2013.01.11

欧州で旋風を巻き起こすマラガに見えてきた“未来への希望”

maraga

クラブ史上初のチャンピオンズリーグ出場で見事にベスト16入りを果たすなど、 マラガは欧州の舞台で旋風を巻き起こしている。しかし、開幕前に噴出した “金”の問題は未解決のまま。クラブの現状からマラガの未来を明らかにする。

 

文= Alberto GIMENEZ 

Text by アルベルト・ヒメネス

翻訳=工藤 拓 Translation by Taku KUDO 

写真=アフロ Photo by AFLO

 

《金満》クラブから一転して資金難に陥る

 天国から地獄、そしてまた天国へ。マラガが過ごした2012年は、まるでジェットコースターのように急激な浮き沈みを繰り返す激動の1年だった。

 

 2010年にオーナーとなったカタールの王族シェイク・アブドゥラー・ビン・アル・サーニの豊富な資金力を武器に、昨シーズンのマラガは不況に苦しむ他クラブを尻目に大物選手を次々と補強。移籍市場の話題を独占し、クラブ史上初のチャンピオンズリーグ出場という結果を出した。一方、並行して選手やスタッフにはなぜか度々給料の滞納が発生する。

 

 いったい王様は何をやっているのか。そんな人々の疑問が不安へと変わったのは、フェルナンド・イエロがGM職を辞任した昨年5月末のこと。それ以降、アル・サーニからの送金がぴたりと途切れるようになったのだ。

 

 結果として給料の滞納が2カ月以上も続いた末、7月半ばには選手がクラブを告訴する事件が起きる。チームを3部降格の危険にさらしかねなかったこの告訴はすぐに取り下げられたが、同月末にはアル・サーニがアルバニアの石油企業とクラブの売却交渉を行っているとの報道が流れ、クラブは大パニックに陥ることになった。

 

 そんな中でクラブへやって来たアル・サーニの右腕モアヤド・シャタト新副会長は、「今後も投資は続けるが、多額の負債をもたらしたこれまでとは異なる方法で行っていく」と発言。それまでのようにオーナーのポケットマネーを投資するのではなく、UEFAが求めるファイナンシャル・フェアプレーに対応すべく、クラブの収支バランスを重視した堅実経営への方針転換を発表した。

 

 アル・サーニが投資を止めた理由については諸説あるが、有力なのは都市計画参入の失敗だ。ヨーロッパ有数のリゾート地であるマラガの新都市計画に興味を持っていた彼は、最新鋭の新スタジアムや練習施設とともに、ホテルや商業施設などが立ち並ぶ大規模なスポーツリゾートを建設する計画に意欲を燃やしていた。それが地方自治体や法律の規制によってことごとく阻まれてしまったのだ。

 

 また、アル・サーニが投資した資金を一部のクラブ幹部が横領していたとの話もある。シャタトの副会長就任はその件を含めたクラブの財政監査と不正の一掃が目的だったといううわさがあるのだ。実際、シャタトの就任直前にはSDのアントニオ・フェルナンデスら数人の幹部がひっそりとクラブを去っている。このうわさは信憑ぴょう性に乏しいのだが、シャタトは送金が途絶えた理由について「王様は腹を立てているが、その理由は公表できない」と意味深な発言をしているだけに、何らかの問題が生じていたことは確かなようだ。

 

 その後シャタトはクラブを訴えたサンティ・カソルラらを売却し、得た利益を差し迫っていた支払いに充てることで当面の収支バランスを整えた。並行してチームは退団のうわさを一蹴したマヌエル・ペジェグリーニ監督の下で一つにまとまり、クラブ史上最も重要な一戦と言われたパナシナイコスとのCLプレーオフを制し、無事本戦への出場を決める。こうしてCL本戦の出場報酬を確保した上でハビエル・サビオラ、ロケ・サンタクルスらを補強すると、その後チームは国内リーグ、CLともに快進撃を続けていった。

 

脱オイルマネーを掲げ地元色の濃いチームへ

 マラガはクラブ崩壊の危機から一転して大躍進を遂げたが、現在もまだ、経営面の問題は続いている。先日もオサスナからナチョ・モンレアルの移籍金が未済だと訴えられた。もちろん、最新鋭の新スタジアム計画なんて白紙のままだ。それでも、徐々に見通しは明るくなっている。昨年12月には支払い不履行のためUEFAに凍結されていたCL出場報酬の受け取りが許可され、未払い分の給料を完済できる見通しが立った。また地元のビールメーカーと新たにスポンサー契約を結ぶなど、オイルマネーに頼らない健全経営に向けた歩みも進めている。

 

 激動の1年を生きのびた今、彼らはようやく止まったジェットコースターを降り、ゆっくりと歩き始めたところだ。今後は下部組織の充実化など、地元色の濃いチーム作りを進めていくことになる。それは時間が掛かる道ではあるが、危険な近道を通って事故に遭うよりはるかに良い。

 

 スペイン第3のビッグクラブになるという目標は遠のいたが、不可能になったわけではない。上質のフットボールをもって国内外で歴史を刻む今のチームには、見る者に明るい未来を想像させる力があるように思える。

 

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