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【独占インタビュー】中田浩二(元日本代表、現鹿島CRO)「W杯予選で簡単な試合は一つもない」

2015.06.10

 2014年で現役を退き、現在は鹿島アントラーズのクラブ・リレーションズ・オフィサーを務める元日本代表DF中田浩二さん。クラブのスタッフで働く日々と並行し、テレビ朝日で好評放送中の『やべっちF.C.~日本サッカー応援宣言~』に現在出演中だ。6月11日にアジアのライバルの一つであるイラクとのロシアW杯アジア二次予選の前哨戦、さらに16日にはいよいよW杯への“負けられない戦い”が始まる日本代表だが、試合を前に中田さんにやべっちF.C.や現在の鹿島での仕事、さらに日本代表について聞いた。

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●インタビュー/小松春生、写真/瀬藤尚美

テレビの仕事は新鮮なことだし、最初はすごく難しかった

――現役を引退して、半年ほどが経ちました。テレビ出演やクラブの広報活動などをする難しさを感じますか?

中田浩二(以下、中田) 難しいですね。今までは言葉を発さずに体を動かせばよかったことが、考えてしっかり話さないといけない。なかなか言葉が出てこないですし、テレビに慣れてないということもあります。新鮮なことですし、最初はすごく難しかったですね。最近やっと慣れてきて、徐々に自分の中で整理して話せるようになってきたと思います。

――新しいことにチャレンジしている実感がありますか?

中田 180度変わったというか、全然違います。それはすごく感じますね。

――現役時代の経験が、今に生きていることはありますか?

中田 どちらかと言えば、試合の状況などを考えながら、感覚的にプレーするタイプではなかったので、多少考えることには慣れていますね。

――やべっちF.C.で共演している進藤潤耶アナウンサーと竹内由恵アナウンサーにお話しをうかがった際、「中田さんは俯瞰で見えている」と同様の印象を受けたと話されていました。

中田 いやいや(笑)。一杯一杯で、助けていただきながらやっています。

――やべっちF.C.の共演者の印象をお聞かせください。矢部浩之さんはどんな方ですか?

中田 現役時代に「なべっちFC」など、やべっちF.C.の企画で共演させていただきました。なので、どういう方か知っていましたし、すごくフランクに話してくれるので、入りやすかったですね。

――共演する側になって変化はありますか?

中田 今までもそうでしたが、共演することになってからも、僕がちょっと言葉につまったりすると、うまくポンって話してくれるので、すごく助かります。

――引退後、すぐに活躍の場をメディアに移すという点では、やべっちF.C.に出演している中山雅史さんも同様です。中山さんのテレビでの仕事はいかがですか?

中田 さすがだな、と思いますよ。あのテンションで行くのは中山さんしかできないと思います。ああいうキャラクターですけど、見ているところはしっかり見ていますし、大切な核心はしっかりコメントしています。宇佐美へのインタビュー(やべっちF.C./5月17日放送)も、見ていて面白かったですし、「うわぁ、すごいなゴンさん」と思いながら見ていました。

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自分の成長に期待しています

――何か、中山“先輩”からアドバイスはありましたか?

中田 一緒に番組に出たことはまだないですし、スタジアムで会うことはあるんですけど、一切ないですね。中山さんは自分のことばっかりなので(笑)。

――アドバイスはほしいですか?

中田 アドバイスというか、僕の視点と中山さんの視点は違いますし、そういう違いを考えなければいけないと思うので、いろいろと教えていただきです。

――先ほど、中山さんの宇佐美選手へのインタビューの話が出ましたが、中田さんも武藤嘉紀選手や柴崎岳選手にインタビューされました。インタビュアーとしての初仕事はいかがでしたか?

中田 いやー難しいですね、やっぱり。選手から上手く言葉を引き出すことは難しいです。

――今まで聞かれる側だったのが、聞く側にまわるわけですからね。

中田 聞かれる側から聞く側に変わって、ある程度「こういうことを聞こう」って思っていたんですけど、そこからどれだけ深く聞けるが大事で、まだまだ踏み込めませんでした。反省です。でも、次はもう少し上手くやれるという、自分の中での期待はあります。番組には申し訳ないですけど、徐々にやっていければ。「もっとズバッといけ!」っていう話なんですけどね。

――視聴者の方は、中田さんの成長過程を見られますね。

中田 そうですね。そういうことも楽しんでいただきたいです。サッカー選手だけではなく、周囲でサッカーに携わる人たちも日々成長しているということを見せられたらいいですね。

デスクがあって、会議に出て…周りから見ると違和感がすごいらしい

――現在は鹿島でクラブ・リレーションズ・オフィサー(CRO、クラブに関わる人とクラブをつなぐ役割を担い、ビジネス面でクラブをサポートする)という役職に就かれました。

中田 サラリーマンの方と同じで、ちゃんと9時に出社して17時半まで仕事をするという流れなんですが、まだ慣れませんね。引退して半年なので、今は研修という形ですけど、自分のデスクがあって、いろんな部署の話を聞いたり、会議に出たり、そういうことを今までしていなかったので。現役時代はクラブハウスへ行って、午前中に2時間練習して、午後はフリー、なんていう状況でした。今は現役時代と同じクラブハウスに、9時から17時半まではいなくてはいけない、座っていなければいけないっていう状況なので、そこに慣れることがまず大変ですね。

――違和感がありますか?

