2013.12.17

小澤竜己に聞く(365日FC東京/東京ぴーぷる)

 欧州強豪国のトップリーグだけでなく、近年は数多くの日本人選手が活躍の場を求め、世界各国のさまざまなレベルのリーグで活躍している。2006-07年に東京のトップチームに在籍したFW小澤竜己(25)はポーランドで、GK権田、DF吉本らの同期でFC東京U-18でプレーしたMF中野遼太郎(25)はラトビアで、今それぞれ奮闘を続けている。日本人を見かけることもほとんどない異国の地。華やかな舞台から離れた厳しい環境の中で、ひたむきに「上」を目指して戦っている2人に話を聞いた。(聞き手・高橋正和)

「上に上がるためにも点を取らないと」

 小澤が今シーズン所属するのは、バルト海に程近いポーランド北部の街を本拠とする国内4部リーグのグアルディア・コシャリン。今季の開幕当初からレギュラーの座をつかみ取り、ほぼ先発で試合に出続けている。(インタビューは10月下旬)

「今、右のアタッカーをやっています。これまでの13試合には全部出場しているんですが、まだ点を取ってないんですよね。それでも全試合に出るっていうことは監督からある程度の評価はされていると思いますけど、やっぱり外国人で来ているんで点を取らなきゃいけないし、上(のリーグ)に上がるためにも点を取らないといけないですよね」

小澤竜己
グアルディア・コシャリンでプレーする小澤(右)

 その言葉通り、11月9日のリーグ第15節・ドラバ戦でようやく待望の初ゴールも挙げた。試合を重ねる中でプレースタイルも、意識も少しずつ変化してきているという。

「昔はストライカーをやっていて、4-4-2とかの2トップで、結構大きい選手と組めて、その周りを動いて、うまい人にパスを出して、いいところに入って、いいところで決めるみたいな感じでしたけど。今のサッカーって基本的に1トップになってきて、そういう選手のやるポジションがなくなってきたんですよね」

「日本代表の岡崎選手もドイツでは基本的にサイドが多いじゃないですか。僕もそういうプレーを覚えていかないといけないなと思って、(JFLの)秋田のときにサイドをやり始めて、海外に出てからは基本的にサイドをやっています。もともとは、生かしてくれる選手がいて、(自分は)走って生かしてもらうタイプだったんですけど。こっちはそうやって生かしてくれる人がいないし、パスを出したら、その選手が自分で行きたがっちゃうから。みんなが積極的にチャレンジするんですよ」

「逆に初めは僕が味方をうまく生かす方をやってたんですけど、最近やっとちょっと変われつつあるんです。このチームでは安定して使ってもらえるかもしれないですけど、やっぱり上に行くって考えたら、それではまだ表現が足りないなって。やっぱり仕掛けていかないといけないし、仕掛けた中でゴールを決めたり、味方にアシストしたりとか、そういう数字が付いてくれば、もっと上に行けると思っています」

 チームには今年3月から在籍。耳慣れないポーランド語に悪戦苦闘しながらも、仲間たちとコミュニケーションを取り、今ではすっかりチームに溶け込んでいる。

「(チームメートには)コザとか、コズィーニって呼ばれてます(笑)。イタリア語とかで(語尾に)『~ズィーニ』って付けるみたいで。初めはコザだったんですけどね。こっちでコザって日本語でヤギって意味なんですよ(笑)。それですぐ覚えられて」

「英語をしゃべれる選手がだいぶいるし、自分もポーランド語を覚えようと勉強し始めていて、週1回くらいで授業を受けているんですけど。でも、まだ全然。まずはサッカーで使う『行け』『戻れ』とかから、使っている言葉を耳で覚えてますね」

「あとはやっぱりしゃべろうとしたり、笑ったりすれば、向こうも受け入れてくれるし、ムスッとしていれば、あいつは何を考えているか分からないと思われる。言葉が通じなくてもこっちからコミュニケーションを取ろうとすれば、仲間として受け入れてくれるし、僕は結構、そういうのが得意と言えば、得意なんで(笑)」

 海外に戦いの場を移してから初めて、今季はけがもなく順調なシーズンを過ごしている。

「今までだとイケイケで行って、自爆して、けがみたいな(笑)。そういうこともすごく多かったから、今こうやってコンスタントに出ているのは、今シーズンが本当に初めてですね。それだけ出られているのも成長なのかなって思います」

海外志向が芽生えたFC東京時代

 2006年、小澤は青森山田高からFC東京に加入したが、その後のプロサッカー人生は多くのけがに付きまとわれてきた。ルーキー時代も、股関節周辺の痛みが続くグロインペイン症候群に悩まされた。

