
バルセロナでエースと監督の冷戦が続いている。ルイス・エンリケのロッカールームでの求心力はレアル・ソシエダ戦の敗戦を境に、急激に下がってしまった。世界の中心がバルセロナだった時代が終わったことを今やっとバルセロニスタが認識したのだろう。ティト・ビラノバで、ヘラルド・マルティーノでごまかしてきたが、ついにルイス・エンリケでチームは崩壊した。
嘘か、本当か。ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長がルイス・エンリケの解任を約束し、エースを安心させようするという報道が出た。カタルーニャ寄りのメディアから出た。クラブは監督とエースの関係修復を図るのではなく、エースを選択し、監督を切ることを選択したというものだ。先発メンバーを決めるのは監督の“聖域”だというのに、クラブはエースの言い分を認めようとしている。
今のバルセロナは選手たちのものだ。黄金期を築いた選手たちはあまりにもその存在が大きくなりすぎた。昨シーズン、ヘラルド・マルティーノがホームゲーム前にホテルでチームを前泊させようとすると「監督、ここはそういうやり方ではない」とビクトル・バルデスら3人のキャプテンが異を唱えたという。

1月4日のレアル・ソシエダ戦では先制点が奪われた直後、ベンチではネイマールがメッシに向かって「ウォームアップだね」とウィンクを送り、2人は自分たちをベンチに座らせた監督を馬鹿にするようなやりとりが地元のカメラに捉えられていた。クラブ史上最高の栄光を築いた選手たちは「監督の起用法に応えるのが選手たちだ」とメディアの前では口にしながら、実際にはチームをコントロールし、外様の監督は口を出せなかった。
そして今、チームの大エースであるメッシがルイス・エンリケの解任を迫っている。バルセロナは似たような出来事をすでに経験している。1976年にヨハン・クライフがクラブに「俺をとるのか、監督をとるのか?」と迫り、サポーターの支持もあり、ドイツ人監督のヘネス・バイスバイラーが3月に解任された。メッシはクライフの歴史を今まさになぞろうとしている。
第18節アトレティコ・マドリード戦。チームは勝利したが、攻撃は3人の南米の偉才に頼るだけ。ゲームを支配するというクラブのアイデンティティはピッチのどこにもなかった。ルイス・エンリケは試合が決定をした3点目を決めた後に選手交代を行っており、選手の言いなりとなっているようだった。カンプ・ノウは事あるごとにメッシの名前を連呼し、称える。

あまりにも発言権が大きくなった選手たち。そんな選手たちに対して、現役時代にバルセロナでスター選手だったルイス・エンリケが「規律をもたらしてくれる」「メッシを走らせてくれる」とバルセロニスタは期待したが、シーズンが終わる前にその思いは失望に変わろうとしている
ルイス・エンリケはアプローチを間違った。ムニル・エル・ハダディ、サンドロ・ラミレスといったトップチームに昇格したばかりの選手たちは命令すれば走る。しかし、百戦錬磨でお金持ちの選手たちには別のアプローチをしなければ、プライドを傷つけられたと思い、チームに問題をもたらす。
ルイス・エンリケは2011-12シーズンにイタリアのローマを率いた時、同クラブの生ける伝説であるフランチェスコ・トッティのポジションをコンバートし、軋轢が生まれた。現役時代からエキセントリックな性格は監督となっても変わっておらず、エゴイスティックで個性が強い選手たち(現役時代のレアル・マドリードからバルセロナへ移籍したルイス・エンリケもそういう選手だった)と衝突を繰り返してきた。そしてバルセロナでは、史上最高のサッカー選手と衝突。ルイス・エンリケがもしバルセロナを去ることになれば“スター選手の扱い方を知らない監督”のらく印を押されることになるだろう。
監督が代わっても、メッシは今のままチームが低調ならば移籍を考えるだろう。メッシは常に世界最高であり、タイトルを争い続けるクラブにいたい。勝者ならば当然だ。今では完全にバルセロナとレアル・マドリードの立場は逆転している。クリスティアーノ・ロナウドはなかなかタイトルをとれない時、クラブに不満を抱いていた。今はメッシがフラストレーションを溜めている。欧州でタイトル争いできないバルセロナの現状が、この問題の根底にはある。
補強を失敗させたアンドニ・スビサレッタがいなくなろうと、ルイス・エンリケが首を飛ばされようと、バルトメウが会長の座から退こうと、バルセロナがタイトルを争うチームにならなければ、メッシは満足しない。彼が満足しなければ、バルセロナに真の平静は訪れない。