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<インタビュー後編>元日本代表・戸田和幸氏「香川は変な遠慮をせずに自分を出しきっちゃえばいい」

2014.02.12

 J SPORTSにて大好評放送中の「イングランド・プレミアリーグ」。第26節では、プレミアリーグでプレー経験のある元日本代表DF・戸田和幸氏がゲスト出演する。当時の経験談や、海外リーグに挑戦する選手たちへのメッセージを語ってもらった。

戸田和幸

――今は例えばドイツ2部のチームに行く選手も増えてきましたけど、1部とか2部とか関係なく行ったほうがいいと思いますか?

 僕の当時は一般化されてないし、例えば代理人とか今ほどはわからないのでスパーズに行きましたけど、そのあとに僕はオランダに行っているんですよ。そこでスパーズとのレベルの違いをわかっているし、本田圭佑のような例もあるじゃないですか。VVVに行って、2部に落ちて、そこからまた1部に上がりましたよね。そういうのを考えると段階を踏むっていうのは大事だと思うんです。それと自分が行きたいと思ったなら行けばいい。僕がもし仮の話として今同じ状況にあれば、スパーズよりもオランダを先に選ぶでしょうね。そのほうがステップとしては、より安全というか。やっぱり言葉とか、サッカーとか、色んな意味で違うので、いきなりプレミアリーグにジャンプするより、オランダを挟んだほうがいいと今だったら思います。当時はそこまではわからなかった。だからドイツの2部に行く選択肢は全然悪くない。実際行ってみたらドイツの2部よりJリーグのほうが技術がありましたとなったって全然構わないですよ。だってそこに行かないとその先はないわけだから。別に日本と比較する理由はないんです。給料が下がろうが、環境が悪くなろうが、そこから始めないとその先はない。

――話題を今のプレミアリーグに移しますが、現在、マンチェスター・ユナイテッドで香川選手、サウザンプトンで吉田選手がプレーしています。彼らについてどんな印象を持っていますか?

 やっぱりセンターバックでいくのは大変だなと思いますよ。サウザンプトンというチームのスタイル的にきちんとボールを保持していくサッカーだから、フィットはしやすいんじゃないかなと思いますね。だけどそこには競争があって、クロアチア代表だったり、オランダ代表がいる中では苦戦しているとは思います。今年のW杯だけを考えると、もちろん試合に出られるところへ行ったほうがいいのかもしれない。色んな考え方がありますけど、でもそういうところに行かないとその競争には晒されないわけじゃないですか。それはそれでいいと思うんです。あとはその中で必死にもがいて越えていけばいい。そこに身を置けていることが大事だと思います。

――先ほど言っていたセンターバックでいくことの難しさはどこにあると思いますか?

 やっぱりなんだかんだ言ってもイングランドだからロングボールは多いし、クロスボールも多い。もうひと手間かけるんじゃないっていうところでもバンバン入れてくるので、常にそこに対しては戦い続けなきゃいけないわけですよ。そこにはそれなりのサイズ、身体が必要なわけで、そういう意味では日本人としては一番苦手なところかもしれないですね。そこにあえて行っているという意味では凄いなと思います。

――実際に吉田選手のプレーを見た印象はどうですか?

 ビルドアップに関しては貢献できていると思うんですよね。あとは仮に彼に一瞬のスピードだったり、弱いところがあるのであれば、そこらへんはうまく隠すような工夫が必要ですよね。でもそれはわかっていると思うし、やっていると思います。でも試合に出られる、出られないというところはちょっとしたことだったりしますから。例えば代表に行っていてとか、ちょっと怪我している間にほかの選手が出てとか。だからいつまた彼のところに戻ってくるかわからないので、僕は続けていけばいいんじゃないって思います。

――香川選手も現状はかなり厳しい状況です。

 あのサッカーに対して、彼がしなきゃいけないことはあるのかもしれませんけど、それがあまりにも彼が持っているものとかけ離れている場合は、あのレベルまでいった選手としてはどうなのかなと思いますよね。サイドで縦ばかりに仕掛けるウイングが欲しいのであれば香川ではないし。でもああいうサッカーなのでね。結局、「個」じゃないですか。ポジションも動かさないし。ファーガソンのときのサッカーも結局はオールドファッションですよ。ベッカムが一発クロス入れて終わっちゃうわけですから。でもそのクロスが世界一なだけなんです。ギャリー・ネビルだって別になにかできるわけじゃない。ただクオリティが高かっただけ。今はサイドの選手だったり、後ろの選手にそのクオリティがないだけですよね。その中で香川がどうしましょうかってなると、もちろんやれることはあると思うんです。求められているプレーに彼が寄っていってやればいい。それがマイナスなのかと言ったらマイナスではないと思います。あれだけ魅せてきた選手ですからね。トップ下で出れたらいいんだろうけど、ファン・ペルシーがいて、ルーニーがいて、マタも入ってきたし。

――マタ選手は香川選手とポジションが被るプレーヤーですよね。

 でも狭いところを割って、ゴールを決めるという点では絶対に香川の方が上ですよ。マタはどちらかと言えば出し手です。斜めからちょっとしたクロスを入れたりっていうのはうまいですけどね。これは本当に難しい問題だと思うんですけど、どうか自信だけはなくさないでほしい。仮にそこのサッカーに合わせなきゃって思うのなら努力はしているでしょうし、やっぱりW杯というものがちらついてしまいますよね。ただ、もう移籍期限は終わっちゃったわけだから、どこに自分の気持ちを置くかじゃないですか。

――香川選手にこれから必要なものはなんだと思いますか?

