2015.06.15

なでしこのエースが秘策として磨いてきたGKを“見ない”シュート

スイス戦で先発した大儀見 [写真]=FIFA via Getty Images

文=小澤一郎

 佐々木則夫監督が「このワールドカップの指標となる試合」と語るほどの重要性を持った初戦のスイス戦に1-0で勝利したなでしこジャパンは経験豊富なチームらしく「いい大会の入りをした」と言っていい。しかし、ボール支配率が45%と50%を割り、後半はバッハマンを軸としたスイスの攻撃に対して防戦一方だった内容面を見ても、今回の女子W杯ではボールやイニシアチブを握る時間とシュートチャンスが少ない厳しい試合が続くことになりそうだ。

 そうした中でキーマンとなるのはやはりエースの大儀見優季だろう。今大会の大儀見は「ゴールをとる」意識に重きを置くため、できる限り中盤でのポストプレーやゲームメイクの動きを減らし、前線で相手DFラインと駆け引きに専念しようとしている。シュートについても今大会に向けて通常では考えられないプロセスでの打ち方を秘策として磨いてきた。それが「ゴールやGKを見ない」シュートだ。ストライカーのみならず、サッカー選手であれば誰もがシュートを打つ時にルックアップをしてGKの立ち位置や狙うべきコースを“見る”はずだが、大儀見は意図的にその作業を省いたシュートを身に付けて大会入りしている。その狙いについて彼女はこう説明する。

「シュートを打つ時にルックアップするとそれ1つでGKからすると『シュートが来る』と予測ができますが、そのタイミングすらもつかませないよう心がけています。自分の頭の中で『このシュート地点ならGKはここにいる』というイメージを持って打つと無駄なロスを減らすことができます。顔を上げてゴールやGKを見る確認作業が入ると、それだけで判断も遅れるし、シュートに持っていく時間もかかってしまうので、そういったロスをなるべく消していって相手GKに考えさせる時間、判断させる時間を与えないシュートへの持って行き方を意識して取り組んでいます」

 しかしながら、このシュートはシュートを打つ時にゴールを見ないだけあって、試合前からGKの特徴や癖を情報として入れておき、開始直後からはその事前情報と実際にピッチ上で感じる情報を照らし合わせて、シュートを打つ局面になった時には「シュートを打つ」ことだけに集中できるよう周到な準備がなされている。だからこそ、大儀見は「シュートを打つ瞬間は、自分の頭の中に自分やGKのポジショニングが俯瞰映像として見えている」と説明する。つまり、見ない理由は見る必要がないほどに“見えている”からなのだ。

 予想された通りスイス戦では相手の徹底したマークと日本の攻撃が単調過ぎたこともあってシュートは2本のみ、ノーゴールに終わった大儀見だが、PKにつながった安藤梢へのラストパスを見てもわかる通り、“見る”作業を省略したプレーの処理スピードの速さによって相手DFが反応できないパスを前半は3本出していた。今後、チームとして大儀見にシュートを打つプロセスに集中させることができれば必ず得点、勝利の可能性は上がってくる。判断スピードの面では間違いなく“世界ナンバーワン”ストライカーに成長した大儀見の活躍とゴールがなでしこジャパンの躍進を占う鍵である。