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首位・仙台の屋台骨を支える3人が語る「新たなスタイル」と「連動性」

2012.04.29

Jリーグサッカーキング 2012.6月号掲載]

J1リーグ戦8試合(4月28日現在)を終え、7勝1分けと抜群の安定感で首位に立つベガルタ仙台。躍進を続けるチームを支える屋台骨とも言える“センターライン”を担う林卓人、角田誠、鎌田次郎の3人が、好調の要因や強さの秘密を明かした。

インタビュー・文=板垣晴朗 Interview and text by Seiro ITAGAKI
写真=山口剛生 Photo by Takeo YAMAGUCHI

 
「どんどん攻撃に移行していける」という自信があるから、
チーム全体がうまくいっている

 
まずは今シーズンの話から伺いたいと思います。リーグ戦は6試合が終わった段階(4月14日の第6節終了後に取材)ですが、ここまでの守備面での手応えについてお聞かせください。
 
鎌田 昨年と違って、新しいことに取り組んでいる中で、今のところスムーズに新たなスタイルに移行することができているな、というイメージがあります。
 そうだな。ホントに個人個人が高い意識を持ってチーム戦術をこなしてくれているので、僕としてはうまく前の選手に合わせて、ケアできているかなという気がしますね。
角田 仙台には能力の高い選手がそろっていますし、そこに(上本)大海さんが加わって、今シーズンはボールを持つこともできている。(新しいやり方を)スムーズにできているんじゃないかな、という印象ですね。
 
昨年のベースがあったからこそ、今年は新しい戦術に取り組んでいるところがあると思うのですが、昨年J1で最少失点を達成して、3人ともJリーグの優秀選手にノミネートされました。自信を得て今年につなげられていると感じる部分がありましたら教えてください。
 
鎌田 昨年はやっぱり守備の時間が多く、守ることに専念していた部分があるので、それが今年に生きているかどうかは正直なところ分かりませんが、最少失点という記録は自分の自信になりました。昨年はチーム全体の信頼感というか、お互いのやり方をよく分かり合えたシーズンだったと思います。
 昇格1年目(2010年)はホントにギリギリでJ1に残留したので、その時が一番守備をしていた印象があります。その次の年からカク(角田)が加入してボランチでどっしり構えていてくれたから、安定感が増した。そして今年は大海が入ってポゼッション自体を高められたし、より高い位置でポゼッションできるようになった。それに高い位置からプレスを仕掛けることも機能していると感じます。今シーズンは悪い時間帯や相手に押し込まれる時間があっても、昨年までのベースがあるからしっかり跳ね返すことができているし、そこからどんどん攻撃に移行していけるという自信があるから、チーム全体がうまくいっているのかなと思いますね。
角田 昨年はしっかりと守備のブロックを作ればやられる気はしませんでした。今年に関して言えば、ブロックを作る時と前から(プレッシャーを掛けに)行く時の使い分けがしっかりできているように感じますね。守備に関しては、仙台にはもともとのベースがあったと思いますし、それがあるから新しく加入する選手も割とスムーズにフィットすることができたとも言えると思います。仙台のもともとの力というか、僕が入った時から守備に関しては組織がしっかりしていましたね。
 
開幕前のキャンプ期間で新しいやり方を取り入れる上で戸惑った点や、「ここには時間がかかったな」といったところはありましたか?
 
鎌田 あまりなかったと思います。先ほど言ったように、スムーズに昨年からの移行ができたという感触をキャンプでもつかめていましたし、前からプレスを仕掛けていくリズムを知っている大海さんが入って、大海さんが持っている感覚をみんなに話して伝えてくれたので、変な違和感を感じることはなかったです。
 こういう守備のやり方を使い分けるような戦術は、今までに在籍したチームの監督もチャレンジしようとはしていましたが、うまく機能しなかったことのほうが多かったんです。今年、仙台がうまくいっているのは、やっぱり次郎、カク、大海というお互いによくしゃべれる選手が真ん中にいて、うまくゲームをコントロールしてくれたり、前から行くタイミングを始めコーチングの部分で中心になって全体を引き締めてくれているからだと思います。それにウチは個々の守備能力も高いと思っているし、前の選手もハードワークをしてくれるので、そういうところがうまく噛み合って機能しているのかなと思いますね。
角田 前から仕掛けていく守備と引いてブロックを作って守るのとでは、やり方が違うから、チームとして多少変えないといけない部分があると思っていましたが、いざやってみたらウチは走れる選手と真面目な選手が多いから、それでほぼ補うことができたということでしょうね。どういったスタイルにせよ、やっぱり走れなきゃサッカーは成り立たないと思うんですけど、(仙台は)走ることに関してはレベルが高いし、みんなしっかり守備もする。ホントに良い選手がそろっているから、スムーズにできているんだと思います。
 
「お互いによくしゃべる」というお話がありましたが、どういったことを要求し合っているのですか?
 
