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自らたぐり寄せたバルサとの契約「20代で圧倒的な地位に立ちたかった」

2016.01.04


写真:小林浩一 提供:サッカーキング・アカデミー

2014年に行われたブラジル・ワールドカップにおいて、グループリーグで1分2敗と1勝も挙げることができずに敗退した日本代表。再出発を誓って臨んだ今年1月のアジアカップでは、ベスト8で早々に姿を消し、先の東アジアカップでも最下位で同大会を終えた。また、2014年9月に行われたAFC U-16選手権タイ2014では、準々決勝で韓国代表に敗戦し、5大会ぶりにU-17ワールドカップへの出場権を逃す結果に。10月のAFC U-19選手権でも、世界への切符を勝ち取ることができなかった。

『若手の底上げ』や『育成』の必要性が叫ばれる中、浜田満氏もジュニアユース世代(U-12)の重要性を説く一人。株式会社Amazing Sports Lab Japanの代表取締役を務める浜田氏は、日本におけるバルセロナのファンクラブの代理窓口の開設をはじめ、バルサキャンプやスクール、ジュニアユース年代の世界大会を開催。2004年に同社を設立して以降、海外と日本、双方のサッカーを見据えながら、ビジネスと育成の両面を成立させてきた。

そんな浜田氏が、これまで手がけてきた事業の考え方やノウハウを扱った「サッカービジネスプロフェッショナル養成講座」を実施。講座開設にあたり、これまでの自身のキャリアを振り返りながら、会社設立の秘話や20代で抱いていた将来のビジョンについて語った。


――まず始めに、ご自身のキャリアを教えてください。

浜田満 大学卒業後に食品メーカーに就職しました。「入社して1年以内にメキシコ勤務だ」と伝えられていたんですが、メキシコはメキシコでも工場勤務。自分がやりたいことでなければ、海外でも意味がないと思い、わずか4カ月で辞めました。その後、繊維関係の商社に入りましたが、そこも4カ月で退社。僕には海外ですぐに働きたいという思いがあり、実現するにはどうしたらいいかと考えた末、行き着いた答えが在外公館派遣員で。そういった理由から、24歳から2年間、ベネズエラの日本大使館で働きました。もともと、国際公務員になりたくて国際機関で働きたかったんです。帰国後、国際機関で働くための近道として、JICA(国際協力機構)に入ろうと思い、社会人入試を受けるために1年ほど勉強しました。その間、イングランドに語学留学したり、NGO関係でネパールに行ったりしてたんですけど、残念ながら筆記試験で落ちてしまって……。

――その後は、どうしたんですか?

浜田満 1年近く働いていなくて、次が4社目なのでさすがにまずいと思って、語学が使える仕事で、海外に行くことができる職を探しました。その時にたまたま、日本スポーツビジョンという、お台場でFCバルセロナの公式ショップなどを運営している会社に受かって、その会社のライセンスマーケティング部に配属されたんです。そうしたら、2ヶ月後に会社が買収されることになってしまいました。当時は社内でスペイン語を使える人が僕しかいなかったため、バルサ担当になり、さらにミラン、インテル、マンチェスターUなどの各オフィシャルショップのマーケティングをやっていました。その中で最初に関わった仕事が『キャプテン翼』のバルサのマンガをオフィシャル化する案件。作者の高橋陽一先生をスペインに連れて行って、バルサの会長を務めていたラポルタ氏と握手して、バーチャル入団みたいなことをやって。ヤングジャンプの誌面で「翼2+8」ってエアー会見をやったんですが、そこでバルサの副会長と仲良くなったんですよ。その後すぐに、会社が民事再生することになるんですが、そのタイミングで独立しようと思い、仲良くなった副会長に「バルセロナのソシオ受付の日本の代理窓口をやらせてほしい」と言いました。

――副会長に直接提案したんですか?

