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夏のインターハイ開幕! J注目株も多数登場、一回戦の注目校・注目選手にフォーカス

2022.07.24

日大藤沢に勝利して2回戦に進出した丸岡 [写真]=川端暁彦

「群馬に比べると、むしろ涼しいくらいだな!」

 そう言って豪快に笑ったのは、優勝候補筆頭の声もある前橋育英高校(群馬)の宿将・山田耕介監督。「いや、群馬に比べて暑いところは日本にないですから!」というツッコミは飲み込みつつ、「確かに覚悟していたより涼しいスタートですね」と返した。

 夏季休暇期間の1週間余りを利用して行われる全国高等学校総合体育大会(通称インターハイ)の男子サッカー競技。その1回戦が徳島県の各地で24日に行われた。鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムの第1試合における気温は31.9℃(第2試合は33.7℃)。風もあって確かに「群馬に比べれば」暑くはない。

 さらに今大会は35分ハーフながら前後半の間のハーフタイムは15分、選手登録も従来の17名という極端に少ない数から20名に拡大された(これはサッカー側の念願でもあった)。前後半の間には控え室やテントに戻って休むことができる3分間のクーリングブレイクが設定されており、実質的にはクォーター制で戦われる大会でもある。そうした諸々もあって、大会の初戦は極端に足が止まるようなシーンはなく、白熱した攻防が続いた。

 第1試合では日大藤沢高校(神奈川)と丸岡高校(福井)の試合を観戦。丸岡は昨年の高校総体、地元開催の大切な大会で青森山田高校(青森)に屈辱的な大敗を喫しているが、「本当にそれが糧になっている」と小阪康弘監督と、その試合を切っ掛けに基準を上げたトレーニングを重ねてチームのベースアップに成功。その成果を随所に感じさせるプレーを見せて粘りの展開に持ち込むと、後半終了間際の66分と69分の連続得点で強豪・日大藤沢を2-1で沈めてみせた。

 日大藤沢にはJクラブからも熱い視線を注がれる198センチの超大型FW森重陽介がおり、敗れはしたが圧倒的な存在感を見せた。佐藤輝勝監督が「正直、あれだけの大きさで動けて、仕掛けもできる選手はなかなかいない」と舌を巻くポテンシャルを発揮し、複数人に囲まれてもボールを収めてさばき、ロングボールに対する空中戦でも群を抜くプレーを披露した。全国大会は初めてということもあって経験不足な部分もあり、ゴールはPKの1点のみ。敗戦後は悔しさをにじませつつ、「プロでも通用するように体も心も太くしていきたい」と未来への思いを新たにしていた。

森重陽介

注目の日大藤沢FW森重陽介は先制点を獲得も、チームは敗退 [写真]=川端暁彦

 第2試合では履正社高校(大阪)と明桜高校(秋田)が対戦。履正社はJリーグ入りが濃厚の名ドリブラーであるMF名願斗哉を擁する今大会最注目チームの一つだ。

 対する明桜は現校名になってから初となる32年ぶり出場を果たした。原監督は国見高校の全盛期にコーチを務め、名古屋グランパスやヴィッセル神戸のアカデミーでも指導経験を持つ指導者であり、「勝つことを目指すだけじゃなく、負け方にもこだわりを持って戦いたい。下がる気はなくて、ハイラインを保ちながら戦う」と勇猛果敢な戦いをチョイス。初戦の緊張感も漂う相手に対し、特に前半は互角以上の戦いを見せて1-1の同点で折り返すことに成功した。

 対する履正社の平野直樹監督は「全国大会を経験していない選手たちなので、思い通りにはいかないんだろうと試合前から思っていた」と、攻守で噛み合わなかった前半を振り返りつつ、ハーフタイムには選手たちにこう尋ねた。

「お前ら、楽しんでる?」

 うまくいかないことがあるのは織り込み済み。だからこそ、「出し切った結果としての結果は甘んじて受け入れるしかないじゃん。でも、これで楽しいの?」と選手たちに呼び掛けて、履正社らしいサッカーのメンタリティを回復させて後半に臨むと、まず1得点。さらにその後も前半とは見違えるような内容でゲームを運んだ。

 なかなか追加点は奪えない流れだったが、後半半ばのクーリングブレイクではこう笑って呼び掛けた。

「そろそろ楽しくなってきたな。でも、シュートが入らなかったからって下なんて向くな。もう一回打てばいいだけじゃねえか!」

 結局、その後に1点を加えた履正社が3-1で快勝。夏の盛りのゲームだからこそ、楽しんで飲み込んでしまおうという大阪の雄の戦いぶりは印象的だったし、明桜のよく訓練された攻守の切り替え、ゴールへボールを運ぶ鋭さも含めて見応えのある攻防となった。

敗れはしたが、好試合を展開した明桜 [写真]=川端暁彦

 敗れた明桜の佐藤拓海主将は「冬の選手権でまた履正社とやりたい」とリターンマッチを誓っていたが、初めての全国舞台で強豪と競るゲームを演じたことで、「十分に通用する」(佐藤)という自信も持ち帰る機会となったようだ。

「君たちには全国のベスト8以上を狙える力がある」

 原監督が言い続けてきた言葉が選手たちの中でも少し現実味を帯びたという言い方もできるだろう。シーズンの半ばに各地域のチームが集まって行う“中間発表会”の意味合いを持つ夏の全国大会ならではの光景だった。

取材・文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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