角田 僕はどちちらかというと前の選手に対して声を掛けるから、次郎とか後ろからの声を求めるくらいですね。チーム全体のバランスとかは、2人のほうがよく見えているんじゃないかな。林 僕の場合は、例えばボランチに関してはバランスを見るようにしていて、押し込んでいる時も、どちらか一枚がバランスを取るようにということを伝えたりはします。次郎には、大海との位置関係について確認したり、ラインを上げるタイミングなどで声を掛けるくらいです。あとはポイント、ポイントを押さえる感じですね。いつもボランチとセンターバックの4人が中心になって声を掛け合いながらバランスを取っているなというのは感じますから。僕は、もしそこで問題があった時にチラッと声を掛けるだけで「ああしろ、こうしろ」というようなことは言わない。前がどんな感覚でやっているのか聞いて、できるだけ僕がそれに合わせてあげたいなという感じでやっています。
鎌田 僕はカクさんだったり、(富田)シンゴだったり、近いポジションの選手には結構声を掛けていますね。よく相手のトップ下の選手が、カクさんの後ろのスペースに入り込んできたりするので、そのコースを伝えたり、最近で言ったらカクさんのヘディングの調子がいいので全部競ってもらおうと相手のロングボールやゴールキックの時に「カクーー!」って叫んだり(笑)。卓人さんに声を掛けることはあんまりないですね。どちかというと僕が掛けられるほうですから。まあクロスの対応といったところで2人が重なったりした時に確認の意味で話すことはありますけど、「ああしてほしい、こうしてほしい」というような要求はほとんどないですね。
 
ちなみに3人の中で、一番コーチングの声を出しているのは誰ですか?
 
角田 コーチングは次郎ちゃうかなぁ。卓人さんはしゃべっているようで、あんまり聞こえない(苦笑)。
鎌田 聞こえないっすね(笑)。
角田 距離が遠いから? でも、後ろを見ると、いつも手を上げて「アーアー」言ってる(笑)。
 俺はコーチングっていうより「何でやねん!」みたいなこともよく言ってるから(笑)。まあでも、カクも熱くなりやすいかな。あと大海も。でも、それは絶対に必要だと思うし、そういう熱さを持ってやってくれているから、チームも締まる。まあ、コーチングもそうだけど、カクとか大海みたいに熱くなることも大事かなと思いますね。
 
毎試合毎試合、チームとして成熟していきながら、
成長しながら、戦っていきたい

 
それでは今シーズン、バージョンアップした守備を見ていただく上で、サポーターの方々に『ここを見てほしい』というアピールポイントはありますか?
 
角田 連動性ですね。一人だけで守備に行くようなシーンはほとんどないし、俺もそうやし、みんな誰かが頑張った後をしっかり狙っていく。それじゃないですかね。90分間を通じてサボっている選手は皆無だと思いますよ。その辺りを見てもらいたいですね。
鎌田 昨年は低い位置に陣取ってロングカウンターが多かったんですけど、今年は高い位置で奪ってショートカウンターという狙いもあるし、そういう「ここが狙いだ」っていうところからの得点とか、ボールを取る守備だったり、僕らが狙っていることを見てほしいですね。
 言われちゃいましたね( 笑)。でも、やっぱりホントに連動性だと思いますね。あとはスイッチが入った瞬間、ファーストディフェンスのスイッチが入った時の全体の動き方っていうところは注目してほしいですね。ラインの押し上げっていうところまで含めて、ボールはまだ逆サイドの遠い位置にあるんだけど、僕たちがやってる背後のケアっていうところまで見てもらえたらうれしいですね。今シーズンの仙台は、それぐらい連動してやっているんで。ファーストディフェンスのスイッチが入った瞬間の守備に行くスピードだったり、みんなの動き方にも注目してください。
 
それでは最後に、今後に向けての意気込みをお願いします。
 
鎌田 昨年タイトルを取ったチームだったり、強豪と呼ばれるチームを相手に、どれだけ自分たちのサッカーができるか、というところをサポーターの皆さんには見てもらいたいですね。そして、そういうチームを相手にしっかり結果も出して、AFCチャンピオンズリーグ出場権だったり、タイトルというものを狙えるような位置に上がっていきたいです。ホントに真っ向勝負の戦いが続いていくと思うんで、しっかり戦っていきたいと思います。角田 個人的には強力な個がいるチームとの対戦が好きなんですよね。チームにとってもすごくいい経験やと思うし、今の仙台がどこまでできるかって意味でも楽しみやから。負けてへんといっても、まだ6試合だけ。これから先、ホントに調子のいいチームや、力のあるチームとの対戦で自分たちの力も分かると思う。
 
そういう意味でも、これからのシーズンが非常に楽しみですね。林選手、締めの言葉をお願いします。
 
 鹿島アントラーズ、横浜F・マリノスといった「ビッグクラブ」と言われるチームに勝ってきましたが、まだまだ波に乗り切れてないところもあるし、この序盤戦だけでは正直なところ自分たちの力を計れないとも思っています。その点では、これからACLに出てるような強いチームを相手に、自分たちのサッカーでどれだけ立ち向かっていけるのか、僕たち自身も楽しみにしています。シーズンをとおして毎試合毎試合、チームとして成熟していきながら、そして成長しながら、戦っていきたいと思います。一試合一試合を無駄にせず、より良いサッカーを求めながらも、勝利を目指してやっていきたいと思いますので、熱い応援をよろしくお願いします!

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 Jリーグサッカーキング 6月号
▼[巻頭インタビュー座談会]赤嶺真吾×上本大海×松下年宏
▼[センターライン座談会]角田 誠×林 卓人×鎌田次郎
▼[クラブ誕生からの軌跡]街と地域と歩んだベガルタの18年 
▼[震災からの一年]真のチャンピオンへ
▼[2012年版ベガルタサッカー検証]戦術の使い分けと幅
▼[戸塚啓の取材ノートの記憶]関口訓充(仙台)
▼[インタビュー連載]山口 螢(C大阪)
定価:570円(税込)   >>誌面の詳しい内容はこちら

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