2012.09.24

サウサンプトン吉田麻也、本拠地デビュー戦で示した日本人DFの力

 日本人DF初のプレミアリーグデビュー戦は、必ずしも期待通りの結果ではなかった。第4節のアーセナル戦、待っていたのはシュートの雨あられ。味方DFの負傷による緊急登板や、チーム練習に参加したのもわずか数日というシチュエーションは、吉田にとって酷過ぎるものだった。

 

 実際、断片的に持ち味は発揮したものの、失点に直結するミスを犯すなど思い描いていたスタートとは程遠いものとなった。結果だけ見ても1−6の大敗。試合を見ていれば吉田のプレーに光を見出すこともできたが、一見すれば見限られかねない結果であることも確かだっただろう。

 

 しかし、吉田麻也にとっての、日本人DFにとってのプレミアリーグ2戦目は、デビュー戦で示された希望の光をさらに煌めかせるものとなった。

 

文=松岡宗一郎(サッカーキング編集部)
写真=Getty Images

 

本拠地デビュー戦は及第点以上の出来

 アーセナル戦後、ナイジェル・アドキンス監督が「練習に4週間参加していれば結果は違っていた」と語ったように、吉田にはほとんど時間が与えられていなかった。

 

 だからこそ、1週間とはいえチームとともに練習を積み、連係の強化に務めた上で臨む第5節アストン・ヴィラ戦は重要な意味合いを持っていた。しかもホームデビュー戦。外国人に厳しいと言われるイングランドのファンたちの信頼を勝ち取れるか否かという観点からも重要な一戦だったのである。

 

 そして迎えたセント・メリーズ・スタジアムでの一戦。サウサンプトンは前半36分に相手選手のシュートの当たり損ねが絶好のスルーパスとなる不運な形で失点を喫したが、後半4得点を挙げて快勝。何より第4節まで毎試合2失点以上喫していた守備陣にとっては今シーズン最少となる失点での勝ち点3獲得となった。

 

 その立役者の一人が吉田であったことに疑いの余地はない。小さなミスやディフェンスラインが揃わないシーンは見受けられたものの、課題とされていたイングランド特有のプレースピードへ対応し、屈強なFWとのフィジカル勝負にも怯むシーンはほとんど見られなかった。チームの弱点だったディフェンスライン裏へのボールに関しても、安定したカバーリングを披露。持ち味のビルドアップやフィードも本領発揮とまではいかなかったものの一端を見せ、十分に合格点を与えられる本拠地デビュー戦となった。

 

 実際、イングランドのメディアも吉田のプレーぶりを高く評価している。『スカイスポーツ』は採点(最高10、最低1、平均6)で「7」をつけ、「エクセレントデビュー(素晴らしいデビュー)」と称賛。アドキンス監督も、「吉田にとっては素晴らしい試合だったね。彼は、空中戦で競り勝ち、冷静さを保ってプレーしていたよ」とプレーぶりを称えた。

 

 そして少なくともセインツ(サウサンプトン)のファンたちは、なぜイングランドで成功例のない日本人DFをクラブが獲得したのか、その理由の一端をピッチ上に見出すことができたのではないだろうか。

 

レギュラー獲得、そしてその先へ

 まだ実質1試合をこなしただけで、そのプレーぶりを拡大解釈してとやかく言うのは野暮というものだろう。しかしながら、吉田がセント・メリーズでのキャリアを順調にスタートさせたということは確かである。

 

 数試合をこなせば新たな課題が見つかるはずで、吉田自身も継続が何より重要であると口にしている。まずはレギュラーを確固たるものとし、行く行くはチーム全体を掌握したいところだ。

 

 躍進を遂げるチームには必ず優れたセンターバックがいる。優勝の栄冠を手にしたマンチェスター・Cにはヴァンサン・コンパニがいたし、5位という好成績を残したニューカッスルにはファブリシオ・コロッチーニがいた。

 

 序盤は強豪クラブとの対戦が多くスタートにつまずいたサウサンプトンだが、そのパフォーマンスは一定以上の評価を受けている。旋風を巻き起こす可能性も十分で、その中核を担うのは吉田麻也になるのではないか。そんな可能性すら見出すこともできる、本拠地デビュー戦だった。