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クロップが語る番狂わせの秘訣「相手をリスペクトすること」

2012.11.20

ワールドサッカーキング 1206号 掲載]

[写真]=Getty Images

 

インタビュー・文=トーマス・ゼー
翻訳=阿部 浩 アレクサンダー

 

ドルトムントを2連覇に導いてもなお、ユルゲン・クロップは自分をチャレンジャーと見なし、闘志を燃やしている。独走するバイエルンが最も脅威に感じているのは、間違いなくこの指揮官だろう。

 

「今日だけは何があっても守備をサボるな!」

 

早速ですが、今回のインタビューは「ジャイアントキリング」がテーマなんです。

 

クロップ(以下K)――面白そうだね! ジャイアントキリングこそサッカーの本質だよ。なぜそうなるのか、全く予想できないことがサッカーではしばしば起きる。偉大な「ドイツサッカーの父」、ゼップ・ヘルベルガー(編集部注:西ドイツが1954年のワールドカップで初優勝した時の監督)は「ボールは丸い」と言った。サッカーでは何がどう転んでもおかしくないのだとね。これは不変の真実だと思う。

 

ジャイアントキリングが起こりやすい条件、というものがあると思いますか?

 

K――秘密を解き明かしたら、私は名監督と呼ばれるだろうな(笑)。冗談はさておき、簡単に結論づけることはできない。戦い方だけの問題でもないし、選手のメンタル、スタンドの雰囲気といった環境面も重要になるだろう。それに、単に幸運が転がり込むだけで勝敗が決まることだってある。

 

では、具体的なモデルで考えましょうか。あなたのチームです。調子が良くないハンブルガーSVに負けた後(ブンデスリーガ第4節。2-3で敗戦)、チャンピオンズリーグではレアル・マドリーを破りました(グループリーグ第3節。2-1で勝利)。

 

K――なるほど。確かに2つの試合を比較すると、奇妙な結果に思える。ハンブルガーSV戦は5、6点は取っていてもおかしくなかったのに、常にリードを奪われる展開になり、結局追いつけなかった。失点シーン以外はほぼ完璧なパフォーマンスだったのにね。一方、マドリー戦の我々は決してうまく戦えたとは言えなかった。それでも、前半から粘り強く守り続けることで徐々に良い流れをつかむことができた。

 

R・マドリーに勝てた要因をどう分析しますか?

 

K――秘密を教えようか。試合前に1つだけスローガンを作ったんだ! 「今日だけは何があっても守備をサボるな!」ってね(笑)。マドリーのカウンターは3秒で相手のゴール前に到達する。つまり、ボールを失った時に追いかけないようなヤツが一人でもいたら、マドリーにはとても対抗できないんだ。あの試合で(クリスチアーノ)ロナウドはほとんど守備をしていなかったが、(ロベルト)レヴァンドフスキは前線からしっかり守備をした。その結果、ドルトムントのサッカーが機能し始め、最後に幸運が味方したということだ。

 

今シーズン、サブに回っていたケヴィン・グロスクロイツをスタメンで出場させたのも、守備面を考えてのことでしょうか?

 

K――守備面だけじゃない。押し込まれる展開になればカウンターが重要になり、彼のスピードと運動量がより生きるからね。加えて、彼のハートの強さも、こういう大きな試合に向いている。

 

最近の試合では、マルコ・ロイスがようやくフィットしてきたようですね。

 

K――彼のポテンシャルを疑ったことはないよ。序盤戦は苦しんだ試合もあったが、少しずつドルトムントのサッカーに慣れてきた。特にプレッシングは急速に改善されている。

 

あなたは以前から、「ドルトムントの最高の武器はプレッシングだ」と断言しています。

 

K――そう。ドルトムントの生命線と言ってもいい。高い位置でボールを奪えば、相手の守備陣形が整っていない状態で攻めることができるから、ゴールが生まれる確率は高くなる。最も効果的であり、最もクールなやり方だよ。

 

R・マドリー戦の勝利から何か教訓を得ましたか?

 

K――対戦相手に対するリスペクトを忘れるな、ということかな。我々はマドリーの強さをきちんと認識して、チャレンジャーとして戦った。そういう姿勢が大切なんだ。逆に言えば、受け身で戦えばどんなチームであれ、相手の良いところを引き出してしまうことになる。

 

あなたは戦術家として知られていますが、メンタル的なアプローチにも定評があります。

 

K――監督業は作戦ボードの上で完結するわけじゃない。その作戦を選手に実行させ、最大のパフォーマンスを引き出すことが私の仕事だ。しかも選手は機械ではないからね。彼らのメンタルを充実させることは、常に最重要事項だと考えているよ。

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