中田 僕の中ではもう違和感はないんですけど、周りから見るとすごい違和感があるらしくて(笑)。

――そわそわしてしまっている?

中田 僕はそういう感じではまったくないですよ。ただ、周りはそう言うし、たまにオフィスにきた選手たちには、「何してるの?」、「早くグラウンドに行けよ」みたいな感じで言われます(笑)。

――会社員になり、さらにJリーグ立命館マネジメント講座一期生にもなられました。そこで学ばれたいことは何ですか?

中田 サッカーでの中心となるピッチに、今まで選手として立ってきました。自分は中心しか見ていなかったから、そこの考え方しか持っていません。でも、サッカーがそれだけでは成り立っているとは思いませんでした。会社、チーム、試合がどう成り立っているのか。また、メディアの仕事なども、どう絡んでいるのか、すごく興味があったし、見て、学びたかったです。そういうことを知っていれば、もし現場に戻ったとしても、違う見方ができる、ということもありました。いろいろな経験をしたいですね。

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現場と会社、両方の視点を持った人間が話せば面白いと思う

――引退後、テレビに出演する方で経営側の目線を持っている元選手は多くありません。そういった視点を出していきたいとお考えですか?

中田 そうですね。違う視点で話ができれば、それは面白いと思いますし、生かしていきたいです。現場の気持ちはもちろん大事だし、会社の人間としての見方もあります。経営面を見ずにチーム強化を考えれば、「お金を払って能力の高い選手を連れてこよう」と短絡的な考え方になってしまいます。でも、会社としてのマネジメントを考えれば、そう簡単な話にはなりません。選手はそういったことを気にしたら、プレーに集中できないので、考える必要はありません。ある程度、さわりだけでも知っていればいいのかなと。僕はそういう部分を少しは見てきたので、もっと知りたくなったんです。今の選手たちに、会社の人間が説明するより、僕が言った方が説得力があるんじゃないかと。

――選手の経験があるからこそ、ですね。

中田 「これが大事」、「大事ではない」といったジャッジも、ある程度選手寄りにできると思うし、うまくやることができれば、より良くなっていくのかなと思います。クラブとメディア、スポンサー、サポーターとの関係も変わっていけると思っています。

――やべっちF.C.でも、中田さんならではの視点を出していきたいと。

中田 出せればいいですけど、まだ自分で一杯一杯なので(笑)。矢部さんやアナウンサーの方々とご一緒させていただいて、スタッフさんともいろんな話したり、飲み行ったりもして、そこですごく発見があります。いろいろな方に支えられて成長できていると実感できているので、今度はうまく恩返しができたらいいですね。そうなれるような関係になりたいと思っています。

ハリルホジッチはトルシエと同じタイプ

――日本代表のお話に移ります。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督体制になった日本代表の印象はいかがでしょうか?

中田 すごく良くなりそうですね。チームの規律を重んじる監督なので、日本人には合っていると思います。トルシエ監督やオシム監督のようなタイプで、たくさん要求を言う指導者の方が日本人には合うかもしれません。ハリルホジッチ監督はJリーグで活躍している選手、好調な選手を使うと言って、実際に選んでいますし、試合でも起用しました。まだ、監督の考えが一部分しか伝わっていないであろう中でも、それが目に見える形で選手が表現もできていた。だから期待できると思いますし、サポーターもそういった印象を持ったんじゃないかなと。監督がこれからどれだけ自分のやり方を貫けるかどうか、でしょうね。

――ハリルホジッチ監督と似たタイプとしてトルシエ監督の名前が出ました。中田さんは日本代表でトルシエ監督の下でプレーされましたが、当時はやり易さを感じましたか?

中田 ハリルホジッチ監督は、メディアの前ではいろいろと言っていますが、チームの中では違う顔を見せて、うまくコントロールしていると思います。トルシエ監督もメディアがいる時だけ、すごいことをしていましたけど、実際はそうでもなかったですよ。選手にハリルホジッチ監督の話を聞いても「別にそこまで…」という感じですし。もちろん、求めるものはしっかりと求めているでしょうし、オンとオフをきっちり分けてやられているのかなと。ただいろいろと言うだけでは選手はついていかないですからね。その辺りのマネジメントも計算を立てているでしょうね。

――ジョゼ・モウリーニョ監督も、そういったタイプの監督ですね。

中田 そうですね。そのハリルホジッチ監督がこれからどうなっていくか。本田圭佑が監督の求めるサッカーの中で、どう絡んでいくのかも気になりますね。今の時点では本田のやりたいことと、監督の求めていることは多少違うし、この前の親善試合でも本田が監督のサッカーに合わせよう、と見えた部分もあったので、お互い落としどころを見つけて、チームとしてどうやっていけるかですね。ハリルホジッチ監督は、縦に速いサッカーだとか、戦わない選手は使わないといったことを、しっかりと伝えていますから、本田がそれをどこまで表現できるか。それはそれで一つの楽しみになっていくと思います。

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これまでの主力と若手の鎬の削り合いに注目

――日本代表で注目している選手はいますか?

