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バルセロナの強さを紐解くキーワード「相手守備陣の足を止める縦パスの繰り返し」

2012.03.02

提供:小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話
バルセロナ
インタビュー:小澤一郎 写真:ムツ カワモリ

乾眞寛監督 横パスとバックパスに関しては、ブスケッツなんて「本当に見てるのか?」というくらいあっけらかんとワンタッチで下げています。彼らにとって、横パスと後ろへ下げるパスは、ハンドボールやバスケットボールのようなパス交換と同じレベルだということです。
 
 止める、蹴るという次元が高いので横と後ろはいつでも出せ、まず失うことがない。彼らのプレー成功率は95パーセントくらいのレベルで推移し、ちょっと出来が悪い時に80数パーセント。ほとんどのプレーヤーが相手とのポゼッション率で7割、しかもプレー成功率が95パーセントを叩き出す。
 
 シャビやイニエスタに至っては1試合で120~130回ボールを触りながら、プレー成功率が95パーセントというのが定番です。横パスやバックパスに関して言うと、ミスが無い。だから「ハンドボールのようなサッカー」といわれる域に達しているわけです。手でやるハンドボールに横パスやバックパスにミスがあってはいけないし、ミスが無いことが前提で成り立っています。
 
 ハンドボールに例えて言うと、横と後ろにいくらつないでいてもゴールは奪えません。当然相手の守備はどうなるかというと、中央を固めてなおかつ人垣を作っていく。その密集地帯をいかに抜けていくか。いわゆる「オープン攻撃」、中を固める相手に対して外から攻めることが常識だとすると、彼らはそのセオリーの逆をいっている。
 
 あえて縦パスを使って、より密集地帯のさらに深い位置に縦パスを入れる。そのことによって相手はただでさえ密集している立ち位置を、より密集せざるを得なくなる。その状況の中でラテラルのアウベスとアビダルだったり、ワイドなポジションを取るフォワードを最大限活用した、幅を生かした崩しが出てくる。
 
 日本の感覚だと「幅をうまく使う」というのは中盤でのサイドチェンジとか、要するに中盤を使うと考えているけど、今の進化したバルサを見ていると、立ち位置もほとんど(1-)3-3-4みたいになっている。
 
 その中でラテラルは思い切り、幅のポジションを取っている。なおかつセンターが1トップだったものが2枚、その後ろの中盤も2枚入ってきているので計4人が中央にいて、サイドに2人が張っていて、6人が間違いなく攻撃陣の中に入っている。だから、ハンドボールのディフェンスラインに近いような相手の立ち位置、それから攻撃の立ち位置になってきています。
 
 それぐらいポゼッションの精度が上がると相手は押し込まれてしまうし、縦パスというところの考え方も変わってきている。バルサの進化の精度自体が上がってきている。セスクが一番奥で受けたり手前で受けたり、メッシもセスクが一番奥をとれば手前の位置をとるし、メッシが一番奥をとれば手前をセスクがとる。
 
 シャビとブスケッツの位置関係は決まっているんだけれども、シャビとトップの間にもうひとつ縦パスの受けどころができている。相手からするとプレッシャーをかけに守備で前へ出ても、縦パスを入れられてしまうので下がらざるを得ない。縦パスを入れて、またバックパスで後ろに一度下げてくる。この縦パスのやり取りを複数回繰り返されると、守備側は乳酸が溜まってきて足が止まってくる。連続的なプレッシングをいくらかけようと思っても、持たなくなる。
 
 ここ数回のクラシコでモウリーニョが挑戦している戦術は、彼ら(バルセロナ)の3人の中盤を思い切りプレスすることです。そして最終ラインを浅く、狭くしてプレスする。(この戦術は)時間にしてみると15~20分は有効な手段として機能するけど、そうなると今度は(バルセロナが)裏を狙います。
 
 それによって相手のラインを下げる。下げて広がらせた状態でもう一回バーティカルなビルドアップをしていくと、相手の足が止まってくる。例えリードして45分折り返せても、残り45分で完全に逆転されてしまう。この間のベティスの試合(※4-2)のようにバルサの弱点を突いて、後半の真ん中まで同点で持っていっても、十分にそこからの時間帯で最後はアゴが上がって「もうお手上げだ」という状態まで持っていっています。
 
 そこには縦パスの精度であったり縦パスを入れるための横パス、縦パスを入れた後の戻し、つまり「縦に入れる」「縦に戻す」という要素がちりばめられている。サイドを変えて縦に入れて縦に戻すこともできる。この繰り返しが、ディフェンスの足を止めることになります。
 
 ディフェンスの足が止まると、人と人の間にスペースができてきます。そうするとバルサの選手たちは、縫うようなパスを使って組み立てていきます。バルサは今、そういうように進化してきているかなと感じています。そこの進化の部分を、十分に細かく解明してたり把握できている人が少ない印象ですね。

<続く>

セミナー「バルセロナのサッカーと育成法から日本が学ぶべきこと」を開催。乾眞寛監督がバルセロナのサッカーを詳細に解説。バルサとスペインのサッカーや育成から日本の指導現場は何を学ぶべきかも提言します。

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話
ス ペイン在住歴5年、スペインでの指導経験も持つ気鋭のジャーナリスト・小澤一郎が、メルマガでしか読めない深い論考をお届け! 選手育成を軸足に、日本 サッカーにおける問題点の数々を鋭く指摘します。ライトファンにはディープな知識を、選手・指導者・保護者には真摯な問題提起を。あらゆるサッカーファン 必読のメルマガです!

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