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コカ・コーラ社担当者が語る「スポーツマーケティングの魅力と業界で活躍するために必要なこと」/後編

2016.11.22

オリンピックのオフィシャルスポンサーとして最長の歴史を誇り、FIFAのトップパートナー、日本では様々な大会のスポンサーとして、スポーツと深く関わりを持つコカ・コーラ社。その他、各スポーツ界のトッププレーヤーと個人契約を結ぶなど、スポンサービジネスにおいてグローバルな発展を遂げる秘訣、またその戦略について、日本コカ・コーラ株式会社マーケティング本部IMC マーケティングアセッツ グループマネージャーの渡邉和史(わたなべ・かずふみ)氏に話を伺った。

インタビュー・文・写真=波多野友子

――2011年、博報堂から日本コカ・コーラ株式会社へ転職。どのような仕事からスタートしたのでしょうか。

渡邉和史 初めからマーケティング本部へ配属され、現在もスポーツマーケティング一筋です。初めて関わった仕事はアクエリアスの広告キャンペーンでした。本田圭佑選手、北島康介選手、石川遼選手3名を一度に起用するという壮大なプランにあたり、僕はネゴシエーションを担当しました。このCMは、それぞれの選手に専門外のスポーツをプレーしてもらうという斬新な企画だったのですが、そこが交渉においては難関になりました。特に本田選手に水着姿になってもらうために、何度もマネジメントオフィスに通いましたね。できあがったCMは評判を呼び、個人的にも記憶に残る仕事になりました。

――アクエリアスというと、北島康介選手を起用したプロモーションが印象的です。

渡邉和史 北島選手と日本コカ・コーラは、2005年から10年にわたり契約を結んでいます。北島選手自身もコカ・コーラファミリーとして、小学生を対象とした水泳教室の開催など様々な企画を提案してくれるなど、ギブ・アンド・テイクの理想的な関係が築けています。僕自身、北島選手とはかなり密な繋がり方をしていて、最近ではLINEを使って練習の様子やプライベートのやりとりをしているくらいです。

――サッカーについては、どのようなマーケティングに関わったのですか?

渡邉和史 澤穂希選手とは2011年から3年間契約を結び、アクエリアスのプロモーションに関わってもらいました。澤選手が日本サッカーの課題として挙げたのが、女子中学生・高校生のサッカーカテゴリーが注目を浴びていないという状況でした。ではそこにスポットを当てるにはどうすればいいのか? 僕たちスポーツマーケティングチームが提案したのが、2011年のクラブワールドカップの舞台に、彼女達をボールクルーとして起用するというプロジェクトでした。この企画はこれまでにないポジティブな試みとしてFIFAサイドにも歓迎され、サッカーの歴史に風穴を開ける一助になったと思います。

――スポーツマーケティングの視点から、サッカーと他競技の違いを感じる点は?

渡邉和史 今月開催されたクラブワールドカップの盛り上がりが象徴するように、世界規模で捉えると、サッカーは他の競技に比べ「プレミアムコンテンツ」だという点です。言い換えれば、性別や国籍を超えた多くの人々に向けた大掛かりな企画が映えるコンテンツだということです。そこをうまく活用すれば、様々なマーケティングの可能性が広がっていくでしょう。ただ、日本国内に限定すると、まだまだサッカー文化は根づいていません。欧米とはそもそもスポーツ文化が違うので仕方がない部分ではありますが……。我々スポーツマーケティングに携わる立場としても、スポーツ文化発展のためサポートする必要があるかもしれないと考えるようになりましたね。

――個人・団体・大会をスポンサードするにあたり、どのような基準で選定をしているのでしょうか。

渡邉和史 身の丈に合うブランディングができるかどうか。これはとても大きな基準になってくると思います。それを確かめるために「掛けられるコスト」と「プロモーションの可能性」をシミュレーションして選定しています。製品を売る上で強化したいターゲット層がサッカーに興味を示すのならば、その対象はリーグなのか、クラブなのか、特定の選手なのか。その先まで見極める必要があります。では、その権利をいくらで買うことができ、どれだけの利益を上げることができるのか。買った権利を最大限に活用するためにはどんなメディアが活用できるのか。これらの要素を踏まえて、スポンサードの対象を決めていきます。

――ビッグプレーヤーや、世界的な大会と関われるスポーツマーケティングという仕事。ご自身の仕事を通して感じる魅力とはなんですか?

渡邉和史 スポーツ業界トップレベルの人達と出会えることや、グローバルメーカーならではのビッグプロジェクトに関われることですね。現在メインで関わっているIOCとの共同プロジェクト「オリンピックムーブス」では、まさにこの魅力を実感することができています。このプロジェクトは2003年にオランダでスタートし、今では世界中のコカ・コーラ社で展開されています。日本では、運動習慣に格差のある中学生世代を対象に、ゆるく楽しくスポーツを体験してもらうことを目指して全国でイベントを開催しています。先日福島及び東京で行われたオリンピックムーブスには、東京2020組織委員会スポーツディレクターである室伏広治氏も参加してくれました。社会貢献を目的としたこのオリンピックムーブスを、今後メディアを巻き込みながら最大限に波及し、運動習慣を活性化していきたいと考えています。

――渡邉さんの考える、スポーツの現場にアプローチするために必要な要素を教えてください。

渡邉和史 僕はアメリカでマイノリティー扱いを受け、悔しい思いをした経験から「スポーツを通して日本を世界にアピールする」という信念を抱いてこの業界に入りました。具体的なライフコンセプトを持ってアプローチすることは、どのような業界においても必要だと思います。受け身ではなく、自分が業界に持っていける付加価値を明確に提示できれば、おのずと道は開かれていくのではないでしょうか。そして最後に、もっとも欠かしてはいけないのがパッションなのだと思います。

コカ・コーラ社担当者が語る「スポーツマーケティングを自身の仕事と決めた理由」/前編

日本コカ・コーラ株式会社
マーケティング本部 IMC マーケティングアセッツ
部長 渡邉和史(わたなべ かずふみ)

アメリカで生まれ育ち、大学は日本の上智大学を卒業後、博報堂に入社。トヨタ自動車の営業担当として、リベルタドーレス杯の運営や同社キャンペーンなどを担う。2000年にFIFA Marketing AGに転職。2002年FIFA World Cup?を経験。2004年には博報堂DYメディアパートナーズへの転職を経て、2011年に日本コカ・コーラに入社。アクエリアスブランドのスポーツマーケティングや2014年FIFA World Cup?のキャンペーンを手掛け、現在はコカ・コーラのスポーツ/エンターテインメントの交渉窓口、コミュニケーションプロデュースを遂行中。またIOCとの共同プロジェクト、オリンピックムーブスにもメインで関わる。

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