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ACミランサッカースクール東東京校テクニカルディレクターの元セリエA選手が語る奥深いイタリアサッカー(3)

2015.12.11

●連載第1回目
●連載第2回目

今年9月に国内5校目となるACミランサッカースクール東東京校が開校した。テクニカルディレクターとして東京に常駐し、すべてのトレーニングの指揮を執るのが、エンポリ、ウディネーゼ、ラツィオ、アタランタなどで活躍した元セリエA選手のマヌエル・ベッレーリだ。今回、セリエAで149試合の実績を誇るベッレーリが自身のキャリアを振り返りながら、イタリアのサッカーの数々の疑問に答えてくれた。

――エンポリからはウディネーゼに移籍し、ルチャーノ・スパッレッティに指導を受けたよね。スパッレッティは、名波浩がいたヴェネツィアでも監督をしていたけど、その頃はロングボールを多用するスタイルを使っていた。ウディネーゼではスタイルが激変して、ポゼッションスタイルを導入したよね。

ベッレーリ そう、それまではセンターバックがセンターフォワードにロングボールを放り込むスタイルを用いていたけど、自分が所属していた頃のウディネーゼでは、ポゼッションスタイルを用い、放り込むようなことはなかったね。スパッレッティは3-5-2、3-4-3を使い、チームには(ネストル)センシー二、(ダビド)ピサーロ、(サリー)ムンターリ、(マレク)ヤンフロスキ、(アントニオ)ディ・ナターレ、ダヴィド(ディ・ミケーレ)、(ヴィンチェンツォ)イアクインタといった代表クラスの選手がいた。おそらく、ヴェネツィア時代は選手の適正を見てスタイルを変えたのではなく、まだ監督としてのキャリアが浅く、それに多くの監督がロングボールを主流とするスタイルを用いていたから、彼もそういったやり方をしたのだろう。それから指導者講習を重ねて受けていき、学んで、ポゼッションスタイルを導入していったのかもしれない。ゼニトを指揮している時にも彼に会いに行き、トレーニングを2週間にわたって見たけど、ポゼッションスタイルのやり方は変わっていなかったね。それにウルクや(アクセル)ヴィツェルといったテクニックに優れた選手がいたから、上手く彼らを使っていたよ。

――そして、ウディネーゼからラツィオに移籍した。君にとって初めてのビッグクラブだよね。

ベッレーリ そうだね、でも、ウディネーゼもビッグクラブと言えたチームだったよ。一流の選手で構成されていたからね。僕がプレーしたシーズンは4位で終わり、チャンピオンズリーグ(予備予選)の出場権も獲得した。素晴らしいシーズンだったね。ラツィオに移籍して大都市のビッグクラブでプレーすることとなった。財政面で厳しい状況にはあったけれど、街とクラブの大きさにはとても驚かされたよ。

――ラツィオではデリオ・ロッシ監督の指導を受けたよね。フィオレンティーナ時代にはベンチで(現インテルのアデム)リャイッチを殴ったことがあったけど、この監督の性格はどうだったのかな?

ベッレーリ そういうことがあったね。ロッシは、(ローマなどを指揮し、厳しいトレーニングで知られるズデネク)ゼマンに近い監督だと思う。

――それじゃあ、トレーニングはとても厳しかったのかな?

ベッレーリ そう、とても厳しく、攻撃的なスタイルを用いる監督だね。ラツィオに移籍したのはロッシ監督が自分を強く必要としてくれたからなんだ。監督とは素晴らしい関係にあった。殴った行為があった時、メールを送ったのを覚えているよ。当時のフィオレンティーナは大きな問題を抱えていて、プレーのことでも批判を浴びていたし、ピッチ外の環境があのような行為に影響を及ぼしたんだと思う。殴った行為に関しては後悔していたよ。

――ローマ・ダービーの雰囲気はどうだった?

ベッレーリ 幸運なことに、(パオロ)ディ・カーニオとチームメイトとして戦えた。一人のラツィオ・サポーターでもある彼と一緒にダービーを戦うことができて、ダービーをとても強く感じることができたよ。彼は気持ちを引き締めて戦うようにチームに促していた。6万5000人の観衆の前でローマに勝つこともできた。それから彼はこのローマ・ダービーでローマ式敬礼をして物議を醸したんだ。これも彼の性格の一部分だと言える。関心を自分自身に引きつけ、プレッシャーとも上手く付き合っていた。得点も決め、そして勝利を収めたのだから、彼の夢が実現した瞬間だった。彼は若い時にもローマ・ダービーでゴールを決めていて、約15年ぶりに再びゴールを決めることができた。言葉にできないような喜びだったんだろう。

――それからアタランタに移籍し、ルイージ・デル・ネーリの指導を受けたよね。彼はラインディフェンスを採用していたけど、ほかの監督とはトレーニングの方法も違ったのかな。

