FOLLOW US

日本サッカーを長年支援のキリン…ブラジルのイトゥ工場とは

2014.06.13

 ところは、日本代表のベースキャンプ地であるイトゥ。中心街から車で約10分揺られると、幹線道路沿いにデカデカと「BRASIL KIRIN」とペイントされた大きなタンクが姿を現す。

 日本代表の練習がオフになった10日、メディア向けにブラジルキリン社のイトゥ工場の見学ツアーが行われた。約1億9000万人を抱える巨大国家ブラジルは、ビールの消費量でも世界第3位。日本が誇るビール会社のキリンも、2011年にブラジルでビール2位だったスキンカリオールを約3000億円で買収し、約3兆円と言われる大規模市場での挑戦に打って出ている。

 ただ、そんな大規模事業は露知らず。案内に記された「ツアーの最後には出来たてのビールを試飲頂けます」という文言のみに目を奪われ、ノコノコとツアーに参加。ブラジルキリンの取締役である中村貴志さんの案内で、工場を小一時間回っていると、何やら甘美な匂いが漂ってくる。中村さん曰く、ビールに使う麦芽の匂いとのこと。終盤で五感を刺激して来る絶妙な演出により、期待感が最高潮となったところで、ついに試飲となった。

 さっきまで見学していたビールタンクと直接繋がったパイプから、工場長のフーベン自らがキンキンに冷えた黄金色に輝く液体をグラスに注いでくれる贅沢ぶり。ブラジルキリンの看板商品である「スキン」でゴクッと喉を潤す。現地人向けに苦味が抑えられて、キレがある。続いて、ブラジルでは「KIRIN ICHIBAN」の名前で販売され、日本で販売25年目を迎えたキリンが誇る「一番搾り」。飲みやすさと麦のうまみはブラジルでも変わらず、当地でも売れ行き好調なのも納得のうまさ。

 約15人の参加者の顔が紅潮してくるのを見て気を良くしたのか、工場長は次々と製品を持ってくる。「バーデンバーデン」のゴールデンはシナモンの味がアクセントとなり、クリスタルはサッパリとした喉ごし。中村さんが「フーベンは止まらないから」という通り、工場長は1本2500円相当の高級ビールも持ち出す。スパークリングワインをイメージさせる「ルスト」は、甘みとともにどっしりとした重厚な味わいだが、アルコール度数は10.5パーセント。ここらで限界か。

 誤解なきよう記しておくが、日本代表のベースキャンプ地の選定において、ブラジルキリンのイトゥ工場の影響は全くない。結果的にメディアセンターに飲料を提供することをはじめ、キリンが全面的にサポートしている形になったが因果関係はなく、偶然の結果となっている。

 そもそも、キリンは日本がワールドカップに出場するはるか昔、もちろんJリーグがあるわけでもない1978年から日本サッカーを支援している。ブラジル・ワールドカップ開幕直前の5月25日には、2015年4月から2022年12月までの新たにオフィシャルパートナー契約を締結した。

 ちなみに、キリンビールの代表取締役社長を務める磯崎功典氏は、支援開始の前年にあたる1977年に入社。当時営業を務めていたという磯崎社長は、「スタジアムにほとんど観客のいらっしゃらない中で、ビールを売っていた覚えがあります。本当に大丈夫かなという不安もありました」と日本サッカーの黎明期を振り返るとともに、「けれど、ここまで大きく発展、成長して感無量の思い」と満面の笑みで語っていたことがあった。大企業の長年の援助が実を結び、現在の日本サッカーの発展に繋がっているのだ。

 記者やカメラマンに関係なく、誰もが顔を赤くする中、最後まで顔色ひとつ変えずにいたフーベンが、新商品のオレンジ風味のビールを注ぎ始めた。工場長の温和な笑顔を見せられると、限界だと思いながらもついついグラスに手が伸びてしまう。

 メディアに最高の思い出を提供してくれたブラジルキリンに、そして日本サッカーを積年に渡り支え続けているキリングループに乾杯。

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

RANKING今、読まれている記事

  • Daily

  • Weekly

  • Monthly

SOCCERKING VIDEO