2015.11.22

中村俊輔「香川はやることが多すぎる」…日本代表・背番号10を生かすアドバイス

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日本代表の新旧背番号10、中村俊輔(左)と香川真司(右) [写真]=Getty Images
サッカー総合情報サイト

 1月のアジアカップでベスト8敗退に終わったことを皮切りに、試練の続いた2015年の日本代表。年内最終戦となった11月17日の2018年ロシア・ワールドカップ アジア2次予選のカンボジア戦(プノンペン)も引いた相手に苦しみ続け、オウンゴールと本田圭佑(ミラン)の得点で2-0と辛勝。後味の悪さを残してしまった。

 その大苦戦から3日後の20日、日本代表で長らく背番号10の重責を担った中村俊輔(横浜F・マリノス)を直撃するため、マリノスタウンへ足を運んだ。今の日本代表チームと背番号10番の後継者である香川真司(ドルトムント)の停滞について、アジアと世界を熟知する彼に、どうしても話を聞きたかったからだ。

 実際、香川の代表での苦悩は日本中が危惧するところだ。トーマス・トゥヘル監督率いる今シーズンのドルトムントでは、ピエール・エメリク・オーバメヤン、マルコ・ロイス、ヘンリク・ムヒタリアンとともに“ファンタスティック4”と称されて輝きを放っている香川だが、日本代表ではカンボジア戦のように消える時間が圧倒的に長くなる。

 では、なぜ香川は代表で輝けないのか。

 この疑問は、アルベルト・ザッケローニ監督時代から日本代表が抱える大命題といっても過言ではない。その要因をチームメートの長友佑都(インテル)は「僕ら(代表選手の)一人ひとりがドルトムントの個々のレベルに達していないのが、正直なところ。ドルトムントの選手たちは個人能力がすごく高くて、1人でマークをはがす能力があったり、フリーになったり、数的優位を作ったりすることができる。真司を代表で生かしきれないのは、僕ら周りの責任でもある。彼自身もギャップがあって難しいと思います」と主観と客観を交えながら分析した。

 香川に10番を託した俊輔も、長友の発言に自身の思いを重ね合わせていた。

「ドルトムントだと、香川の周りにいるダブルボランチや前線の3人の誰かの近くに寄ってきて、ポンポンポンってボールが回るし、ゴールまで一気に持っていける。その連動性はちょっとレベルが高すぎる」

 俊輔はまるで自分自身が今も香川と一緒に日の丸を着けてピッチに立っているような実感をにじませつつ、ため息交じりにこう語った。そして核心を突く言葉を口にしたのだ。

「代表での香川はやらなきゃいけないことが多すぎる」

 さらに俊輔は鋭い分析を続け、今の“背番号10”を取り巻く状況の難しさを代弁した。

「香川は『点を取らなきゃいけない』って考えるだけじゃなくて、『ゲームも作らなきゃいけない』と思って、チームの土台の部分も頑張って作っている。だから目立たない試合もあるし、得点が入らない試合も出てきちゃう。俺なんかはゲームを組み立てて支配するタイプだったから、『まあまあ動いて、アシストして、FKで目立ってるな』って評価になる。俺がたくさんの得点に絡めたのも、ボランチや周りの選手がいいパスをくれたり、1つ2つ手前の仕事を他の選手がやってくれたから。それで俺は自分のプレーに専念できた。だけど、香川はそうじゃない。やらなきゃいけないことが多すぎて、はるかにプレーの難易度が高くなってると思う」

 俊輔が代表でプレーした2000〜2010年の約10年間は3-5-2や4-4-2のフォーメーションが軸で、前線は2トップがほとんどだった。だが、香川が10番を背負った2011年以降の日本代表は4-2-3-1が基本。前線は1トップが大半を占めている。それも香川の難しさを助長していると彼は見ている。

「今の代表って1トップでしょ。俺がやってた時は2トップだったから、自分がボールをもらってパッと顔を上げて前を見た時は2トップを生かせばよかった。今だとサイドに1人、前に1人しかいないから、得点をダイレクトにお膳立てできるチャンスはどうしても減る。香川も近くの誰かと連動しようとしてるんだけど、2人だけの関係で終わってることが多いように見える」

 しみじみと語ってくれた俊輔の言葉を借りれば、香川がアシストやゴールなど代表でゴールに直結するプレーを出し切れないカギは、やはり「周囲との連動性不足」ということになるのだろう。ただ、今の代表活動日数の少なさを考えた時、そこまで息の合ったハーモニーを構築するのは簡単ではない。実際、次に日本代表として活動できるのは来年3月。それまでの4カ月間はそれぞれが所属クラブでのプレーに専念することになる。

 俊輔が代表の大黒柱だった時代は国内組の比率が現在より高く、Jリーグの試合日程が比較的緩やかだったこともあって、定期的な短期合宿でチームコンセプトを徹底し、選手同士のコンビネーションをすり合わせる時間を持つこともできた。環境の変化も、背番号10の苦悩を深める一因になっているのだ。

「それでも香川はすでに代表で23点取ってるでしょ。この数字に彼の活躍ぶりが表れている。そのことは忘れちゃいけない」と俊輔は自らの代表通算ゴール数24にあと1と迫った後継者へのリスペクトを忘れなかった。確かに、最近の日本代表の停滞は、決して彼だけの責任ではない。

 日本は自分たちよりレベルの下がるアジアのチームと戦いながら、ワールドカップ基準を視野に入れたチーム作りを進めなければならない。欧州トップクラブにいる香川は、日常的に世界基準に身を投じながら、急にアジアとの戦いにギアチェンジすることを求められる。それがいかに困難なのかは、代表で10年間戦い抜いてきた男が誰よりもよく理解している。

「日本代表が一番難しいのは、アジアと戦う時は相手が引いてくるのに、ワールドカップ本大会になると真逆になること。結果として、自分たちの力ををすべて出そうとして惨敗するか、岡田(武史=現FC今治代表)さんの時のように、しっかり引きつつカウンターを狙う攻撃を有効的に使うしかない。その方向づけをするのはやっぱり(日本サッカー)協会だと思う」と彼は今後に向けて重要な提言をしてくれた。

 アジアでの戦い、世界への挑戦という二面性を求められるのは日本代表の常。だが、代表の方向性をしっかり模索すると同時に、俊輔が言うように重責を背負いすぎている香川の役割をもう少しシンプルにさせられないものか。アジアを、世界を、そして日本代表を知る中村俊輔の言葉は非常に重い。現役選手だけに直接のアドバイスすることが難しいのは理解できる。だが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督や日本サッカー協会は先駆者の声を真摯に受け止め、2016年以降に生かすべきだ。それだけの説得力が、中村俊輔にはある。

文=元川悦子

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