「けがは多かったですね。(FC東京在籍時の)あの時期、内で巻くシュートをずっと練習していたんですけど、それでグロインペインをやってしまって。東京の最後の方はサッカーができる感じになっていたんですけど、ちょっと違和感というか、そういうのはずっとありました」

「あとは足首も弱くて、原因不明でいきなり歩けないくらいになるときが、いまだに少しありますね。でもそんなに後悔はしてないです。しょうがないっていうか、その場で100%やっていた結果なんで」

小澤竜己
2006年、ルーキー時代の小澤(右)。中央はルーカス

 小柄な体を駆使して、常にフルパワーで戦う。そうしたプレースタイルが観客を引きつける一方、それが故障に見舞われる要因となったかもしれない。

「今はちょっと抜くところを覚えてきたかなって思います。今までは0か100の選手でしたから。当たれば100のプレーができるし、当たらなかったら0のプレーだった。今はやっとちょっとずつ安定したプレーができるようになってきたかなって思います」

 2008年、小澤はFC東京から当時JFLの鳥取へ期限付き移籍。シーズン11得点を奪いながら、その年末に東京から契約非更新を伝えられた。09年からは鳥取へ完全移籍。11年にJFLの秋田に移ったが、翌年は秋田からの契約延長の打診を固辞し、かねてから考えていた海外移籍を目指した。

 海外志向が芽生えたのは、2シーズン在籍したFC東京時代だったという。ルーキーの06年こそ公式戦6試合に出場したものの、翌07年の出場機会はゼロに終わっていた。

「まあ今だったら自分が使われなかったことは理解できるんですけど、あのときはやっぱり若かったから、『ちょっとくらいチャンスをくれてもいいじゃん』っていう思いがやっぱりあったんですよ」

「練習試合では点を取れて自信もあったし、(FC東京での)最後の方はグロインペインも治ってきて、サテライトリーグ最後の3試合は3試合とも点を取っていたんです。でもやっぱり使ってもらえなかった。そうやって苦しんでいるときに、(当時コーチの)長澤徹さんが、モチベーションを保たせてくれるっていうか、いろんなハッパを掛ける言葉を掛けてくれてたんです」

「徹さんが(元FC東京で海外で活躍した)福田健二さんとか、李忠成くんの話をしてくれて、そういうところを目指してやった方がいいんじゃないのかって話になったんですよね。ゴールにこだわって、結果にこだわって、やり続けることが大事だってこととか、出られていないときに何をしないといけないかとか、いろんな言葉をくれていたんです」

「鳥取に行ったときも秋田に行ったときも、いつか(海外に)出ないといけないというか、出たい出たいって思いすぎていたのが、逆にダメだったのかもしれないです。何か逃げ道を作ってたじゃないけど、いつか行く、いつか行くって思いながらサッカーをしていましたから」

 昨年、ようやく念願の海外移籍へと踏み出したが、そこからの道程は順風満帆ではなかった。まずラトビアへ渡って移籍先を探していたが一転、鳥取時代の監督だったタイ人のビタヤ氏からの誘いが届き、タイへと渡る。そこで紆余曲折の末にパタヤ・ユナイテッドとの契約が決まったものの、チームに慣れる前に第5中足骨を骨折し、6月で契約解除となってしまった。

「最初はチョンブリってチームに入れるっていうことで、選手登録最終日の1週間前にタイに行って練習していたんですよ。それが登録最終日になって、パタヤっていう兄弟チームの練習試合に行けって言われて。それで、その試合で点を取ったら、『パタヤが欲しがっているから、あっちに行け』って話になったんですよ。その辺はかなりいい加減だったんですけど」

「それでパタヤに入ったんですけど、チームに慣れるのに時間がかかっている間に、1、2カ月で骨折しちゃって…。やっぱり海外でけがをするって致命傷で、外国人でけがをしている選手に給料なんて払いたくないじゃないですか。それで話し合って、契約解除になりました」

 その3カ月後、再びラトビアへ渡り、同国1部のグルベネと契約するが、11月にリーグ戦が終了。その後は欧州各国からチームが集まる合宿地などに足を運び、飛び込みで入団テストも受けた。

「代理人と一緒に、『(自分は)ここのポジションなんだけど、今欲しくないか。欲しいんだったら見てよ』って話をするんです。話を聞いてくれるときもありますけど、本当に10回、20回行って1回当たればいいじゃないけど…。結局、そんなにテストは受けられなかったんですよね」

「去年の年末にポーランド2部のチームを1つ受けて、たぶん取ってくれるよって話になったんですけど、結局は流れちゃって。今年に入ってからも、いろんなところのテストを受けようとしたんですけど、まずテストに連れていってもらうのが結構大変で、それでテストに受かるのもやっぱり大変で…」

