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アジア王座奪還を狙うフットサル日本代表、運命の決勝戦は本日20時キックオフ!

2018.02.11

AFCフットサル選手権を戦う日本代表 [写真]=本田好伸

アジア3連覇とW杯出場を同時に逃した2年前

 フットサル日本代表が、アジア王者に王手を掛けた。

 AFCフットサル選手権チャイニーズ・タイペイ2018を戦う日本は、グループステージの3試合を全勝で突破し、準々決勝、準決勝も快勝。2大会ぶりに決勝進出を果たし、4度目の栄冠まであと1勝と迫った。ただし、その「1勝」は決して簡単に手に入るものではない。むしろその壁は、相当に高いだろう。

 決勝の相手は、過去14回の大会で11回も優勝してきた“アジアの盟主”イラン。今大会でも無類の強さを誇り、5試合で46得点という圧倒的なスコアをたたき出している。日本の最大のライバルにして、日本が“真の王者”になるために避けては通れない相手。フットサルにおけるイラン代表とは、そういう相手だ。

 だが日本には、この大会でどうしても勝たなければいけない理由がある。そうしないと、日本は“再々スタート”を切れないからだ。話はまず、2年前の2016年にさかのぼる。

 前回のアジア選手権で日本は、3連覇を懸けて大会に臨みながら、準々決勝で伏兵・ベトナム代表に敗れてしまった。この大会は、同年に開催されるワールドカップの出場権も兼ねていたのだが、日本はアジアに与えられていた「5枠」に入ることができなかった。ベスト8で敗れた後、ラスト1つの椅子を懸けた敗者復活のプレーオフでも、失意のまま戦った日本は気持ちを整理できないままに敗れ去った。

 代表メンバーはみんな呆然と立ちすくみ、敗戦のショックを感じながら、その責任も背負わなければならなかった。それでも、前を向かないといけない。当時の選手たちはこの時、覚悟を胸に刻んだ。

「ある意味では、W杯に出場するどこのチームよりも、次のW杯に向けては早いスタートを切れる」

 10番を背負って、エースとして戦った仁部屋和弘は自分に言い聞かせるようにそう話していた。でも現実は甘くはなかった。日本はこの2年間で、他国のように満足のいく強化を進められなかった。

アジア王者にならなければ意味がない

 ミゲル・ロドリゴ監督が解任となり、その5カ月後に就任したブルーノ・ガルシア監督は、着実に新しいチーム作りを始めたが、代表チームの活動回数は少なかった。2017年にいたっては、一度も国内で親善試合を行っていない。2016年の失敗を引きずったまま、日本の強化のスピードは上がらなかった。

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長は、サッカーを中心としながらも、女子サッカー、障害者サッカー、フットサル、ビーチサッカーを含めたサッカーファミリーの発展を見据え、その軸に「育成日本の復活」を掲げている。そうした育成を柱にした施策を進めるためにも、強い代表チームである必要性を強調している。

「もし今年のW杯に日本が出れていなかったら、それだけで予算が何十億も違ってくる」

 代表が強ければ、世間にも注目され、スポンサーも興味を示し、競技は盛り上がっていく。でも逆に代表が弱ければ、日の目を見る回数も減り、注目度は一気に低下してしまう。その差は、歴然としている。

 サッカーであってもそうならば、フットサルはもっと注目度の低迷は顕著になる。いまだにマイナーなスポーツという印象から抜け出せないフットサルは、日頃から注目される機会は少ない。Fリーグが全国的なスポーツニュースで流れることもなければ、クラブが所属する地方であっても、扱いは大きくないのだ。

「アジア王者にならなければ、意味がない」

 だからこそ、代表のキャプテン経験者でもある星翔太は、そう強調する。優勝して初めてフットサル日本代表がアジア選手権を戦っていたことを知る人もいるだろう。もしかしたら、優勝しても知らない人が大多数かもしれない。選手にはそんな危機感がある。星は「結果が出たからといって注目されるわけじゃない。どちらかといえば、どれだけ注目されたかで、世間からは評価される」と言う。それが、実情だろう。

 日本代表は2012年、前々回のW杯で世間に“注目”された。ミゲル監督は当時、あの“キング・カズ”三浦知良を代表メンバーに招集したのだ。このミゲルの“プロモーション”は、あらゆる相乗効果を生んだ。カズの“W杯初出場”は毎日のようにメディアで取り上げられ、新聞やテレビの扱いも大きなものだった。しかも、カズのプロフェッショナルな姿勢は、代表チームに不協和音を呼ぶどころか、一体感を誘発していた。

 そうして代表チーム史上初めて決勝トーナメントに進んだ日本。そこから日本のフットサルがムーブメントを起こしていくのではないかという期待感も高まっていた。だが──。

 あれから6年、フットサルは決して盛り上がっているとは言えない。だから今大会でも、これまで変わらなかったものが、ここで優勝したとしても、何かが変わるのかさえ分からない。でも勝ち続けないと、その先はない。選手たちはそうやって、日本の未来を背負いながら、目の前の勝負に勝つために戦い続けている。

100万人に見てもらいたい試合

 今大会で、2016年大会を経験したメンバーは14人中10人。監督は代わったが「リベンジ」の意味合いは相当に強い。でも、彼らが本当に見据えているのは「リベンジのその先」ではないだろうか。

 強い代表を示し、周囲を納得させて、強化をさらに進めること。多くの人に知ってもらい、興味を持ってもらうこと。Fリーグを日常的に盛り上げること。そして、フットサルを文化にしていくこと。

 そのためには、勝たなければ始まらない。そんな覚悟で臨んだ今大会、日本は順当に決勝まで進んだ。

 グループステージの3試合は、少しずつ状態を上げながら、確実に勝利をつかんだ。そしてノックアウトステージでは、バーレーン、イラクに対していずれも完封勝ち。ブルーノ・ジャパンの最大のテーマでもある、前線からのアグレッシブなディフェンスと、チームのバランスを考えた完璧なリスクマネージメントを見せつつ、さらにセットプレーや自陣からの組み立てにおいても、イメージ通りの戦いを披露した。

 相手がイランであっても、日本は戦う姿勢を崩さないだろう。ブルーノ監督は準決勝の試合後にこう話した。「相手によって全く違うカラーにしたり、違う発想を導入することは考えていない。それは日本のフットサルではない。どこが相手でも、自分たちが示すフットサルをしたいと思います」。まさに、真っ向勝負にいくことを選んだ。決戦は今日、2月11日(日)、20時にキックオフを迎える。

 この戦いは、NHK BS1で生中継がある。日本フットサルを見たことがある人も、見たことがない人も、ぜひこの戦いを見てもらいたい。フットサルの魅力とともに“戦う選手”の気持ちが、伝わるはずだ。

 サッカーキングが誇る、Twitter100万超のフォロワーすべての人に見てもらいたい大一番。フットサル日本代表はこの決戦を戦い切ることでもう一度、未来に向かって“再々スタート”を切る──。

文・写真=本田好伸

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