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3バックシステムで対抗するマンチェスター・ユナイテッドの逆襲(後編)~守備面でのタスクとシステムのデメリット~

2015.01.01

Getty Images

ファン・ハール監督が課した「守備面」での約束事

 3バックシステムは、最終ラインをDF3人で守らなければならない。したがって、両WBの選手に課されたタスクが重要になってくる。なぜならば両WBの働きによって、最終ラインをどのように構成するのかという、守備の際の根本的な問題に関わってくるからである。

 つまり、4バックはCB2人とSB2人の4人が連係して守備をすることができるし、最初から最終ラインに5人を置いた5バックならば、攻撃の際にもあまり前線に上がらないので守備の負担が軽減される。

 しかし3バックは基本的にDFを減らして、その分中盤で数的優位な状態を作って攻撃することを目的としたシステムだと言えるので、両WBの2人が同時に下がって守備におわれてしまうと、逆に中盤で数的不利な状態になってしまうのである。

 中盤で数的不利な状態になることが、なぜ問題になるのかと言えば、中盤の人数が少ないので相手からボールを奪う位置が下がってしまう、という弊害が生じる。ボールを奪う位置が下がるということは、必然的に最終ラインにいるDFの位置も下がらざるを得なくなる。そして、FWとDFの距離も間延びしてしまい、攻撃でも妨げになってしまう。

 WBのポジショニングが、攻撃においても守備においても3バックシステムの生命線であると言える。なぜならば、WBも参加して中盤での数的優位を保って、高い位置から相手のボールを奪って攻撃することが有効な手立てになるからである。

 高い位置から相手のボールを奪うためには、次の3つのタスクが求められる。

【1】ボールサイドにいるWBは前線に上がっていき、逆サイドのWBは下がって3バックと一緒に守備につく。マンチェスターUの場合、左WBのヤングが中盤に上がっていくと、逆サイドにいる右WBのバレンシアは下がってDFの最終ラインに並ぶ。

【2】3バックの3人のジョーンズ、エヴァンス、マクネアと、CHの2人のルーニーとキャリックの5人が、ボールサイドにスライドして移動する。相手にボールが渡って守備をしなければならないとき、攻撃で前線に上がっているルーニーは、すばやく下がってきてキャリックの横に並んで守備をする。(図を参照)

【3】相手のSBがボールを持って後方からビルドアップしようとしたときに、まずFWの2人のファン・ペルシーとファルカオは、対面する相手のCBにプレッシャーをかける。そしてボールサイドのWBは、ボールを持つ相手のSBにプレスにいく。さらにトップ下のマタは、トッテナムの[4-2-3-1]のシステムのうちで中盤の3人の真ん中の選手(クリスチャン・エリクセン)のところまで下がってケアする。つまりマタは、エリクセンへのパスコースをさえぎるポジションを取らなければならないのである。

 以上のように守備面で課せられた選手へのタスクに関しても、オートマティズムに連動しながら機能していたのである。3バックを選択したファン・ハール監督の意図が、ここまで選手たちに伝わっていることに驚かされたほどだった。

3バックのメリットとデメリット

ファン・ペルシー

 どんなシステムにもメリットがあるようにデメリットも同時に存在する。

 3バックのメリットは、中盤で数的優位を作れることにあると言及してきた。それは、攻撃においてはトッテナム戦でファン・ペルシーが見せた「裏を狙う」などのスペースの活用であり、守備においてはWBが1人下がって最終ラインに入ってCH2人と協力して合計6人で守備ができるということである。あるいは、両WBが下がると守備に合計7人がつくことになる。つまり、ゴール前に人数をかけられるので、それだけ守備の密度が濃くなるということだ。

 3バックのデメリットとしては、以下のことが想定される。

【1】どちらかのWBに対して、相手の攻撃的選手2人が連係してきて崩される可能性がある。WB1人対MF2人(またはFWとMFの2人)の数的不利が起る。

【2】トッテナムの1トップのハリー・ケインに対して、マンチェスターUのCBの1人が対面するので1対1のマンツーマンになる。もしも、対面するCBが躱されるとGKとの対決になってしまう。

【3】トッテナムのトップ下にいるMFのエリクセンが上がってきてFWのケインと横に並ぶと、2トップの状態になり3人で守っているマンチェスターUのDFがどちらをマークすればいいのか迷いが生じる。そのときに、トッテナムのSBがサイド深く侵入するチャンスを与えることになる。

【4】トッテナムにとっては、ケインとエリクセンの動きが重要になってくる。この2人がマンチェスターUのDFを中に絞らせる動きをすれば、両サイドのスペースが空くし、逆に、DFを横に広げさせればDFとDFの距離間が広がって、トッテナムの両サイドのMFが裏に飛び出せる機会を作る。

 試合前半に攻撃参加するために前線に上がっていたヤングの裏のスペースにボールが送られるシーンがあった。このときは、ケインとエリクセンの動きに注意が向けられていたので、マンチェスターUの3バックは中に絞ってポジショニングしていた。

 3バックシステムには、ここまで述べてきたようなメリットとデメリットがある。昨シーズンとは選手の面子も大幅に入れ替わったマンチェスターUだからこそ、ファン・ハール監督が目指す3バックの構築は、予想されたよりも速く組み立てられつつあるように見える。

 怪我人が復帰して余裕をもって選手を使えるようになれば、もっと強固な3バックになっていくに違いない。それは、首位を走るチェルシーを脅かす存在に駆け上がる可能性を秘めている。

 赤い悪魔の逆襲劇は、いま始まったばかりだ。
 
(表記の説明)
GK=ゴールキーパー
DF=ディフェンダー
CB=センターバック
SB=サイドバック
WB=ウイングバック
CH=センターハーフ
MF=ミッドフィールダー
WG=ウインガー
FW=フォワード
CF=センターフォワード

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