2013.03.02

専門誌編集者選定、Jリーグ20周年を盛り上げる“注目の20人”

 3月2日にスタートする2013シーズンのJリーグ。1993年に横浜マリノスとヴェルディ川崎による華々しい開幕戦から、今年5月15日で20周年を迎える。多くの名選手が彩ってきた歴史を塗り替える次のヒーローは果たして誰なのか。記念すべき20周年を盛り上げるであろう20人の選手をピックアップした。

優勝の立役者に今年も注目!

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佐藤寿人(サンフレッチェ広島)
高萩洋次郎(サンフレッチェ広島)

 まずは昨シーズンのJリーグアウォーズで史上初の個人4冠(MVP、得点王、ベストイレブン、フェアプレー個人賞)に輝いた佐藤寿人。リーグ戦開幕に先立って行われたFUJI XEROX SUPER CUP 2013では、アクロバティックなジャンピングボレーを鮮やかにたたき込み、20周年イヤーのスタートに花を添えた。いま最も旬な選手にして、一瞬の動きで試合を決めるだけの圧倒的な存在感を見せる。今年も目が離せないストライカーであることに間違いはない。

 そのエースストライカーを中盤で盛りたてるのが、広島優勝の隠れた立役者となった高萩洋次郎だ。16歳8カ月3日でJ2デビューを果たし、当時の最年少出場記録を打ち立てた逸材がついに開花。類まれなる攻撃センスを安定して発揮しており、今年も華麗なボールタッチでピッチを沸かせてくれるだろう。

日本代表のFW争いが国内で激化!

李忠成
前田遼一(ジュビロ磐田)
李忠成(FC東京/写真)
豊田陽平(サガン鳥栖)
大迫勇也(鹿島アントラーズ)

 今シーズンの国内組で最も注目しておきたいのが、日本代表のFW争いだ。4-2-3-1を採用するアルベルト・ザッケローニ監督は、これまでポストプレーと空中戦に長ける前田遼一を重用してきた。その前田は自身のリーグ戦初ゴールを決めた相手が6年連続してJ2降格の憂き目に遭っている点がクローズアップされるが、ピッチにおける前線での存在感はピカイチ。寡黙に闘志を燃やすプレースタイルで、今年もザック・ジャパンに継続して招集されることが予想される。

 前田を追い掛ける存在としてチェックしておきたいのが、プレミアリーグのサウサンプトンからJリーグに戻ってきた李忠成だろう。昨年1月のアジアカップ決勝で見せた豪快な左足ボレーは、日本サッカー史におけるエポックメイキングとも言える一発。日本がアジアにおいて抜きん出た存在であることを力強く示した。サウサンプトンでも日本代表でもケガの影響で出場機会を減らしたが、潜在能力の高さは証明済み。日本代表と同じ4-2-3-1を主に採用するFC東京では、1トップだけでなく左右のアタッカーとしても起用されることが予想され、Jリーグで結果を出せば日本代表での可能性も大きく広がる。

 新戦力グループでは、豊田陽平と大迫勇也にも期待が集まる。スケールの大きなFWを好むザッケローニ監督だけに、鳥栖の躍進をけん引した豊田は、前田、李に続く国内3番手と呼べる存在。以前の“王様キャラ”は影を潜め、前線からの献身的なチェイシング、安定したポストプレー、ゴールまでの勝負強さを兼ね備えたストライカーへと成長した。大迫もロンドン・オリンピックのメンバー落選から飛躍的な進化を遂げ、懐の深いポストプレーを武器に名門・鹿島で不可欠な存在となっている。大迫は得点力向上がポイントになるものの、今シーズンの成績次第で代表FW争いに割って入るポテンシャルは十分。日本代表は早々にワールドカップ出場を決めることが想定されるだけに、本大会に向けたメンバー争いも今から注目しておきたい。

最もヨーロッパに近い男

山田大記(ジュビロ磐田)

 いま最も「ヨーロッパに近い」と考えているのが、磐田で「10」を背負う山田大記。昨年は鮮やかなゴールがフランスのサッカー専門誌で絶賛され、一部でドイツへの移籍も報じられた。大卒2年目でキャプテンを任されるなど、人望も厚い。豪快なミドルシュート、相手守備陣を切り裂くパス、鋭いドリブル突破を持ち合わせ、前を向いてボールを持った際にどんなプレーをするのか、取材する立場でもワクワクさせられる。ぜひスタジアムで実際に見てもらいたい選手だ。

伝統の背番号を託された男たち

柿谷曜一朗
工藤壮人(柏レイソル)
柿谷曜一朗(セレッソ大阪/写真)
杉本健勇(セレッソ大阪)

 新シーズン、クラブ伝統の背番号を託された選手にも目を向けておきたい。柏の工藤壮人は“ミスター・レイソル”北嶋秀朗の代名詞でもあったエースナンバー「9」を背負い、C大阪の柿谷曜一朗は森島寛晃、香川真司、清武弘嗣と受け継がれてきた「8」の大役を担う。同じくC大阪の杉本健勇は、森島と名コンビを組んだ西澤明訓の「20」を任された。3選手ともユース出身の生え抜きで、偉大な背番号が持つ意味をしっかりと理解している。新しいクラブの“顔”となるべく意気込みは強い。より一層気持ちを込めて戦うであろう彼らのプレーは、シーズンを通じて見続ける価値がある。

新天地での活躍を誓う

田中達也
羽生直剛(ヴァンフォーレ甲府)
森脇良太(浦和レッズ)
興梠慎三(浦和レッズ)
鈴木大輔(柏レイソル)
東慶悟(FC東京)
田中達也(アルビレックス新潟/写真)
大久保嘉人(川崎フロンターレ)
ダヴィ(鹿島アントラーズ)

