TOYOTA, JAPAN - NOVEMBER 14: Keisuke Honda of Japan shoots the ball during the international friendly match between Japan and Honduras at Toyota Stadium on November 14, 2014 in Toyota, Japan. (Photo by Kaz Photography/Getty Images)
遠藤は良かった。長谷部も、内田も。ハビエル・アギーレ監督指揮下で初の国際Aマッチに臨んだ彼らは、チームに安定と落ち着きをもたらし、それだけでなくスムーズな連携を生み出した。
だが、ちょっと待ってほしい。それは分かっていたことではないのか?
システムは使い慣れない[4-3-3]だが、選手の顔ぶれはブラジル・ワールドカップとほぼ同じである。先発のうち10人は、アルベルト・ザッケローニ前監督とともに戦ったメンバーだ。唯一の例外である武藤にしても、国際Aマッチ出場は5試合目を数える。ホンジュラスの低調なパフォーマンスを加味しても──彼らは何をしたかったのだろう──チームが機能するのは想定内だ。
キックオフから9分で先制点したことにより、精神的にも素早く重圧から抜け出した。6-0というスコアは出来過ぎだが、勝利は大前提のゲームだった。
個人レベルでの成果はある。
このところクラブと代表で得点から遠ざかっていた本田圭佑に、ゴールが生まれた。後半から出場した乾貴士が、Aマッチ13試合目にして代表初ゴールを記録した。過去4試合出場で無得点の豊田陽平も、ゴールネットを揺らした。
所属先で控えに甘んじる川島永嗣は、散発的にやってきた際どい場面をしのいだ。好調なサウサンプトンで出場機会に恵まれない吉田麻也は、フル代表でおよそ3年ぶりとなるゴールを決めた。相手の攻撃に迫力がなかったとはいえ、ディフェンスもそつなくこなした。
だからといって、視界が広がったと考えるのは早計だ。
たとえば、香川真司のポジションである。
インサイドハーフとしてプレーしたホンジュラス戦の彼は、長短のパスを繰り出しながら前線へ飛び出した。2-0で迎えた前半41分には、ドリブルで持ち上がった本田からパスを受け、ペナルティエリア内から決定的なシュートを放っている。この一撃は惜しくも得点につながらなかったが、攻撃のきっかけを作ったのは他ならぬ彼のパスカットだった。
18日のオーストラリア戦でも、香川は同じような仕事ができるだろうか。ディフェンスに引っ張られる時間帯で、つまり彼の守備力が問われるなかで、この試合と同レベルの攻撃力を示すことができるだろうか。
最前線にティム・ケーヒルが入り、そこをめがけたロングボールが繰り返されれば、インサイドハーフはセカンドボールの回収に走らなければならない。自ら空中戦を競り合う局面も起こりうる。香川の特徴には似つかわしくないプレーだ。背番号10のインサイドハーフ起用を「機能した」と表現するには、まだまだ判断材料が足りない。少な過ぎる。
アギーレ監督が就任した背景には、ザッケローニ前監督が推し進めたスピードと技術を融合させたサッカーを、さらに加速させる狙いがある。もっと広い意味で言えば、イビチャ・オシム元監督が掲げた「日本代表の日本化」である。具体的には日本人が持つ技術と敏捷性、それに組織力を生かしたサッカーだ。
そうした観点から、ホンジュラス戦を改めて振り返る。オシム元監督が使ったフレーズを借りれば、「肉でも魚でもない」ようなゲームだった。
選手同士の距離感が改善され、それによってコンビネーションが発揮されたシーンは何度かある。後半開始直後に乾があげた4点目は、オフ・ザ・ボールも含めて多くの選手が関わったゴールだった。同じく乾が挙げた6点目も、長谷部、本田、香川、豊田の直接的な関わりから生まれている。イメージの共有が、得点につながった場面は確かにあった。とはいえ、ホンジュラス戦は何かを得るための戦いではない。逆説すれば、負けたチームが何かを失うものではない。
このチームの直近の目標は、来年1月のアジアカップ優勝だ。視線を遠くへ移せば、4年後のロシア・ワールドカップで上位進出を目ざさなければならない。目標から逆算して、目の前の試合を評価するべきなのだ。ホームでホンジュラスに大勝したからといって、9月、10月の4試合を精算してはいけないのである。