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“本番力”で差が出た「バイエルンユースカップ」…国際舞台での悔しさを糧に……

2015.05.28

 5月24日、バイエルン・ミュンヘンの本拠地アリアンツ・アレーナで『FCバイエルン・ミュンヘン ユース・カップ2015』が開催され、4勝1分の無敗で大会を終えたオーストリアが優勝を果たした。

 優勝したオーストリアはフィジカルを生かし、シンプルにフィニッシュまで持ち込むスタイルで他チームを圧倒。ワンチャンスを決める決定力と、本番で力を最大限に発揮するメンタルの強さが際立った。

 東日本大震災で被害にあった宮城、岩手、福島の子供達で編成された日本チームは、足元の技術を生かしたパスワークで崩す形を狙うも、雨の影響でピッチコンディションが悪く、ミスが目立つ。初戦のタイ戦こそ白星を手にしたものの、オーストリアに0-2で敗れ、悪い流れを断ち切れず、最終的には6位という結果に終わった。6カ国が招待された今大会、順位は以下のとおり。

1位 オーストリア
2位 ドイツ
3位 タイ
4位 アメリカ
5位 中国
6位 日本

大隈圭吾 福島県 南相馬市 聖光学院高等学校
――今大会の結果を踏まえて感想をお願いします。
「自分自身はゴールも決められたし、出だしは良かったんですけど、次の試合からは先発から落ちてしまって、気持ちを上手くコントロール出来ず、途中から出ても空回りしてしまいました。オーストリアやドイツはコミュニケーション能力が凄くて、流れが悪くても皆でコミュニケーションを取って流れを戻してる事が多く、自分はフィジカル面以上にそういったコミュニケーション能力や積極性に差を感じました」

――今大会を通じてドイツに招待されて、感じた事はありますか?
「自分は南相馬市出身で、原発の避難区域に住んでいたので、震災直後は約2カ月はまともにサッカーをやれるような環境にはありませんでした。そういった経験をしているので、震災から4年経ったいまでもこうやって継続してイベントを開催して貰える事にはとても感謝しています」

菅原尚紀 宮城県 仙台市 仙台商業高校
――今大会の結果を踏まえて感想をお願いします。
「正直めちゃくちゃ悔しいです。練習では出来ていた事が試合では出せなかったし、メンタル面の弱さをとても感じました。自分達が上手くいかない時間にあっさり失点しまう形が多く、そこからもう一度立ち直るようなメンタルの強さが他のチームに比べて足りなかったと思う」

――今回こうやってドイツに招待されて、感じた事はありますか?
「高度なトレーニング施設で練習をしたり、プロ選手がやっているスタジアムで実際にプレイしたりと本当に良い経験だったし、そういう機会を与えてくれた事には感謝しています。自分は年齢的に来年は参加出来ないけど、来年の参加者には頑張って欲しいと思います」

鈴木上総 宮城県 仙台市 八木山中学校
――今大会の結果を踏まえて感想をお願いします。
「やっぱり海外の国は試合に向けてのモチベーションの上げ方だったり、勝負へのこだわりが強くて、自分達はそういう面で圧倒されてしまったと思います。それとゴールを決めきる決定力も足りなかったと思いました」

――今大会を通じてドイツに招待されて、感じた事はありますか?
「自分にとっては日本語が通じない状況は初めてだったので、コミュニケーションの大切さや、言語の大切さを実感出来たのは良かったです。大会の結果を受けてサッカーへのやる気も上がりましたし、勉強のやる気も上がったのは本当に来て良かったと思いました」

【佐藤 岬 宮城県仙台市 仙台商業高校】
――今大会の結果を踏まえて感想をお願いします。
「練習の中でもオーストリアやドイツに勝てていただけに、6位という結果は本当に予想外だったし、悔しいです。自分が特に感じたのは、オーストリアだったりドイツは本番のプレッシャーだったり、緊張感を良い方向に持っていく気持ちの強さでした。日本チームにはそういうメンタルの強さが足りなかったと思います」

――今大会を通じてドイツに招待され、感じた事はありますか?
「思ったような結果が出せず、悔しい思いをしましたがこういった経験を無駄にせずにこれから先に生かしていきたいと思います」

