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【CL決勝直前インタビュー】シュヴァインシュタイガー「決勝では必ず決めてみせる」

2012.05.19

Champions 日本版 6月号 掲載
バイエルンを決勝へ導いた男、バスティアン・シュヴァインシュタイガー。ホームであるフースバル・アレーナ・ミュンヘンで迎える最高の舞台を前に、これまでに経験した栄光と挫折、そして決勝への意気込みを語ってくれた。
シュヴァインシュタイガー

Words Andrew MURRAY, Philip ROBER Photo Itaru CHIBA

 金色に輝く髪は今も変わらない。無邪気な微笑みをいつも絶やさない。5月19日の夜、バスティアン・シュヴァインシュタイガーは最高の舞台に挑む。少年時代からバイエルンの魂を植え付けられてきた生え抜きには、勝者のメンタリティーが自然と身についたのだろう。

 敵地サンティアゴ・ベルナベウに乗り込んだ、レアル・マドリーとの準決勝セカンドレグでも、彼は不屈の精神力でチームを牽引。そして、PKでは最後のキッカーとしての役割をきっちりと果たし、バイエルンの本拠地であるフースバル・アレーナ・ミュンヘンに最高のプレゼントをもたらしたのだ。

 その試合後、彼はドイツメディアに対してこんなコメントを残している。「PKを蹴る前、実は少し勇気を失いかけたんだ。でもやるしかないと思った。ボールに触ったら、コースが見えた気がした」 慎重に放ったシュートは見事にレアル・マドリーの守護神を欺いた。鍛え上げられた肉体を見せ付けるかのように、ユニフォームを脱ぎ、そして喜びを爆発させた。 生まれ育ったコルベルモールは、かつて西ドイツ代表としても活躍したパウル・ブライトナーの出身地でもある。1998年、14歳でこの地を離れた少年はバイエルンの下部組織に入団した。それ以降、バイエルンの魂を受け継ぐ数少ない生え抜き選手として走り続けている。

 元々、シュヴァインシュタイガーは典型的なウィンガーだったが、09年に現在のようなプレーメーカーにコンバートされた。きっかけは、アルイェン・ロッベンの加入だった。最初は戸惑いもあっただろうが、今ではバイエルンのレジェンドであるフランツ・ベッケンバウアーが「ドイツのベストプレーヤー」と太鼓判を押すほどの活躍ぶりだ。 称賛を贈るのはレジェンドだけではない。ユップ・ハインケス監督もその一人だ。ハインケスは「バスティアンはイニエスタ、チャビ、ブスケと同じレベル」と語るなど賛辞の声を惜しまない。確かに昨年末、シュヴァインシュタイガーが鎖骨骨折による離脱を余儀なくされた時期に、時を合わせるかのごとくチームも調子を落としていたのだから、それもうなずける。

 今回は、そのシュバインシュタイガーに自身のキャリアやプレー、そしてチームのこと、更にはチャンピオンズリーグ決勝に向けた意気込みを語り尽くしてもらった。そこには、自信に満ち溢れたの男の姿があった――。

決勝の舞台がアリアンツに決まった時から
僕たちは常に決勝進出を意識して戦ってきた

君は2月22日に行われた決勝トーナメント1回戦、バーゼルとのファーストレグに出場しなかった。試合はチェックしていたのかな?

シュヴァインシュタイガー もちろん自宅でチェックしていたよ。前半15分までに先制できる場面があったけど、そこで決め切れなかった。その影響もあって負けてしまったと思っている。0-0で終えられる試合だったけど、自分たちのミスを突かれてしまったんだ。それでもセカンドレグではきっちり勝てると信じていたけどね

バーゼルの強さは予想外だったということかな?

シュヴァインシュタイガー いや、そんなことはないよ。バーゼルはマンチェスター・ユナイテッド相手にホームで勝ち、アウェイでも引き分けていたんだからね。試合前からきっと実力があるんだろうと思っていた。彼らのゾーンディフェンスは強力だったし、フライとシュトレラーの2トップも手強かった

セカンドレグにはどういう気持ちで臨んだんだい?

シュヴァインシュタイガー 試合開始直後からしっかりと試合に集中して、相手へのプレスを怠らないことを心掛けた。そうしたら早い時間帯に先制点が奪えて、サポーターの声援がその勢いを後押ししてくれたんだ。相手がカウンターを狙っていたのは分かっていたから、スペースを与えないように全員で意識した。7-0で勝つことができたし、すべてが思い通りに進められたと思う

チームにとって、チャンピオンズリーグ優勝という栄冠はどんな影響をもたらすと思う?

シュヴァインシュタイガー ものすごく大きな意味を持つよ。2年前の決勝では自分たちのミスで優勝を逃してしまったからね。あの時は本当に情けなかった。あれからもうずいぶん時間が流れたけど、今でもあの悔しさは忘れてはいない。でも今回、準決勝でレアル・マドリーに勝利できたことで、僕たちが世界のどのチームでも倒せるということが証明できたんじゃないかな

2010 年の決勝のことで今でも印象に残っていることはある?

シュヴァインシュタイガー ピッチに入場した時、あのトロフィーがキラキラと輝いて見えた。でも負けてしまえば、敗者にとってはもう2度と見たくないものなんだ。決して触れてはならないものだから。それから、あの夜、マドリードで感じたのは、経験が何より大事だということ。チャンピオンズリーグというのは、より良いサッカーをしたチームが勝つのではなく、戦術的に優れた経験豊富なチームが勝つ大会なんだ。僕たちもあれからいろんな経験を積んだ。だから今回こそリベンジしたいと思っているんだ

結果は残念だったけど、あの舞台に立てたこと自体はプロとしての成功と言ってもいいんじゃないかな?

