世界一のタイトル獲得を目指すバルセロナが、ついに来日した。直前のクラシコではレアル・マドリーに3−1で逆転勝利し、改めてその強さを世界に知らしめた。究極形とも言える彼らのフットボールは何が優れて、何が違うのか。ペップ・バルサの“真の戦術”を読み解く。(第6回/全9回)
昨シーズンの終盤からプジョル、ピケの故障により、マスチェラーノが急造センターバックとしてプレーしている。しかし、グアルディオラはこれまでもブスケやヤヤ・トゥレといったピボーテをセンターバックに起用しており、そうした起用法やマスチェラーノが3バックのセンターに入る3-4-3のシステムを見ても、バルサのセンターバックは「D Fというよりもピボーテ」というイメージになりつつある。
もちろん、ただでさえ高さやフィジカル重視ではない選手育成をしているため、意図的に高さ、強さのあるセンターバックを外部から補強することもあるだろうが、足元の技術の高いチグリンスキでさえバルサのサッカーに適応するのに時間を要したという点から考えても、今後、外から「センターバック」を補強することは考えづらい。
マスチェラーノのようにピボーテとして獲得し、ミスが即失点に直結しない同ポジションでバルサのサッカーに慣れてもらい、適応完了となった段階でセンターバックとして起用するパター ンが定着するのではないだろうか。
また、センターバックに求められるプレーということで言えば、グアルディオラが指揮を執るようになってから「運ぶドリブル」が絶対条件とな った。スペインではもともと、「レガテ」(突破のドリブル)と「コンドゥクシオン」(運ぶドリブル)とい う2つの単語があり、ドリブルはこの2種類に明確に分けられる。グアルディオラが監督に就任する際、師匠であるクライフが「これからのサッ カーではセンターバックのドリブルが重要な戦術となる」とアドバイスしたそうだ。
ピケと言われれば、ドリブルで持ち上がるシ ーンを想像するファンも多いと思うが、バルサのサッカーが進化している現状を見ていると、サッカーの未来において「ドリブル」を最も多用するのはセンターバックとなるのかもしれない。少なくとも1試合平均で最も長い距離をドリブルしているのはセンターバックということになるの は目に見えている。
よって、ドリブルを「突破のドリブル」としか認識しない日本サッカー界は、センターバックの育成や世界基準のドリブルスキルの習得面で遅れを取る危険性が高い。歴史を塗り替え続けているバルサというチームは、同時に未来のサッカーへの方向性を示している。バルサの戦術から未来のサッカーを読み解くことも重要ではないか。