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福島県いわき市で復興支援を行うフットサル日本代表、滝田学の思い「いわきの素晴らしさを世界に広めたい」

2015.10.03

プロアスリートによる東日本大震災の復興支援活動は様々行われてきた。現地の子どもたちとボールを蹴り、笑顔を共有することは、フットボール選手ができることの一つだ。ペスカドーラ町田に所属し、フットサル日本代表である滝田学もまた、福島県を中心にそうした活動を続けてきた。ただその体験を経て、募る思いもある。「いわきの素晴らしさを広めたい」。ただ単純に社会貢献活動をしているのではなく、人と出会い、縁を大切にしながら、「自分に今できること」に真剣に取り組んでいる。

Text by Yoshinobu HONDA
Photo by Manabu TAKITA

「福島県、いわきのことが本当に大好きになった。最初は復興支援ということもあったが、今は純粋に」

 そう話す滝田学は、2014年9月に福島県いわき市にあるときわ会グループの学童保育施設「ときわ塾」という団体と出会い、子どもたちへのフットサル教室を始めた。

 Fリーグのペスカドーラ町田でプレーを続ける滝田は日本代表で主将を務めるフットサル界に欠かせない人物の一人。元ペスカドーラ町田の選手であり、現在は東北で働いている原章展とともに、震災以降に復興支援やフットサル選手として何かできることはないかと、自分たちができることを模索してきた。

 そんな中で、原が滝田と「ときわ会」をつないだ。「いわきの子どもたちは外でサッカーをするにも親御さんたちは原発の影響がないかと心配している。放射能問題に初めて直面する親が、子どもの心配をするのは当然のこと。それだったら室内で行うフットサルなら少しはその心配を和らげることができるのではないか」とときわ会の知り合いを滝田と引き合わせ、滝田と原の共通項である「フットサル」を通じた活動がスタートした。

 これまで滝田と原は、福島県や宮城県の被災地を何度か視察し、福島県の子どもたちとはフットサルを通じたコミュニケーションを深め、先日もFリーグの中断期間を利用して「ときわ塾」の子どもたちにフットサル教室を開いた。「子どもたちは素直で、こちらが伝えたいことを吸収しようという気持ちが強い。すごくやり甲斐を感じるし、フットサルが上手くなってほしいということだけではなく、フットサルを通じて他人を思いやる気持ちや尊重することの大切さを感じてほしいと思っている」

 現地に行くことで毎回のように見聞きすることがある。「福島県の方々は、震災時に支援や応援してもらったことへの感謝の気持ちを今もなお強く抱いている」。そして、「彼らは『恩返しをしたい』と、常に考えている」と。ただ滝田自身、関東に住む者として、“いわきに住む人たち”を確認できることが一番の喜びであり、そういう気持ちを持って暮らしているいわきの人々のことを、素直にうれしいと感じている。

「この土地を愛し、震災前よりもより良い街にしようという思いを持つ人々で溢れている。そんな方々に心を打たれた」。東京都出身の滝田にとって、福島県やいわきは見ず知らずの土地だった。でも、震災という苦しい体験をしてもなお、強くたくましく生きている人々に出会ったことで、滝田にとっていわきは知らない土地ではなくなった。「こうしてつながりを持てたいわきのためにいろんな発信をしていきたいし、どんどん良くなっていく過程の段階から協力できることは、全力でサポートしていきたい」

 原もまた、同じような気持ちを抱いている。「ときわ塾の人たちは子どもたちに、『“震災があったから辛い思いをしている”という感情だけではなく、“震災があったから会えた人、できた経験があった”と思ってもらいたい』という願いを持って様々な活動をしている。自分もできることを、できる限り手伝っていきたい」

 スポーツ選手であるということに関係なく、被災地の復興支援はこの先も続けていく必要がある活動であり、滝田や原も継続的なサポートを考えている。ただし、滝田の思いはもはや「復興支援」ということにはとどまらなくなっている。

「もちろん、復興支援のために協力できることはなんでもしたい。でも単純に、いわきの人たちと交流を持てたことで、ここに住む人、街の素晴らしさを日本全国、世界へと広めたい。もちろん、いわきの人々が望むのであれば、ですけど(笑)」。滝田はこれからも、自分に大きな影響を与えてくれた縁を大切にしていきたいと考えている。

 Fリーガーとして、フットサル日本代表選手として、そして一人の、滝田学として。

ときわ会職員のための学童保育施設「ときわ塾」
http://www.tokiwa.or.jp/tokiwa_school/

滝田学(たきた・まなぶ)
1986年7月26日生まれ、東京都出身。ペスカドーラ町田所属。幼稚園の頃にサッカーを始め、小学校4年生の時にフットサルと出会い、中学校からはGALO FC TOKYOで本格的にフットサルを始めた。その後、府中アスレティックFCでプレーし、2007年のFリーグ発足時にペスカドーラ町田に移籍。2010年に日本代表に選出され、2014年のAFCフットサル選手権では主将を務め、優勝に大きく貢献した。1対1やカバーリングなどに強く、フィクソとして守備の要でありながらもポジションに捉われない幅のあるプレーが持ち味。近年は攻撃参加への意識も高く、昨季は10得点、今季は第20節を終えて8得点を挙げており(全33節)、さらなる進化を遂げている。
オフィシャルブログ:http://ameblo.jp/takita-manabu8/

「フットサルで世界をつなぐ」をテーマにする「FUT THE WORLD(FTW)」でも活動する滝田学が、フットサル、フード、ライブ、マーケット、ワークショップをテーマに、10月10日にライジングフィールド軽井沢で開催されるイベント「FTW CAMP」に参加。詳しくはこちらへ。
http://futtheworld.tokyo/ftw-camp

By サッカーキング編集部

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