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「カメルーン旋風を巻き起こした男」1990年 イタリア大会 MY WORLD CUP/ロジェ・ミラ

2014.05.31

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前回王者アルゼンチンを相手に1-0の勝利をもぎ取った初戦から、快進撃は始まった。アフリカ勢初のベスト8進出を果たした「不屈のライオン」。その中心にいたのは、ロジェ・ミラだった。

ミラ

マラドーナを抑えればチャンスは必ずある

まずは、1988年に36歳で引退していた君が、1990年大会に参加することになった経緯を教えてもらえるかな。

ミラ 引退後はフランスのアマチュアレベルでプレーしていた。知人とのんびり休暇を過ごすような暮らしに満足していたよ。でも、1984年大会のチームメートであるテオフィル・アベガの功労賞授賞式に参加するためにカメルーンに戻ったら、多くの人に「引退は早すぎだ」と言われた。その一人が大統領だったんだ。

政府が監督に君の招集を要請したということ?

ミラ 大統領はそう願ったようだ。幸運にも大会前のテストマッチで良いパフォーマンスを見せられたから、自分の力でメンバー入りを勝ち取ることができた。

本大会でも活躍できるという自信はあった?

ミラ 実際にはなかったよ。でも、フットボールはフィジカルだけで勝てるものではない。私の強みはインテリジェンスだと思っていたし、コンディションさえ戻ればチャンスはあるとも感じていた。チームに合流してからの最初の目標は、とにかくコンディションを戻すことだった。その後の判断は監督に任せようと思っていたよ。

初戦では前回王者のアルゼンチンを1-0で下した。勝つ見込みはあると思っていた?

ミラ ああ、自信があったよ。我々の戦術はシンプルだった。とにかくマラドーナを止めること。彼を抑え込めば、チャンスは必ずあると信じていたんだ。

試合後の祝勝会は盛り上がっただろうね?

ミラ いや、すぐに第2戦のことを考えたよ。ルーマニアに勝てば、決勝トーナメントに進出できると思ったからね。

そのルーマニア戦では2得点を挙げた。

ミラ 自分でも驚いたよ。テクニックには自信があったけど、フィジカル面であそこまでのプレーができるとは、正直思っていなかった。

コーナーフラッグに駆け寄って踊るゴールパフォーマンスを初めて披露したのがルーマニア戦だった。あれは前からやろうと準備していたの?

ミラ いや、あれは本当に突発的な思いつきでね。それまでにやったことはなかった。

ベスト16のコロンビア戦では相手GKのレネ・イギータからボールをかっさらい、ゴールを決めた。あれは狙い通りのプレーだったの?

ミラ 私はコロンビアのキャプテンを務めていたカルロス・バルデラマと、モンペリエ時代にチームメートとしてプレーした経験があったからラッキーだったんだ。当時のチームはブラジル代表DFのジュリオ・セザルや若きローラン・ブランも在籍する、素晴らしいチームだった。私はバルデラマに頼んでイギータのプレー映像を見せてもらっていた。イギータはゴールエリアから度々ドリブルを仕掛けていた。だから私のスピードでボールを追えば、ミスをする可能性もあると感じた。狙いどおりだったね。

つまり、責任はバルデラマにあるってことか。

ミラ ああ、間違いない(笑)。

準々決勝ではイングランドに2-1とリードしながら、最終的には2-3で敗れた。もったいなかったと感じている?

ミラ 今になって振り返ってみると、確かにそう感じる。でも、我々にとってサッカーはリードを守って消極的にプレーするものじゃなかった。だからスコアが何であれ、常に前へと攻め続けた。それが唯一のやり方だったんだ。

試合後のチームの雰囲気は?

ミラ 我々はみんな満足していたよ。それほど素晴らしい大会になったし、一生忘れられない経験ができたからね。首都のヤウンデで軍の車両に乗ってパレードをした。何千人もの人々が集まってくれて、最高の気分だったよ。

君は1994年大会にも出場し、42歳で得点を挙げた。大会への参加は君自身の希望だったの?

ミラ いや、カメルーンの人々のアイディアだった。私が唯一得点を取れる選手だと信じ、応援してくれたんだ。当時、プロとしては引退していたけど、継続的にプレーしていたから、コンディションは整っていた。自信があったかって? もちろんだよ。

1990年の大会は君の人生を変えた?

ミラ いや、変わっていないな。大会が世の中に与えたインパクトには驚いたけど、私自身は何も変わらなかった。私に対するイメージは変わったけれど、その後も普通の人生を過ごしているよ。

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