昨年のドイツ・ワールドカップで初優勝を果たし、今夏に行われるロンドン・オリンピックでも金メダルの筆頭に挙げられているなでしこジャパン。そんな彼女たちの取材を続け、澤穂希選手や川澄奈穂美選手など、なでしこジャパンの選手を多く抱えるなでしこリーグの最強軍団INAC神戸の番組「INAC TV」(毎月第3・4・5金曜、BSフジ23時~)のオフィシャルキャスターも務める松原渓が、なでしこリーグやなでしこジャパンの動向やこぼれ話などを紹介していきます。
[松原渓のなでしこ体験記より転載]
ロンドン・オリンピックに向けて、着実にチームの底上げを行なっているなでしこジャパン。今回からは、ロンドン・オリンピックでの活躍が期待されるなでしこを紹介していきたいと思います。
[写真]=千葉格
第1回目は、今年1月にFIFAバロンドールを受賞し、世界ナンバーワンの女子選手となった澤穂希選手です。1993年に15歳で代表へと初招集されて以来、なでしこジャパンで背番号「10」を18年以上背負い続けているレジェンドは、4度のオリンピックと5度のワールドカップに出場し、男子選手歴代1位となる井原正巳氏の国際Aマッチ122試合出場を大幅に上回る177試合に出場。2011年に行われたドイツ・ワールドカップのグループリーグ第2戦のメキシコ戦で、男子歴代1位の釜本邦茂氏が持つ日本代表歴代最多得点記録の75得点を上回り、現在は80得点をマークしています。
現在は安藤梢選手や永里優季など、多くの選手が海外へと活躍の場を移していますが、澤選手も1999年にアメリカのコロラド・デンバー・ダイアモンズに移籍。その後はリーグの経営難に伴い休止となり、一度は日本に戻ってきたものの、2009年に再びアメリカに渡り、ワシントン・フリーダムに移籍するなど、海外移籍の先駆者でもあります。
澤選手の特長は、卓越した戦術眼と豊富な運動量でピッチのあちこちに顔を出し、パス、ドリブル、 シュートなど全ての仕事をハイレベルでこなせるところ。代表でダブルボランチの一角、INACでワンボランチといったチームの心臓と呼ばれるポジションを任されるのは、それだけ高い能力を、すべての面で持ち合わせているからなんです。
前所属の日テレ・ベレーザ時代から澤選手の能力をよく知る星川敬監督(INAC神戸)は、「世界でワンボランチができるのは澤だけです」と語り、技術もさることながら、その精神面での貢献度を高く評価しています。
「彼女のすごさは、世界一の選手になったのに、『技術がないからもっと頑張らなきゃいけない』と言っていること。みんなのボール回しを見て『うまーい!!』と言うんですよ。謙虚に言っているとかじゃなくて、本当に思っているんですから。最終的にどこを『目指す』とか、具体的な目標があるわけではなくて、『ずっと自分は一番下手だから』という感覚で成長してきたんだと思います。もっと練習しなくちゃ、と思っているうちに、世界のトップになって、トップになっても、同じことをもっともっと続けられる。メッシもその性格は似てるんじゃないかなって思います。100パーセント毎日の練習で手を抜かない、これがすごい。今でも若手と同じメニューをこなしますから。澤がいないというだけで100パーセントにはなりません」
なでしこジャパン、INACともにチームの心臓部を担う澤 [写真左]=鈴木敏郎 [写真右]=足立雅史
そんな澤選手ですが、今年はアクシデントに見舞われています。2月のアルガルべカップ中に体調不良を訴え、「良性発作性頭位めまい症」と診断されると、ここから2カ月間の戦線を離脱を余儀なくされます。それでもしっかりとリハビリをこなし、なでしこリーグ第2節(4月22日)の福岡アンクラス戦で復帰を果たすと、5月5日の千葉戦ではフル出場。コンディションも徐々に上向きとなっており、本来のプレーを取り戻しつつあるようです。
体調不良から復帰した澤選手は、ピッチを離れていた期間で、「初心にかえることができた」と話していました。
「色んな遠征があった中、自分が思うようなサッカーができない中でみんなが羨ましいな、っていうのはありましたけど、また改めてサッカーをやれる喜びや、初心に帰る気持ちもできました。苦しい2カ月でしたけど、今思うといろんなことを考えさせられる、自分が成長できた2カ月でした」
「休んだ2カ月間分、みんなに支えてもらった分、今度は自分がしっかりグラウンドでチームの勝利に貢献できるように全力で頑張りたいと思います!」
チームメイト、監督、そして日本中のサポーターが期待するなでしこジャパンの絶対的エース。チーム力がどれだけ底上げされようとも、彼女の存在感が薄れることはないでしょう。ロンドンの地で躍動し、金メダルを掲げる姿に期待したいですね。
【関連記事・リンク】
澤が復帰後初アシスト&フル出場…INACが千葉下し開幕4連勝
米メディア、ロンドン五輪注目選手になでしこ澤、宮間、川澄を選出
なでしこジャパンはスウェーデン、カナダ、南アと同組/ロンドン五輪
なでしこ澤、金メダルへ「夢は見るものではなく叶えるもの」
2011年、女子ワールドカップ ドイツ大会優勝、ロンドン五輪アジア最終予選を突破し、五輪出場権を獲得したなでしこジャパンに7人もの選手を送り出していた「INAC神戸レオネッサ」にスポットを当てる、日本の女子サッカーチームでは初のオフィシャル番組。
【松原渓】(まつばら けい)1983年8月25日生まれ。タレント。スポーツライター。女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」に所属。「INAC TV」(BSフジ)オフィシャルキャスターを務める。2008年よりスポーツライターとしての活動を始め、『サッカーゲームキング』などで連載を持つ。父親の影響で幼少時からアウトドア体験は豊富で、普段はハーレー(FXDL)などを乗りこなす。公式ブログはこちらから!