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遠藤友則『一流の逆境力』vol.2──意識を変えるだけで効果は変わる

2015.06.18


文=遠藤友則

ミランではどんな練習をしているのか

 一流はプレッシャーのかかる大一番になればなるほど力を発揮します。しかし、そのためには本番に臨む態度が大切になります。つまり、日々の練習です。
 強いチームの条件として怪我人が少ないことがあげられます。チーム力=コンディションといっても過言ではありません。どんなに才能あふれる選手であっても怪我をしていたり、コンディションが悪かったりすると力を発揮できませんし、監督は理想のフォーメーションを作ることができません。それがチームの成績になって表れてしまいます。
 欠かせないのが、練習前後の身体のケア。1日24時間をサッカーのためにどれだけ費やせるかということなのです。サッカーの練習は、全体練習としては、90分前後です。1日のうちの残りの22時間30分をどう考えてどう使うかです。一日中練習していれば上達するというものでもありません。
 試合でよいプレーをしたければ、自分の身体を常にケアして、ベストの状態で練習に臨めるようにすることです。それには、1時間半の合同練習に対して、試合同然の意識で臨めるかどうかにかかってきます。

「それでは、休む暇もないのでは」
という方もいるかもしれませんが、サッカー選手は、休むのも仕事、食べることも仕事。リラックスするのだって仕事です。これをほどよく調整できる選手が一流なのです。

イタリアに渡って驚いた練習のムード

 私が日本からイタリアに渡って最初のころ、驚いたことがあります。それは、「練習」が単なる練習ではないということです。
 練習に試合と同じメンタルで臨んでいるのです。試合に臨むために入念な準備を行い、きちんと体調を整えるのは誰もがやることですが、多くの選手が、同じように練習に臨む前にも入念な準備をして臨んでいました。

その代表がガットゥーゾ。彼は、練習開始の2時間以上前に来て喫茶室でコーヒーを飲みながらスポーツ誌をチェック。すぐに練習のための準備である治療、そして体幹トレーニングの補強運動を行い、練習開始の30分前には、いつでもスタンバイ状態。今か今かと練習開始を待っている毎日でした。カフーもじっくりと身体の手入れをし、練習に臨むのが習慣でした。
 毎日が「練習のための練習」ではなく、時に本番をしのぐほどの緊張感、厳しさの中で行われている。唯一本番の試合と違うのは、相手に怪我をさせるようなプレーをしないだけ。それ以外は、すべて試合と同じ意識でやっています。

 通常の練習では、最後の20分間を紅白戦のミニゲームで締めくくります。そのときによってコートの大きさは変えますが、とにかく、ミニゲームの真剣さには圧倒されます。「練習でここまでやるか」と驚くほどです。今になって思うと、この真剣さが試合で活きてくるのだということが理解できました。
 傍から見たら日本でもイタリアと同じような練習です。しかし、何を意識して行うか、そして取り組む選手の真剣度の違いによって、効果はまったくといっていいほど変わってくるのです。

【バックナンバー】
vol.1──勝つために何をするか

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