Internationalization and Strategy division Ao Wang氏インタビュー
――全体の感想をお聞かせください。
「今回は初めての選手やそうでない選手も、全体を通してサッカーを楽しみ、国際合流を図る事が目的でありましたので、そういった面ではとても上手くいった大会であったと思います」

――日本のチームはどう映ったでしょうか。
「ドイツに来てからずっとトレーニングを見てきましたが、日本チームはとても技術があるのは感じていましたし、練習中のゲームでも他チームを圧倒する事も多くあったので、正直今日の結果は驚きでした。しかし、結果よりもこういった経験が積めた事をポジティブに捉えて、今後に生かして貰えたら嬉しいです」

――最後に日本のサポーターや子供達に一言お願いします。
「日本には数多くのバイエルンサポーターがいる事は知っています。そういった方達にはサポートに感謝していますし、これからもバイエルンミュンヘンは日本と関わりを持ち、サポートも続けていきたいと思っていますのでよろしくお願いします」

Internationalization and Strategy division Henning Schulte氏インタビュー
――今大会の全体的な感想をお願いします。
「各チームベストを尽くしてくれましたし、収穫のあるとても良い大会になったと思います。今大会は15分の短い時間の中でアピールする難しさもあったと思いますが、今回の経験を各自持ち帰ってこれからに生かして欲しいですね」

――日本チームはどのように映ったでしょうか。
「練習を見ていて、日本のパスを繋いでコンビネーションで崩していくチームスタイルを私はとても好きでしたし、優勝候補だと考えていました。しかしアンラッキーな面もあり、最終的には6位で終わってしまいましたが、とても個人個人のスキルは高いと今でも思っています」

――日本のバイエルンサポーターにメッセージをお願いします。
「バイエルンミュンヘンはこれからも日本との関わりを大事にし、夢や希望を与えられるようにやっていきたいと思っています。これからもバイエルンミュンヘンを応援してください!」

日本セレクション主宰・日本チーム帯同 インリー・ソーラー・ジャパン Julian Itagaki氏インタビュー
――今大会の全体的な感想をお願いします。
「残念ながら日本チームは6位という結果に終わってしまいましたが、結果どうこうではなくて、ここでした経験や出会った人達との繋がりという部分が一番大切だと思っているので、この経験をサッカーやこれからの人生に生かして貰えたらと思っています」

――3年連続で東北でセレクションを主催している趣旨について
「東北エリアは東日本大震災で大きなダメージを受けました。そういった大変な影響を受けた地域の子供達の中から選抜し、チャンスの場を提供する事でその地域は勿論、日本全体を元気付けるような事が出来たらと思い、毎年東北で開催しています。また、東北の子供達は外国の人と関わるという事は少ないと感じていて、グローバル感を養って欲しいという面もあります。私はグローバル感というのは、スポーツやそれ以外の面でもとても重要だも思っていますし、そういう感覚を養える場を提供し続けていくという事に強いこだわりを持ってやっています」

――来年にむけてコメントをお願いします。
「まだ詳細は決まっていませんが、恐らく来年も宮城、岩手、福島の三県の14から16歳の子供達を対象にセレクションを行う予定です。非常に貴重な経験になりますし、こういう機会、チャンスは中々ないと思いますので、是非参加してみて下さい」


 今回、日本チームに同行して試合後に他国のコーチやバイエルンの関係者の方々にインタビューをさせて頂いたが、口々に「日本の技術は素晴らしかった」と語ってくれた。

 これは単なるお世辞ではなく、素直な意見だと思う。ただ「技術は素晴らしかった」と言う一方で「練習では」とも聞こえてきていて、本番で100%の力を出し切る、「本番力」の差は顕著に表れてしまった。

 しかし、この年代で国際大会を経験し、問題点を見つけられた事は本当に良い経験になったと思うし、悔しい思いをして涙を流した事には単なる「良い経験」以上の価値があったと思う。

 サッカーの面だけではなく、国際交流を通してグローバル感覚を養うという面でも、とても意義のある大会に感じた。来年以降も『FCバイエルン・ミュンヘン ユース・カップ』には注視していきたいと思う。

Writing:Kei Osawa Photo:Julian Itagaki

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