 新天地を選んだ選手たちの活躍からも目が離せない。千葉でイビチャ・オシム氏の薫陶を受け、日本代表でも活躍した羽生直剛は、FC東京時代に重用された城福浩監督のラブコールに応えて、期限付きで甲府へ移籍。“ムービング・フットボール”を掲げる同監督にとって、ピッチ内で理想のサッカーを体現できる彼の存在は大きいだろう。FC東京で出場機会の減っていた羽生にとっても勝負のシーズン。チーム浮沈のカギを握る存在となる。

 大型補強を敢行した浦和にあって、最も話題を集めたのが森脇良太、興梠慎三の両選手。広島優勝の原動力となった森脇、ライバル鹿島からの移籍を決意した興梠ともに大きな決断だったはず。森脇は広島で一緒に戦ったペトロヴィッチ監督、槙野智章、柏木陽介が所属していることもあり、早々にチームにフィット。興梠もキャンプ中から1トップのポジションに入って結果を出すなど、新シーズンの活躍が期待されている。彼らの活躍がリーグ戦とACLの2冠を狙うチームの命運を左右することになりそうだ。

 ロンドン・オリンピックでベスト4に入った五輪世代では、鈴木大輔が新潟から柏へ、東慶悟が大宮からFC東京へ移籍。柏は鈴木の加入で3バックと4バックの併用が可能になり、パワフルなプレーへの対応が求められるACLで3バックを採用するなど戦術の厚みが増した。空中戦の強さ、ビルドアップとも将来の日本サッカー界を担うべき存在で、ザッケローニ監督が日本代表候補としてのリストアップを明言し、現役時代に”アジアの壁”と称された柏の井原正巳ヘッドコーチも自らの後継候補に指名した逸材。五輪代表で10番を任された東は、大分トリニータ時代の恩師であるランコ・ポポヴィッチ監督のオファーを受ける形でFC東京へ。オリンピアコス(ギリシャ)へ移籍した梶山に代わり、運動量溢れる司令塔として期待されている。

 浦和でサポーターから愛された田中達也は、J1残留を果たした新潟へ。浦和ではポゼッションを高めて攻めこむサッカーと、果敢な仕掛けを仕掛けるプレースタイルとが噛み合わずに出場機会を減らしたが、心配される足首の古傷は問題ないようで、堅守をベースに戦う新天地では持ち味を発揮できることが予想される。多くのサポーターを集める新潟でもファンの心をつかみそうだ。

 2010年の南アフリカ・ワールドカップで活躍した大久保嘉人は、J2降格の神戸から川崎Fへの移籍を選択。国内外から複数のオファーを受けながら、神戸残留を基本路線としていたが、チーム事情と方向性の違いから難しい決断を下した。基本技術と戦術理解度の高さには定評があり、FWでも中盤でもプレーできる万能性から、攻撃的な風間サッカーへ早々にフィット。「15点は取りたい」と具体的な目標を掲げている。

 中東からJへ復帰し、爆発的な得点力で甲府をJ1昇格に導いたダヴィは、今シーズンから鹿島の一員に。覇権奪還を目指すチームにおいて、得点に懸ける彼の執念と勝負強さが今シーズンの成績を大きく左右することになりそうだ。ジーコとともにブラジル代表の一時代を支えたトニーニョ・セレーゾ監督は、ブラジル人選手にとって“偉大なレジェンド”。チーム戦術において機能するべく意識を高めており、大迫とのコンビ成熟にも期待が寄せられる。ゴール前での力強さは必見だ。

アジア初戴冠へのラストピース

クレオ
クレオ(柏レイソル)

 昨シーズンのACLは初出場ながらラウンド16進出を果たし、アジア制覇への思いを新たにした柏。今年はリーグ戦とACLのダブルクラウンを狙って各ポジションで的確かつ強力な補強を施したが、その中で最大の補強と言えるのが、広州恒大(中国)から獲得したクレオだ。昨年のACLグループステージでは長身を生かしたパワフルなプレーで柏を苦しめ、ラウンド16ではFC東京相手に決勝ゴールをマークした。アジアを熟知した身長185センチの大型ストライカーは、柏の一員となった今シーズンのACL初戦(対貴州人和)でも打点の高いヘディングから決勝ゴールを決めている。柏のアジア初制覇、そしてJリーグ勢にアジア王者奪還をもたらすラストピースと言うべき存在。Jリーグを席巻する可能性は大だ。

次世代を担うニューカマー

南野拓実(セレッソ大阪)

 今年5月で20周年を迎えるJリーグ。開幕当時に生まれていなかった選手も続々と頭角を現し始めている。1995年1月生まれの南野拓実(C大阪)は昨シーズン途中に2種登録でトップチームに加わり、最終節でプロ初先発。その後の天皇杯ではレギュラーポジションを獲得し、プロ初ゴールも記録している。ユース時代は人気映画にもじって「南野帝王」と称され、ボールを持って前を向いた際の仕掛けは見どころあり。先輩の柿谷が背負っていた13番を任され、高卒新人ながら開幕スタメン濃厚と報じられるなど、次世代のエースとしてクラブの期待も大きい。今シーズンだけでなく、継続してチェックしておきたい存在だ。

 2013年3月2日。ベテランから若手まで、すべての選手が新鮮な気持ちで、心地よい緊張感を抱きながらピッチに向かう。20周年の記念すべきシーズン。僕たちのJリーグが、いよいよ幕を開ける。

文=青山知雄/Jリーグサッカーキング編集長 写真=安田健示、鈴木敏郎、嶋田健一、Getty Images