ベッレーリ 完全に異なるものだったね。特に守備のトレーニングはほかの監督のやり方とは違っていたね。指導を受けた最初の頃は少し苦労したよ。守備の全員がともに連動し、同じタイミングで動かなければならず、すべてのトレーニングをともに確認しなければならなかった。それでもとても素晴らしい経験で、新しいスタイルを学ぶことができたからね。攻撃の構築、守備の動きはそれまでの監督とは完全にことなるものだったよ。

――サイドバックは4バックでも4-3-3や4-4-2、4-3-1-2で求められるものが異なるのかな。

ベッレーリ 守備のやり方に関しては、常に4人で守るのだからどれも違いはないね。4-4-2の方が、より守備面でも多くがカバーできる。異なるのは攻撃だ。4-3-3の場合、中盤の3人はとてもタイトな状態になっている。そのため、サイドバックが攻撃参加するためのスペースが前方に多くある。一方、4-4-2は、4-3-3よりも守備に重点を置き、前方の選手を後方から支えるという役割りが求められる。ただ、中盤の選手のプレースタイルによっても、サイドバックには要求されるものは違ってくる。

――現役最後のチームSPALを退団し、最後にはイタリア選手協会(AIC)主催のトライアウトに参加したよね。もっと現役を続けたかったのかな。

ベッレーリ そうだね。SPALでの3シーズンは上手くいかなかったけど(2012年夏に財政難により破産。レアルSPALとなりセリエDから再スタートを切った)、現役は続けたかった。それにこの機会に指導者ライセンスも取得することができた。自由契約となっている選手とこのトライアウトに参加し良い経験を積めたと思う。

――最後にミランの本田圭祐とインテルの長友佑都について聞かせてくれるかな。君は今ミランのスタッフの一人と働いているけど、本田は1月以降もミランに残ることができるかな。

ベッレーリ 僕は本田がミランに残ることができると思うしそう願っている。彼は素晴らしい選手でこれまで見事な活躍を見せ、ゴールも決めてきた。昨シーズンも良い活躍ができたからね。時に監督によって影響を受けることになることもある。僕がボローニャでプレーした時には(現ミランのシニシャ)ミハイロヴィッチに指導を受けたけど、最高の監督だった。本田がベンチにいる姿を見るのは残念だけど、今も違いを生み出せる選手。監督よりも本田のコンディションが手に取るようにわかる人はいない。恐らく再び本田の出番がやってくると思う。彼は最高の選手。もう一度輝きを放つことができると思うよ。

――それから長友のことだけど、この夏には毎日のように彼の移籍がささやかれたよね。元セリエAプレーヤーの君から見て、これは記者たちが噂をでっちあげたのか、それとも本当に移籍に近づいたのか、どちらだったのだろうか。

ベッレーリ 彼は来年6月に契約が切れることもあって、クラブと長友の間に契約を巡って軋れきがあったのだと思う。それから噂については僕の経験からいって、いきなり移籍の噂が出るということは難しいんだ。やはり何かしらそのような噂が本当にあって、移籍が成立しないこともあるかもしれないが、そういった話が実際にあって移籍のニュースが出るものなんだ。それに契約切れが近い選手の使い方が難しいということもある。いずれにしろ、長友は重要で違いを生み出せる選手だと思う。

――ポジションを奪い返すのは難しいと思われていたけれど、定位置を取り返した。特に守備面が改善されたよね。

ベッレーリ チェゼーナ時代から、敵陣深く切り込むスタイルはとても高く評価されていた。10本クロスを放つとそのうちの8本は効果的なクロスを放つことができる。こういう選手はイタリアでは見つけることができない。守備では苦労していたけど、攻撃では、アーリークロスではなくて、ゴールライン付近まで進み、相手を抜き去ってクロスすることができる。すべての人にとって長友のスピードとクロスの正確性は驚きだったよ。それに守備面もとても良くなった。ともかく、サン・シーロでプレーすることはとても難しいものなんだ。サポーターはたくさんの優れた選手を見てきたからね。

マヌエル・ベッレーリ
1977年8月29日、イタリア北部ロンバルディーア州ブレッシャ県ガルドーネ・ヴァル・トロンピア生まれ。エンポリに所属した2002-03シーズンにセリエAデビュー。以降は、ウディネーゼ、ラツィオ、アタランタ、ボローニャでプレーしセリエA通算149試合に出場した。11-12シーズンに所属したSPAL(レーガ・プロ・プリマ(3部リーグに相当))を最後に現役を引退し、2014年にACミランアカデミーに加入。2015年5月よりACミランサッカースクール東東京校テクニカルディレクターに就任している。欧州サッカー連盟(UEFA)公認B級ライセンス所持

ACミランサッカースクール東東京校公式サイト
http://acmilansoccerschool-easttokyo.com

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