シュヴァインシュタイガー 確かに昔から憧れていた舞台だった。でも、今だってハングリー精神は全く衰えてないし、むしろあの悔しさをバネにここまでやってきたんだ。準決勝もそうだったけど、グループリーグの試合から、試合前にチャンピオンズリーグ・アンセムを聴いてモチベーションを高めてきた。僕にとって、あのアンセムは必要不可欠なものだよ

世界が注目する大舞台をホームスタジアムで迎えられることになった。やはり他のスタジアムとは気分的に違うのでは?

シュヴァインシュタイガー 全然違うよ! 決勝の舞台がアリアンツ・アレーナに決まった時から、僕たちは常に決勝進出を意識して戦ってきた。チャンピオンズリーグの雰囲気とあのスタジアムは本当にぴたりと合うはずだ。外壁のライトアップも、ピッチへのトンネルも、ヨーロッパ中のスタジアムを探しても他にはない。夢のようなスタジアムだよ

君は98 年にバイエルンのユースに入団したけど、99 年のマンチェスター・ユナイテッドとのチャンピオンズリーグ決勝は覚えているかい?

シュヴァインシュタイガー あの試合はユースチームの仲間と一緒に選手寮で見ていた。苦い思い出だよ。まさかロスタイムに2点も奪われるなんて思わなかった。すごくがっかりしたのを今でも覚えているよ

次は監督について教えてほしい。ルイ・ファン・ハールとユップ・ハインケスの違いはどこにあると思う?

シュヴァインシュタイガー 比べるのは難しいな。どちらかと言うとハインケスはファン・ハールよりも冷静なタイプかもしれない。でも2人とも真のプロフェッショナルだってことは共通してるよ。一番早く練習場に来て、一番最後に帰っていく。努力を惜しまない監督なんだよ

初めて見たチャンピオンズリーグ決勝はどの大会だった?

シュヴァインシュタイガー 覚えているのは97年かな。ミュンヘンのオリンピア・シュタディオンで行われたドルトムントvsユヴェントス。リッケンが途中出場してわずか18秒でゴールした、あの試合だね。それから、当時ユーヴェでプレーしていたジダンのプレーに釘付けになっていたのを覚えているよ

チャンピオンズリーグでのジダンと言えば、忘れられないプレーがあるよね?

シュヴァインシュタイガー もちろん。レヴァークーゼンとレアル・マドリーが戦った02年の決勝戦! ジダンが見せた左足ボレーから生まれた決勝ゴールは最高だったよ。どうして利き足じゃないのにあんなボールを蹴ることができるんだ、って感じたよ。あの試合でレヴァークーゼンのゴールマウスに立っていたヨルク・ブットに、あのシーンについて質問したことがあるんだけど、彼も『全く反応できなかった』って言っていたよ

印象に残っているチームはある?

シュヴァインシュタイガー 05年にイスタンブールで行われた決勝戦でのリヴァプールかな。前半だけでミランに0-3のリードを許していたから、世界中がミランの優勝を確信していたと思う。でも、彼らは決して諦めなかった。残り試合時間が15分になっても、同点に追い付けると信じていたんだろうね。その強い気持ちが優勝を呼び込んだ。諦めなければ道は開けるということを改めて教えてくれた一戦だった。2年前の準々決勝で、僕たちはマンチェスター・ユナイテッド相手に3点のリードを許していた。勝ち上がるためには2点が必要だったんだけど、その時、当時のリヴァプールの戦う姿を思い出したんだ。90分走り続けて、レフェリーが笛を吹くまで決して諦めなかった

もし可能なら、どの試合でプレーしてみたかった?

シュヴァインシュタイガー 99年のユナイテッド戦か、2年前のバルサ戦のメンバーになってみたい。最後の数分間だけ出場して、バイエルンのゴール前からできるだけ遠くへボールを蹴り出すのさ!(笑)

ドイツ人の君にとって、国を代表するビッグクラブの一員としてプレーできることはどういう気分かな?

シュヴァインシュタイガー 本当に大きな意味を持っていると思うよ。今回のチャンピオンズリーグでもそうだけど、ドイツを代表して出場しているクラブで唯一残っているのがバイエルンだからね。歴史あるクラブの一員でいられることは誇りだし、これからも僕たちが素晴らしい未来を作っていきたいと思っている。ホームスタジアムにチャンピオンズリーグのトロフィーを飾って、今シーズンの主役になりたいんだ。今シーズンの開幕当初からずっとその日を夢見てきたし、運命の時はもう目の前なんだ。でも、僕の頭の中を支配しているのはレアル・マドリー戦のセカンドレグで決め切れなかったヘディングシュートのこと。決勝では必ず決めてみせるよ(笑)

champions
14 バスティアン・シュヴァインシュタイガー
もし可能なら99年の決勝のメンバーになって
ボールをできるだけ遠くに蹴り出すのさ!

18 アルイェン・ロッベン
サイドの王様

24 チャンピオンズリーグで勝つための13の方法
26 フスバル・アレーナ・ミュンヘン

28 フアン・マタ
ザ・スペシャル・フアン

34 フェルナンド・トーレス
5000万ポンドのゴール

リオネル・メッシ
36 メッシに何が起こったか
44 メッシのスキルを科学的に分析する

46 technicalarea
戦術が進化する中で生まれた
センターバックの新たなスタイル

54 クリスチアーノ・ロナウド
見据えた視線のその先に

66 ロビン・ファン・ペルシー
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