2012.09.07

自国開催を通じて得た収穫と課題を胸に――“ヤングなでしこ”笑顔で締めくくるための集大成へ。

ヤングなでしこ
 地元開催のU-20女子ワールドカップで、“ヤングなでしこ”ことU-20女子日本代表に寄せられる期待は高かった。地元での大会、A代表の“なでしこジャパン”がロンドン五輪で見事に銀メダルを獲得した熱気がさめやらぬタイミングなど要因は様々だが、もっとも大きかったのは個々のスキルが本大会参加チームの中でもトップレベルだったことだ。

 U-17の時からこのチームを率いる吉田弘監督は、初戦のメキシコ戦後にこの日本代表チームに求めるものを明かした。「個々のレベルを上げたい」。多くのカテゴリーで日本代表はその組織力がアピールポイントとなり、W杯など国の代表の戦いでもコレクティブな戦い方が年々求められていく中では、なかなか野心的なコンセプトだ。しかし、吉田監督は続ける。

「団結やチームにまとまることは日本の特徴でもあるけれど、逆にそれがネックになってアピールしなかったり、個性が伸びなかったり、ということもあるので、そういう意味ではこの子たちには、もっともっと競争しながらアピールしてほしい」

 この大会だけを見ても、個人で打開するプレーの選択、ポジションチェンジなど、状況に応じた戦術の変化については、吉田監督が試合中に指示を出すよりもピッチ上の選手たちの判断に任せられる場面が多かった。そしてそれを可能にする個人能力を、日本の選手たちは準決勝に進出する過程で見せ続けていた。

ヤングなでしこ
 8月19日に大会が開幕すると、日本はグループリーグのAグループで突出した力があることを証明した。宮城スタジアムでおこなわれた初戦のメキシコ戦では、柴田華絵のゴールを皮切りに猶本光、横山久美が強烈なミドルシュートを叩きこみ、田中陽子のPKでだめ押し。最後に1点を返されたものの、4-1で快勝した。22日のニュージーランド戦ではオウンゴールとカウンターから立て続けに2点を失ったものの、田中陽子と道上彩花のゴールで追いつき2-2で勝点1をもぎ取った。国立競技場に舞台を移してのスイス戦は、ニュージーランド戦の反省を生かして序盤から主導権を握り、田中陽子が両足で直接FKから2点を叩きこむ離れ技を披露してリード。西川明花の大会初得点と猶本光のPKを加え、4-0で勝利した。

 この間、先発メンバーは試合ごとに入れ替わっている。「スタメン組でもサブ組でも力の差は無いし、気を抜いたらポジションをすぐに取られます」と、藤田のぞみ主将は層の厚さについて語った。ドリブル、パス、シュートといった攻撃の技術。体格で差のある相手に対しても、体を入れるタイミングや間合いをはかっての足運びで一対一に勝つ技術。ヤングなでしこの面々は、実戦の中で持ち味を発揮していった。

ヤングなでしこ
 韓国との準決勝では、一度は追いつかれたものの柴田の2ゴールと田中陽子の大会5点目を見事な連係から重ねて3-1で勝利した日本。史上初の同大会ベスト4入りを果たした日本は、準決勝で連覇を狙うドイツと対戦した。

 しかしここで、日本はドイツとの差を見せつけられる。「ドイツは今までの相手とは違い、ほんのちょっとのところを見逃さずに脚を伸ばしてきた」と、木下栞は振り返った。集団での素早い寄せ、マークのズレを見逃さず突いてくる速いパス…体格差を生かした一対一の強さはあれど、それをさらに組織で生かす術をドイツは持っていた。しかも隙を突く判断力と、突いてからフィニッシュに持ちこむまでの迷いなきプレーの連続には、20歳以下ながら積んできた経験が生きていた。日本は前半に立て続けに失った3点を取り戻せず完敗。3位決定戦に進むこととなった。

ヤングなでしこ
 日本がドイツ戦のみならず、大会を通じて得た収穫も課題も多い。これからは、世界の舞台で評価された個の力を、連続したチームプレーにつなげていく作業が求められてくるだろう。A代表・なでしこジャパンが身につけている組織力に至るまでの道は短くはないが、地道に進めていきたい課題である。

 そして所属チームでの経験もまた必要だ。ドイツのパワーやスピードを体感して驚いたという猶本は、ドイツでのプレーへの憧れも見せつつも「まずは(所属する)レッズでしっかり戦って成長することが大事」と決意している。女子はU-20の先にはA代表しかない。A代表を目指す上では、現在のU-20日本代表のメンバーが現在なでしこリーグやチャレンジリーグなどで勝ち取っている出場機会は多いとはいえない。U-20ドイツ代表は、メンバーの多くが女子ブンデスリーガやA代表で実戦を積み重ねているからこそ身につけている力も多い。組織としての実戦経験については、個の技術や身体能力の育成と合わせ、日本サッカー界全体で取り組んでいくべき課題とも言える。

 まずは日本にとってこの大会の総決算ともいえるナイジェリア戦が待っている。「この大会で学んだことを、なでしこジャパンに選ばれるようになって生かしたい」と先を見る田中美南も、「そのためにも3位決定戦で絶対に勝ちたい」と言葉に力を込めた。国立競技場であと一つの勝利を手にして、「ヤングなでしこ」が笑顔で大会を締めくくれることを期待したい。

取材・文●板垣晴朗 写真●足立雅史