FOLLOW US

【FAカップ準決勝】ジェラードの花道を飾りたいリヴァプールとタイトルへ望みつなぐアストン・ヴィラが激突

2015.04.18

A_L

 すべてはスティーヴン・ジェラードのために――。

 ウェンブリーでFAカップ決勝が行われる5月30日は、リヴァプールの“キャプテン・ファンタスティック”にとって35回目の誕生日だ。イングランド中が愛する英雄のラストゲームに、聖地ウェンブリーでのファイナルほど相応しい場所はない。そして、トロフィーを置き土産にファンとお別れができるのなら、これほど美しいシーンもないだろう。

 去る1月2日、今季限りでのリヴァプール退団を発表したジェラードは、3日後のFAカップ3回戦ウィンブルドン戦で自ら2ゴールを決め、チームを好発進させた。その後は2部のボルトンやブラックバーン相手に再試合を強いられるなど苦戦しつつも、「キャプテンのために」を合い言葉に、彼らはしぶとく準決勝まで勝ち上がってきた。

 次なる対戦相手は、リヴァプールとまったく同じ7度のFAカップ優勝経験を持つ古豪アストンヴィラである。ともに100年前からイングランドのトップリーグでしのぎを削ってきた名門対決らしく、FAカップでの対戦歴もかなり古い。初対戦はなんと1896/97シーズン。今回と同じ準決勝で、ヴィラが3-0で勝利を収めてそのまま優勝している。

 ただし、それ以降で見ると、リヴァプールはFAカップでヴィラと6度戦ってすべての試合で勝利している。しかも6連勝はすべて無失点で、トータルスコアは「12-0」だ。最後の対戦は1995―96。これまた準決勝だったが、懐かしのロビー・ファウラーが2ゴールを挙げる活躍で、3-0とヴィラを一蹴している。

 自信を持ってウェンブリーに乗りこむリヴァプールは、この試合から主力2選手が帰ってくる。

 3月のマンチェスター・U戦で、後半開始から投入されてわずか38秒で一発退場したジェラードと、同じ試合でダビド・デ・ヘアを踏みつけたマルティン・シュクルテル。チームの精神的支柱と守備の要が、そろって3試合の出場停止を消化したのだ。

 正直、すでに“ジェラード後”を見据えているブレンダン・ロジャーズのチーム作りを考えると、中盤にはジョーダン・ヘンダーソンやジョー・アレンが先発し、ジェラードはベンチスタートの可能性が高い。だが、いまだ錆びつかないセットプレーや、“ジョーカー”として試合の流れを変えられる存在感はプレミアで証明済み(マン・U戦はそれが裏目に出たが……)。苦しい時間帯にチームを盛り上げるキャプテンの姿は、周囲にとってこの上なく心強い。

 また、ロジャーズはアーセナルに1-4で敗れた後から、3バックをやめて4バックに布陣を戻しているが、ディフェンスリーダーであるシュクルテルの帰還でどのようなシステムを採用してくるかにも注目したい。今季プレミアでブロック38回、インターセプト244回、タックル32回といずれもDF陣のトップ数値を残している彼の復帰もまた、“対クリスティアン・ベンテケ”を考えると非常に大きい。

 そうなのだ。いくらリヴァプールにとって“カモ”であるヴィラが相手といっても、ヴィラにもまた、リヴァプールを“お得意さま”としている選手がいるのだ。それが、このカード過去5試合で4ゴールのビッグマン、ベンテケである。
 開幕からずっと、ヴィラは深刻な決定力不足に悩まされてきた。ここまでプレミア33試合で24得点はリーグワーストで、シュート数349本に対して決定率6.88%も同じくワースト。攻撃不振の一因は、主砲ベンテケのケガや不調と無関係ではなかった。

 だが、2月半ばにポール・ランバート監督が解任され、ティム・シャーウッドが新監督に迎えられると、このベルギー代表FWは別人のように躍動し始める。アグレッシブかつ攻撃的な姿勢が信条のシャーウッドは、昨季後半に指揮を執ったトッテナムでも、ハリー・ケインにブレークのきっかけを与え、不振だったエマニュエル・アデバヨールを甦らせた実績がある。そして今回も、シャーウッド就任前までわずか2ゴールだったベンテケは、監督交代後のプレミア8試合で8得点。87分に1ゴールというハイペースでネットを揺らしているのだ。

「私が就任するまで、チームはベンテケにちゃんとチャンスを与えていなかった。彼にはエネルギーを消耗させず、前線に残して相手のDFを苦しめる役割を与えるべきなんだ。もう、彼の“足かせ”は外れたよ」

 シャーウッドはそう自信を除かせる。足かせが外れたモンスターがリヴァプール守備陣を痛めつけることができれば、ヴィラにも勝機が見えてきそうだ。

 ウェストブロムウィッチに勝利した準々決勝の後、ファンが次々とピッチになだれこんだシーンを見ても、ヴィラのサポーターがプレミア残留争いのフラストレーションをFAカップで発散させたいと願っていることはひしひしと伝わってくる。

 得点力を取り戻し、反骨心とハングリー精神に満ちたクラレット&ブルーは、虎視眈々と“レッド狩り”を狙っている。

 アストン・ヴィラの選手やサポーターからすれば、リヴァプールのキャプテンに最後の花道を飾らせてやる義理など、まったくない。

アストン・ヴィラとリヴァプール情報・分析データはこちら http://foxsports.jp/world_soccer/premierleague

banner

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

RANKING今、読まれている記事

  • Daily

  • Weekly

  • Monthly

SOCCERKING VIDEO