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東アジアカップ コリャコリャ日記 最終回「センターバック、見つかりましたか?」

2013.07.29
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文/竹田聡一郎

 まずは、おめでとう。ありがとうである。

 先週土曜から始まった東アジアカップだが、なでしこの試合を含め、日本の試合なんか誰も観てなかった。ソウル郊外の華城でのゲーム(男子vs豪州、女子vs北朝鮮)なんか1500人に満たない観客動員数である。

 それが昨夜、雨のド級アウェイのてーはみんぐ大合唱である。東アジアカップなんつーローカルな大会だろうと日韓戦は日韓戦。たぎりまくる伝統の一戦である。

 で、ご存知だろうが、柿谷である。少ないチャンスをしっかり決めてくれた。どうやら彼は昨夜、2本のシュートしか打っていないらしい。我々の宝物はジーニアスでクラッキでもあったのだ。嫌がるだろうけど頬ずりしてあげたい。
 
 僕のすぐ後ろに座った20代男性は大阪からやってきたらしい。

「ぶっちゃけ、おれ、ガンバサポなんすよ。柿谷、嫌いだったんですよ。でも……」
 とそこまで言ったところでちょうど柿谷コールがはじまった。彼は曜一朗、曜一朗と6回も叫んだ。
 
 とにかく気持ちが良かった。ロスタイムの柿谷弾後に起きたすべてのこと、ミョンモ兄さんの苦悶の表情も、スポーツの現場にそぐわない横断幕をもそもそと片付け撤収していく韓国サポーターの姿も、いつの間に聞こえなくなった「ピルスン(必勝)コリア」も、スポーツ新聞はもちろん今朝の一般誌はほとんどすべて一面は「日韓戦に負けた」だったことも(パク・チソンPSV復帰か、の記事も大きかった)、どれもがナショナリズムをくすぐってくれてコンベーだった。
 
 もう一度、おめでとう。ありがとう。以上、現場ソウルからお伝えしました。

 さて、十分はしゃいだので満足だ。韓国には「いい時期こそキムチは辛い」ということわざがある、というのは噓で今、僕が作ったのだけど、「勝って兜の〜」というヤツである。
 
 ザッケローニ率いる「B代表」「2軍」「Jリーグ選抜」「研究生」などといろいろな呼び方をされた今大会の23人だが、よくやってくれたことは認めつつ、自分であれだけ浮かれておいてなんだが、「日韓戦アウェイ勝利」「東アジアカップ初優勝」というめでたい見出しに踊らされてはいけない。

 2011年のアジア杯がそうだった。「世界のベスト4に入る」「W杯優勝」と目標を掲げているチームが、いってしまえばたかがアジア制覇しただけで、多くのものを錯覚してしまった。あの頃、ザッケローニを疑っていたファンやマスコミはセルジオ越後以外にいなかった。まあ、あの人の場合は単純に(しかし偉大な)芸風でもあるのだが。そこから我々の盲信と妄信と盲進が始まり、迷走と停滞を導いたのではないか。

 だからこそ、ザッケローニに問いたい。センターバック、見つかりましたか?

 どのメディアもファンも森重には概ね及第点を与えているようだが、及第点で世界と戦えるのかという不安はある。3試合で柿谷や山口螢のような明確な回答はなかった。もちろん、森重は今後もチャンスを与えられるので、そこでより強いアピールとディフェンスの軸となるプレーを示してほしい。

 他の選手もそうだ。今回のB代表の選手は「ポスト本田」「遠藤の後継者」「岡崎の代役」なんていうふうに求められ、報じられている。しかし、厳しい言い方にはなるが彼ら本田や遠藤や岡崎らのコンフェデ杯のメンバーが作ったイレブンでは現段階では世界に通用しなかった。だからこそ「代役」「代表定着」「ブラジルに行く」なんていう小さな目標ではなく、彼らをベンチに追いやるような、一気に主役の座を狙ってほしい。少なくとも、Jリーグでトップクラスのプレーをしているという自信、代表ジャージを着る誇り、世界と戦う野心、それらをしっかりとミックスして次のステップに進むべきだろう。
 
 再来週にはウルグアイとのゲーム(8月14日宮城)がある。A代表とのフュージョンである。
 
 大事なのは柿谷がどういう形で本田や香川と絡むのか、世界のハイプレッシャーの中で何ができるかだ。模擬試験は終わった。9月の親善試合(6日vsグアテマラ、10日ガーナ)、10月の東欧遠征(11日vsセルビア、15日ベラルーシ)と、テストの本番はむしろこれからなのだ。

 ということで、あまちゃんばりに多くの登場人物を増やし、クライマックスであるブラジルW杯へ向かうザック劇場だ。みんなで愛と懐疑を持って引き続き応援していきましょう。

 帰国したら今大会のトップスコアラー柿谷とMVP山口、そしてベストレフリーの西村雄一さんを観に、そして何よりもまだ見ぬセンターバック(やっぱり名古屋に行かないといけないのかもしれない)を探しにJリーグに行こうと思います。またスタンドで会いましょう。カムサハムニダ。

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著者/竹田聡一郎(たけだ そういちろう)
1979年神奈川県生まれ。同い年の小野伸二にヒールで股抜きされたことを妙な自慢としながら、フリーランスのスポーツライターとして活動。戦術やシステムを度外視した「アンチフットボールジャーナリズム宣言」をして以来、執筆依頼が激減したのが近年の悩み。著書に蹴球麦酒偏愛清貧紀行『BBB』(ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅/講談社文庫)と、スルガ銀行のサッカーweb「I Dream」で連載中のコラムを書籍化した『日々是蹴球』(講談社)がある。
twitter:@takedasoichiro

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