これからもチャレンジし続けたい

 ようやく昨年3月、現在所属するグアルディア・コシャリンでのプレーが決まった。4部リーグのクラブ入団にもちろん納得しているわけではないが、これからの道筋はしっかりと見えている。

「まだ今はそこまで移籍したいと思わないですね。今までで一番っていうくらい安定して試合に出られているから、これをやり続けていけば、もっともっと良くなってくると思うし、また成長している実感が少しずつあるんで」

「ドイツだったら、他国のチームから簡単にお金で選手を取ってこれるけど、ポーランドって下のリーグから選手を吸い上げることをする国なんですよ。(ドイツのドルトムントで活躍する)レバンドフスキもたぶん5部、4部、3部、1部って得点王になって上がっていったし、今のチームからも去年1部に1人行って、今年も1人が1部に決まったんです」

「そうやって吸い上げることもよくあるし、だから常にチャンスがあるんで。この4部って、1部のセカンドチームのサテライトリーグみたいな感じにもなっているんで、そういうときに上の人が見に来てくれて、いいプレーをすればテストに呼んでくれるんです」

「2部だとテレビ映像が流れたりとか、そうすると点を取らなくてもいいプレーをしていれば、あいつはいい選手だなって目は付けられやすいとは言ってましたけど、やっぱり4部だと、もっとゴールにこだわっていかないといけないですけどね」

 この2年間、さまざまな経験を積み重ねてきた。日本とはまったく異質な環境で1人で戦いに挑んできたからこそ、見えるモノがある。


これからも「チャレンジし続けたい」と語る小澤

「この前、U-17ワールドカップ(W杯)で、日本がスウェーデンに負けた試合を最後の15分間ほど見たんですよ。最後の方で(負けていて)1点を取らないといけない試合なのに、常にボールを回して、回して、全然前に行ってなかったんですよ。そこからいかに崩せるかっていうのも日本で学んできたサッカーだから、決してそれを否定するわけではないんですけど、最後の方の場面を見たポーランド人から、何で行かないの、何で行かないのって。負けているのに何で攻めないんだって」

「それがいいとか、悪いとかじゃなくて、こっちの文化に触れたからこそ分かることもあって、こっちでサッカーをやっていると、やっぱりそこで仕掛けたら崩れるかもしれないのに、何でリスクを負わないのかなって思うこともある。自分はまだまだ(仕掛けに)いけてない選手だけど、失敗を恐れちゃいけないですよね。人生においても、一つひとつのサッカーのプレーにおいても。失敗は起きて当たり前くらいに思ってトライしていかないと」

「自分はいつか海外に出たいと思って、こうやって足を踏み出したから、結局、海外でチームも見つかったんですよ。別に、今も誇れるようなチームではないかもしれないですけど、サッカーができているわけで。他の人は分からないですけど、だから自分はそうやって、思ったらやる人でありたいとは思いますね」

 ようやく軌道に乗ってきたサッカーの面だけでなく、ピッチ外でも視野は段々広がってきたという。

「もっといろんなことを知りたい、いろんなことを勉強したいなと思えるようになってきました。高校も授業よりも部活っていう学校にいたし、大学なんて行ってないし。だけど今は英語の授業も週1回やり始めて、ポーランド語(の授業)も週1回受けていて、まだそこまで身になっていないから、そんなに大きな顔をして言えるレベルではないけど、できたら本当に通信ででも大学に行きたいくらいですね」

「いつかサッカーを辞めないといけないときが来るし、そういうことも含めて、今やっていることが生きるようにしないといけない。本当に人にない経験ができているんで、そういうのを強みに思って、やっていきたいなと今は思っています」

 プロ8年目の25歳。「これからサッカー選手を辞めるまでに成し遂げたいことは」と問うと、真っ先に「チャレンジし続けたい」という答えが返ってきた。

「今はポーランドでやっているんで、ポーランドで1部に行きたいですし、そこまで行ったら、また見えてくる世界もあるだろうし、違う国でやってみたい気持ちもあるし、本当にいろんな世界を見てみたいですね。あと、長くやりたいですね。長くサッカー選手をやりたい」

「将来を不安に感じたこともありますし、だからこそ、このサッカー選手としての生活を毎日大切にしないといけない。確実に結果を出したら上がれる世界だから、頑張っていかないといけないなと思っています」

 どんな状況でも労を惜しまず懸命にプレーするのが、今も変わらぬ小澤のスタイル。どんな状況に立たされても、これからも全身全霊で戦い続けていくはずだ。


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