中田 一つ楽しみにしていることは、代表の世代交代について意見が出ている中、これまでの主力だった本田などが、若い選手に対して、言い方としてはおかしいかもしれませんが、どう盛り返していくか、ですね。逆に、柴崎や武藤、宇佐美といった“プラチナ世代”と呼ばれている選手たちは、どれだけプレッシャーをかけられるか。お互いに鎬を削っていけば、もっともっと強くなると思いますし。そういう意味では全員に注目ですね。選手というよりも世代、今までいた選手とこれから入ってきそうな選手がどうやっていくかに注目です。

――競い合える環境が今はあるということですね。

中田 あると思いますし、本来代表はそういう場所です。今まで少し固定し過ぎていた部分もありましたし、新しい選手がどんどん入ってきているから、その選手が今までいた選手にどれだけプレッシャーをかけられるか、だと思います。

――鹿島からは国内組の合宿を含め、これまで代表に何人か招集されましたが、代表から鹿島へ戻ってきて、いい雰囲気がチームに還元されていますか?

中田 鹿島に限って言えばないですけど(笑)。でも、他のクラブを見ても、球際のところなどは意識しているから、それだけで「変わった」というのは見えます。それは、ハリルホジッチ監督のメッセージだと思うし、Jリーグ自体がもう一つ上のステップに上がれたという印象を受けています。今は、代表に近い選手がそういったことを意識しているということかもしれませんが、それがもっともっと伝わって、Jリーグでプレーする全員が監督の求めていることをスタンダードにしていければ、Jリーグのレベルもさらに上がると思うし、競争も激しくなるでしょう。

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サポーターは日本がW杯に出場して当たり前と思っていていい

――日本は5大会連続でW杯に出場していますが、大会ごとに出場することの意味、大切さが若干薄れていると感じることもあります。2002年、2006年と出場された中田さんにとってW杯出場はどんな意味がありますか?

中田 今は出場して当たり前みたいになっているから、それだけサポーターの望みや期待も高まっていると思います。そういう熱を下げないためにも、やはり出場しなければいけないし、だから出場して当たり前でいいと思うんですよね。目指すところは世界だと言っているからには、そこに近づいて行くためにも選手はそれぐらいのプレッシャーを感じて日本のために戦ってほしいです。

――16日のシンガポール戦からアジア2次予選が始まります。組み合わせなど、どう見ますか?

中田 もちろん、簡単なゲームではないと思います。周りから見れば簡単なゲームと思われるかもしれませんが、そんな試合は一つもないですし、「もしかしたら」ということも、もちろんある。でもそういうのを抜きにして、勝たなくてはいけません。あとは、2次予選をどう勝つというよりも、まずは競争。チーム内で競争していけばもっともっとレベルが上がるし、そうすれば相手どうこうというより、日本らしいサッカーをすれば必ず勝てると思うので、まずはチーム内でしっかり競争して、結果を残してほしいですね。それぞれが良さを出せば自ずと結果は出ると思います。

――――11日に対戦するイラクは、2次予選で対戦する国よりもレベルが高いと見られています。

中田 イラクがどうこうと、意識しなくていいと思います。とにかくチーム内で競争して、出場した選手が、「自分が試合に出て勝つ」ことを意識すればいいのかなと。イラク戦で勝ったから、シンガポール戦で勝てるとも限らないし、イラク戦に出場したからシンガポール戦に出場できるとも限らないので、いかに競争に勝ってアピールするかだと思います。相手どうこうではないですよね。相手の分析や戦い方は監督の仕事になるので、選手はとにかくいいコンディション、いいアピールをして臨むだけだと思います。

――選手個人の良いプレーが見たいということですね。

中田 そうですね。監督の求めているもの、求めているサッカーをやるために、いい状態でいいプレーをしてほしいなと。それができれば負ける相手ではないですし、つまずいている場合でもないと思うので、いいプレーを見せてほしいです。

【番組情報】

やべっちF.C.~日本サッカー応援宣言~
毎週日曜 深夜0時10分からテレビ朝日にて放送中

キリンチャレンジカップ2015
日本代表 vs イラク代表

6月11日(木)よる6:50~
テレビ朝日系列で生中継
※一部地域を除く

ロシア・ワールドカップ アジア2次予選
日本代表 vs シンガポール代表

6月16日(火)よる7:00~
テレビ朝日系列で生中継
※一部地域を除く

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