ力はないけど、逆にそれが前線の切磋琢磨につながった。今になってみれば、競争意識が生まれて良かった。誰が出てもチーム力が落ちないのが今年の特徴」と続ける。不動の座をつかむのは、“ダブル宮嶋”と守護神の矢口惇英(3年)くらい。宮嶋歩が「サッカー(プレー)の部分は宮嶋航大が言ってくれるので、僕はなるべくチームの雰囲気を良くする声を出すようにしていた」と話すとおり、“2人の宮嶋”は精神的支柱と言える。

 特徴を持った選手がそろう攻撃陣は、システムを含め流動的で、予選では出番を得た選手が自らの仕事をきっちりとこなした。守備でも、「ここ1カ月、マークの受け渡しやチャレンジ&カバーなど守備を整備してきたので、粘り強く守備ができるようになった」という。その成果が表れ、予選の5試合で許した失点はわずかに1つ。準々決勝で主将のDF柳平強(3年)がケガで離脱しても、代わって入ったDF渡部翔(2年)が遜色のないプレーを見せ、大崩れしなかったのも大きい。

 勝ち上がるにつれ、選手全員が自信をつけ、チームとしての一体感を増していったのも注目すべきポイントだ。「今年のチームは、自分たちで雰囲気を悪くしてしまう。1失点すると流れが悪くなって、連続失点することが多かった」が、今は違う。予選準決勝で大会初失点を許した際も、すぐさま選手が集まり、話し合ったことで悪い流れを断ち切った。ひ弱だった夏までの彼らは、もうどこにもいない。初戦で対戦する京都橘は優勝候補の一角に挙げられる難敵だ。苦戦が予想されるが、今の彼らなら粘り強く戦えるだろう。多くの人の予想を覆す結果になっても不思議ではない。

【KEY PLAYER】MF宮嶋航大

[写真]=森田将義


 絶対的なエースが不在で、「昨年と比べると力はかなり落ちる」と本人も口にするが、彼が放つ輝きはピッチ内でひと際輝いている。今大会の主役候補になり得る注目のボランチだ。

 168センチ、63キロと体格は小柄だが、力強いボールハントから長短のパスを巧みに使い分け、攻撃のスイッチを入れる。「うちの攻撃の一つ。サイドに速い選手がいるので、簡単に速く前に行くためにもいいボールを出して、そこから仕掛けようと意識している」と話すとおり、今年のチームは彼のサイドチェンジが大きな武器になっている。また、高さがないため弱いと言われてきたセットプレーにおいても、彼の正確なキックは貢献度が高い。

 昨年からすでにチームに欠かせない存在だったが、上級生に混じってのプレーとあり、遠慮が見られたのも事実。本人も、「昨年は小川拓馬くんや、小林丈太郎と木間皓太郎の2トップなどすごい3年生がいたので、そこに任せておけば点を取ってくれるだろうという気持ちが正直あった。自分は守備をして、サポートすればいいと思っていた」と口にする。だが、「自分が主役になる番だと思っている」今年は攻撃への関りが増え、守備での貢献度も増した。全国の舞台でも、プレーがチームの出来を大きく左右する彼に注目してほしい。

取材・文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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