浜田満 はい。副会長に事業計画書を送ったら、ソシオ部門のトップに話が回り、「興味があるから、来週バルセロナに来てくれ」って言われて。行ったらもう条件とか決まっていて、やることになっていたんですけどね(笑)。ただ、バルサは個人と契約できないから、会社にすることが条件でした。それが2004年6月のことです。なぜバルサがOKしたかと言うと、ちょうどその年の8月にバルサが来日することになっていて、その際にソシオのPRをしたかったから。日本でのソシオ募集のために、ソシオ会員の先着200名をバルサの公式練習に招待するというキャンペーンをしてくれたんです。バルサは世界でソシオ倍増計画というのをやっていたので、僕の提案が渡りに船だったということです。

――非常にタイミングが良かったということですね。

浜田満 はい。それで「まずは2週間テストだ」と言われ、集めた人数によって正式に代理窓口をやってもらうかどうか決めると。そして、2週間で500人を集めたことが評価されて、そこから正式に代理窓口となり、それがきっかけでバルサの公式ショップなど、いろいろな部署とつながることができました。

――最初はテストだったんですね。

浜田満 はい(笑)。正直、失敗する可能性が高いと感じていて、副業でやろうと思っていたんですが、一気に500人も入って。そこから日本でのマーケットを広げていこうという流れになりました。当時、ソシオの年会費は確か2万円くらいだったと思いますが、そのうちの25%をバックするからと。500人ということは、それだけで250万くらい売上ができたんですよ。サラリーマンからするとすごい金額じゃないですか(笑)。それで、そのお金を担保にして、親からお金を借りて有限会社を作りました。

――バルサは、日本にそこまで多くのファンがいると思っていなかったんですか?

浜田満 全く思ってなかったですね。ソシオになりたいという人の人数を見て、「日本はとんでもないマーケットだぞ」と。それもあって、2004年から2007年まで毎年のように来日していました。観戦ツアーやキャンプを実施していく中、2009年にはバルサスクールができました。そのうちにミランと話す機会があって、バルサでやってきたことを説明したら、「じゃあそれと同じことをやってよ」と言われたので、2008年にミランとも契約する運びとなりました。

――ちょうど欧州のビッグクラブがアジアに目を向け始めた時に、うまく乗っかることができたわけですね。ちなみに、学生時代は語学の勉強をされていたんですか?

浜田満 はい。大学は関西外国語大学のスペイン語学科で、24歳までに絶対に英語、スペイン語、イタリア語をしゃべれるようになろうと。語学の勉強ばかりしていましたね。

――海外ではどんな仕事をしたいと思っていたんですか?

浜田満 海外だったら何でもいいかなと。とにかく、できるだけ早く海外へ行って、海外で仕事をする。それで、人生の時間をどれだけ早く巻けるか、と思っていました。40歳とか50歳になってチャンスを掴もうと思っても遅く、20代で圧倒的なポジションに立たないとダメだと思ったんです。そうすると、日本だけでは意味がない。さらに、世界でやれるようになるには英語やスペイン語といった語学が必要ですし、20代前半で海外で働く経験を積むことを命題にしていました。現在、会社を作って11年が経ちますが、まだ30代ですし、ここから20年いろいろやれるなと思っています。

――ビッグクラブの要職者をはじめ、海外の方と様々なお仕事をされてきたと思います。海外の方と仕事をするおもしろさや難しさは、どういったところにあるのでしょうか?

浜田満 基本的に理不尽なことしかないですよ。急に「今週末行くから」とか普通にあって、こっちで抱えている案件を全てキャンセルして対応するとか(笑)。ただ、基本は理不尽なんですけど、評価はしっかりとしてくれる。うちはバルサと11年間仕事をしていますが、その間にバルサと仕事がしたくてオファーを出している会社はたくさんありました。うちよりも良い条件を出すところも多く、バルサ側も検討するみたいですが、結局こっちに戻ってくるというか。そういう時に正当に評価されていると感じますね。

――それは浜田さんの振る舞いというか、義理人情じゃないですけど、そういったところが評価されているんですかね?

浜田満 それもあるかもしれませんが、会社の代表である僕がバルサをよく知っていることが大きいかなと。組織内のことや派閥、さらに裏事情までかなり深く知っていますからね。バルサも一から説明する必要がないですし。あとは(久保)建英君の存在は大きいです。

――具体的にどのような影響がありましたか?

浜田満 バルセロナで建英君をサポートしている間に、カンテラのトップから各カテゴリーのコーチまでよく知ることができました。バルサキャンプに来たコーチがカンテラのコーチになったり、バルサを辞めて別のクラブに行った人が、何か一緒にやろうと言ってくれたりと、どんどん人脈が広がりましたよ。苦労することは、人が入れ替わった時に一からやり直す必要があること。あとはすごくお金がかかることです。そもそも向こうはお金を払ってもらうという前提でいるから、あらゆる費用がほぼ全てこっち負担なんですよね(笑)。

By サッカーキング編集部

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