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アタッキングフットボールは今季も健在。2004年以来となる2度目のリーグ連覇へ【J1クラブ展望/横浜FM】

2020.02.19

昨季はアンジェ・ポステコグルー監督の下、15年ぶりにリーグを制覇したが、今季もその強さは続くのか [写真]=兼子愼一郎

 アンジェ・ポステコグルー体制3シーズン目も『アタッキングフットボール』を継続し、リーグ連覇を目指す。

 リーグチャンピオンに輝いても志向するスタイルは変わらない。


 攻撃は自陣からのポゼッションで支配率を高め、多くのチャンスを作り出すことで得点を積み重ねる。守備では思い切りの良いハイプレス&ハイラインで相手から自由を奪い、攻守の切り替えの場面でのハードワークで圧倒する。ホーム、アウェイに関わらず、対戦相手にも左右されない。いかなる状況下でも攻撃的なスタイルを貫き、勝利を目指す。

 我が道を突き進むためのレギュラー陣の顔ぶれは、昨季から大きくは変わらない。とはいえ、チアゴ・マルチンスやティーラトンは期限付き移籍から完全移籍に切り替わっており、フロントは何もせずに指をくわえて見ていたわけではない。優勝メンバーの大半を残留させたことが“最大の補強”と言えるだろう。

 そして15年ぶりのリーグ優勝という成功体験は選手たちに大きな自信をもたらし、さらなる進化の根源となる。

「自分たちがやるべきことをやれば勝てる」

 扇原貴宏の言葉はチーム全員の総意だ。特に既存選手は残留争いに巻き込まれた一昨シーズンの苦しい時期を乗り越えて勝ち取った優勝が、かけがえのない財産になっている。

 しかしサッカーには対戦相手がいる。他の17チームは昨季以上に横浜F・マリノスを研究し、対策を講じてくるだろう。根本的な概念は変わらなくても、質を高めなければ連覇を成し遂げるのは難しい。

 だからこそ新加入選手の突き上げが欠かせない。優勝した昨季はシーズン前半と終盤でレギュラーの約半数の選手が変わっていた。負傷や出場停止といったアクシデントに加え、海外流出も頻発化している昨今である。開幕時のレギュラー11人で1シーズンを戦うのは不可能に近い。

 水沼宏太オナイウ阿道といった、すでにJ1での実績を持つ選手は即戦力として期待が掛かる。J2でのパフォーマンスがスタイルに合致するという観点で獲得した梶川裕嗣、杉本竜士、前貴之、仙頭啓矢、山本義道は早いタイミングでスタイルに適応し、ベンチウォーマーから不動のレギュラーに登り詰めた畠中槙之輔や朴一圭が歩んだ道を辿りたい。

 置かれている状況は1年前と大きく変わり、今季は最も注目を集める立場でのスタートとなる。だが選手たちに浮足立っている様子は一切見られない。

「昨季の優勝が保証してくれるものは何もない」

 キャプテンの喜田拓也はいたって冷静にそう話す。再び主役の座を目指し、横浜F・マリノスは勇猛果敢に歩を進める。

【KEY PLAYER】MF 11 遠藤渓太

ACL初戦でゴールを決めた遠藤渓太。当落線上の五輪出場も「あきめない」と語る [写真]=Getty Images

 先発には20代半ばから後半の選手がズラリと名を連ねる。22歳の遠藤は主力の中で最年少になる可能性が高い。

 昨季はリーグ戦33試合に出場。しかし先発は18試合と定位置確保には至らず、得点した次節にベンチを温める機会も多かった。そのため7得点7アシストといずれもキャリアハイの数字を残しても「満足していない。悔しい気持ちのほうが大きい」と表情は冴えない。

 マテウスは名古屋グランパスにレンタルバックしたが、今度はエリキがライバルとして立ちはだかる。現状は左ウイングの2番手という位置付けで、今季も追い掛ける立場からのスタートだ。

 能力の高さは誰もが認めるところ。宮崎キャンプでは水沼、大津祐樹、扇原と4人部屋で過ごして“後輩力”を養った。今季加入の水沼はユース出身の遠藤を「後輩力はイマイチ(苦笑)。でもサッカーの能力は高い」と認めていた。

 今年は東京オリンピックイヤーだ。当落線上の遠藤は開幕直後から圧倒的なパフォーマンスを見せる必要がある。チーム立ち上げ当初からコンスタントに招集されてきたアタッカーは「最後だけ外れるのは悔しい。難しい状況でもあきらめない。絶対にあきらめない」と言葉に力を込めた。

 自身の力で鬱屈として時間に終わりを告げる。背番号11の成長はチームのアップグレードにも直結する。

文=藤井雅彦

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