 自分の良さは忘れないでほしいと思います。そこを今のサッカーに合わせるために変えようなんて考える必要のない選手ですから。僕はチャンスが回ってきたときに、変な遠慮をせずに自分を出しきっちゃえばいいと思うんですけどね。それがたとえ監督に評価されなくても誰かは見ている。結局パスを出してその次がもらえるサッカーじゃないから、ゴールに向かって突き進むべきなのかもしれない。

――ワンツーのリターンが欲しいところで来ないシーンはたくさんありますね。

 誰だったらワンツーができるかというのはわかっているはずです。例えばルーニーだったり。逆にもうそこだけ見てプレーすればいいんじゃないかなって思います。サイドなんてほっとけばいいんですよ。出したら返ってこないんだから。極力、ルーニーだけを見といて、そこにぶつけてどんどん入っていくとか、そういうのも一つのやり方かなと思います。

――本当に香川選手を理解して使ってくれているのはルーニーくらいという印象です。

 ルーニーはもう本当にサッカーを知っている選手で、イングランド人では他にいないタイプじゃないですか。凄いハイレベルでなんでもこなせて、だからもったいないなと思うところもあるんですけどね。もっと本当に彼が得意なところでやらせたら、突き抜けてスーパースターになっているはず。都合良く使われちゃってるから可哀そうだなって思います。今のユナイテッドだったらどのポジションやっても誰よりも上手いと思いますよ。サイドバックやったってできるし、センターバックやったってできますよ。それくらいサッカーが図抜けて上手な選手だし、強い。だからほかの選手の良さもすぐにわかるんだと思いますね。

――戸田さんはオランダ・エールディビジのデンハーグでプレーされていましたが、リーグとしてはどんな特徴がありますか?

 オランダは基本的にシステムがどこも4―3―3なんですよ。これが例えばスペインだったら4―3―3、4―4―2、4―1―4―1、4―2―3―1といっぱいありますよね。オランダはそういうのがない。だから結局単純な選手のクオリティの差であそこが強いじゃんってなるんです。割と勝負がハッキリしやすいのが特徴ですね。それとディフェンスはマンマークなんです。このポジションは相手のこのポジションをマンツーマンでマークと決まっています。でも僕がプレーしたときのウイングのやつは守備をしなかった。僕はその後ろの中盤だから困りましたよ。でもそいつは攻めの部分が凄かった。そのあとフェイエノールトに行って、代表にも入ったロメオ・カステレンという選手です。真面目に「ここのマークはどうするんだ」って彼に話しても答えがいつも一緒で堂々巡りするだけなので、結局話すのを止めて僕がカバーしてました(笑)。でも彼は明らかに攻撃に強みがあったので、逆にうまく使ってやろうと思っていましたね。

――対戦相手で印象に残っているチームはありますか?

 僕がやった中ではAZが一番強かったです。PSVも強かったんですけど、あそこは本当に個だったので。ファン・ボメルがいて、パク・チソンがいて、ケジュマンもいました。ロッベンはたしか怪我で出てなかったんですよ。あとフェイエノールトにはファン・ペルシーがいました。一発ガッツリ削ったんですけど、まだ若かったのでその試合ではあんまり目立ってなかったですね。でもカステレンがフェイエノールトに行く前に、一緒に試合を観にデ・カイプに行ったんですよ。そのときにはやっぱり良いもの持ってるなって思いました。

――現在、フィテッセでハーフナー・マイク選手がプレーしています。彼についてはどんな印象ですか?

 オランダに合っていると思いますよ。どこのチームも3トップの真ん中にはデカい選手を置くので。フィテッセの試合を見るときちんとし過ぎてるくらいきちんとサッカーをしています。そういう中で彼は言葉の問題もないと思うし、もっと要求していいんじゃないかって思いますね。僕が見た試合では、彼の得意なところには一回も来てないんです。全部足下のボールなんですよ。彼は下もできると思うんですけど、本当に強いところはどこなのっていうとそこではないですよね。まだ周りに合わせようという雰囲気が感じられました。点を取るという意味で、そういった要求をもっと出していけば必然的にゴールも増えるはずです。

――香川選手やハーフナー選手が今後もっと活躍するためには、さらに自分の良さを出して、要求していく必要があるのかもしれませんね。今日は貴重なお話ありがとうございました。

J SPORTS番組情報

<13/14 イングランド プレミアリーグ>
~第26節~
ニューカッスル・ユナイテッド

ゲスト:戸田和幸 実況:野村明弘
開催日:2014年2月12日(現地)

★J SPORTSにて戸田和幸氏がゲスト解説を行います

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