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4大会連続3回戦敗退の青森山田だが、この3年間を否定するのもナンセンス

2014.01.03

PK戦の末履正社が青森山田を退ける[写真]=川端暁彦

文=川端暁彦

 全国高校サッカー選手権。青森山田(青森)は4大会連続の3回戦敗退となった。初出場・履正社(大阪)との対戦は「胸を借りるつもりで」(履正社・平野直樹監督)向かってきた相手に、1-1からのPK戦で惜敗。またしてもこのタイミングで大会を去ることになってしまった。

 青森山田・黒田剛監督も「魔の3回戦」と形容したが、多くの指導者が「高校選手権は3回戦が最も難しい」と口を揃える。日程が大きく緩和されてきた現代の選手権においてなお、2回戦と3回戦の間は唯一休養日が存在しない“中ゼロ日”の連戦だ。緻密な準備などできるはずはなく、疲労が回復するはずもない中で、自然と“勢い勝負”のゲームになることが多い。緻密にゲームをプランニングする青森山田がいつもこの壁にはね返されるのは、当然ながら偶然もあるわけだが、偶然だけというわけでもない。

「たまたま運が味方してベスト8に入った」と初出場・履正社の平野監督が笑い、「9回目のベスト16での敗退。何かが足りていない」と常連校・青森山田の黒田監督が肩を落とした。その構図は、ある意味で現代の選手権の縮図だ。「(履正社は)1,2年生ばかりで来年もあると、伸び伸びやっているように見えた(先発の3年生は2名のみ)。ウチみたいに『国立だっ!』『これが最後だっ!』という感じではなかった」と黒田監督が語ったように、選手が背中に感じていた心理的なプレッシャーの差は外から観ている側からも明らか。それは最終的に、PK戦の結末という形で反映された。

 ただ、この無情な結末のみをもって青森山田の取り組んできたこと、この3年間を否定するのもナンセンスだろう。国立に向けて本気で入れ込んでいた彼らの思いも、別にネガティブなものではない。試合後、控え部員から掛けられる温かい声に次々と涙をこぼしていく姿は、本気で取り組んできた証だろうし、この結末とて今後の人生の財産となるに違いないと思わされるものだった。

 試合中、何度もピンチを迎えた履正社GK安川魁は「本当に強いチームだった。いついかれてもおかしくなかった」と語り、平野監督は「ハイレベルなチームであることはやる前から分かり切っていた。映像を観ながら、多少押し込まれるかな、いや随分と押し込まれるだろうなと思った」と賛辞を惜しまなかった。それも当然だろう。確かに彼らは強かったし、良いチームだった。高い技術と身体能力を持った選手がおり、何よりよく団結していた。

 悲壮感すら漂わせながら黒田監督が漏らした「4年連続9度目の3回戦敗退」という言葉はそのとおりなのだが、「4年連続9度目のベスト16」という言い方もできる。群雄割拠のこの時代に、これだけコンスタントに戦績を残せるというのは、サッカーの質が伴っているからこそ。この繰り返された結末を「勝負弱い」と切り捨てるのは簡単なことで、「○○が足りなかった」と論評するのも難しくはない。ただ、試合後の風景を見ながらまず思ったのは、「2013年度の青森山田は良いチームだった」という事実を書き記しておきたいということだった。

文=川端暁彦

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