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元日本代表MF福西崇史が自身初の新書を刊行、ブラジルW杯、グループステージの戦い方を徹底検証

2014.04.26

2度のワールドカップ出場経験を誇る元日本代表MFで、現在はサッカー中継の解説を務める福西崇史氏が、24日、東京都渋谷区にあるプーマストア原宿で自著『こう観ればサッカーは0-0でも面白い』(PHP新書)の出版記念イベントを行った。来るブラジルW杯について、福西氏は日本の戦いをどのように展望しているのか。同書で展開する「ボランチ」「個の能力」「組織」という3つの観点から、グループステージを展望する。
福西崇史
インタビュー=細江克弥

――今回の著書『こう観ればサッカーは0-0でも面白い』(PHP新書)では、選手、解説者という2つの視点から、「ボランチ」「個の力」「組織」という3つのポイントを挙げて福西さんならではの“サッカーの見方”を提示されています。

「その国のサッカーを強くするためには、サッカーを文化として定着させることが必要であると言われていますよね。文化にするために大切なのは、“サッカーファミリー”を一人でも多く増やすこと。サッカーファンの中にはサッカーに詳しい人もそうでない人もいると思いますが、この本は、誰が読んでもサッカーの面白さが分かる内容を目指して作りました」

――「ボランチ」「個の力」「組織」という3つのポイントは、サッカーの面白さを知るためのヒントになるということですね。

「そうですね。サッカーを“側面ごと”に切り取って考えることはできませんが、現代サッカーの特徴は、この3つのポイントについて深く考えることで見えてくると思います」

コートジボワール戦の勝敗を分けるのは「ボランチ」を中心とする中盤の攻防

――ブラジルW杯の開幕が迫ってきましたが、日本がグループステージで対戦するコートジボワール、ギリシャ、コロンビアの3カ国は、それぞれこの3つのポイントを特長とするチームなのではないかと思います。

「『世界最高のボランチ』と言われるヤヤ・トゥレ(マンチェスター・シティ)がいるコートジボワールは“ボランチ”、ギリシャは“組織”、コロンビアは“個の能力”ですよね」

――はい。この本を読むことで、そうした観点からグループリーグを展望することもできるのではないかと。

「そうですね。コートジボワール戦の行方は、間違いなく中盤の攻防によって左右されると思います。ヤヤ・トゥレは代表ではトップ下の位置でプレーすることも多いようですが、彼の持ち味は“神出鬼没のプレースタイル”にありますから、いずれにしても中盤の主導権争いを制したチームが試合を優位に進められると思いますね」

――日本が4年間で積み上げてきたスタイルを発揮するためにも、相手の中盤を抑えて、主導権を握る必要がある。

「はい。特にボランチの選手が、どのようなプレーで攻撃を組み立てるのか、どのようなプレーで相手の攻撃を封じるのか。その状況に応じて、最適な“手段”を選択することがものすごく大切ですよね」

――「状況に応じて」というのが大きなポイントになりそうですね。

「そのとおりですね。何も自分たちのスタイルを貫くことばかり考えなくてもいいと思います。立ち上がりから相手が猛攻を仕掛けてくるなら、少し構えて、あえて攻めさせておいてカウンターを狙えばいい。逆に相手が前に出てこないのであれば、自分たちのリズムでパスを回せばいい。大切なのはその時々の“ベスト”を選択すること。攻守の“リズムメーカー”になり得るボランチは、それを見極めるために非常に重要な役割を担っていると思います」

――中盤でのファーストコンタクトによって、最初の“流れ”が決まりそうですね。

「だからこそ、激しくいったほうがいいでしょうね。ヤヤ・トゥレにガツンと体をぶつけて、イライラさせるのも一つの手段。少しでも動揺させて精神的な優位に立てれば、その後の駆け引きをうまく進められる可能性が高いですから。コートジボワールの中盤は、ヤヤ・トゥレに依存している印象が強い。駆け引きによって彼の持ち味をうまく消すことができれば、ゲームを支配しやすくなるのではないかと思います」

“組織力”のギリシャはジワジワと効くボディブローに警戒せよ

――第2戦のギリシャは、伝統的な組織力のチームです。

「この試合は“組織対組織”の対決、つまりチームとしての完成度が高いほうが優位に試合を進められるでしょうね。“個の力”を比べれば、日本のほうが上。ただし、ギリシャが本番で発揮する組織の力はあなどれません。コートジボワール戦と同様、状況に応じて組織で勝負するのか、それとも個で勝負するのかを見極める力が問われると思います」

――先制点がカギになりそうですね。

「間違いないですね。だからこそ、コートジボワールとの初戦をいかに良い状態で終えるかが大切。メンタル的な余裕、充実感を持って臨めば、必要以上に相手を恐れることもなくなります。特にこの試合は、“対組織”ということを考えても平常心で臨みたいですね。コートジボワールやコロンビアほどの“パンチ力”がないとはいえ、ギリシャのボディブローはジワジワと効いてくる。だからこそ、焦らず、自分たちのスタイルに自信を持って戦いたいところです」

――ギリシャの選手たちは、“ボディブロー”の破壊力に自信を持っているでしょうから、それをヒットさせない戦略的な展開に持ち込みたい。

「そうですね。ギリシャは組織力で結果を残してきたチームなので、おそらく簡単には崩れないはず。でも、90分の中で必ず“隙”を見せる瞬間があると思うので、それを見極め、ゴールに結びつける力が問われると思います」

――日本はまさに、そうしたポイントを課題として強化に取り組んできました。

「この4年間の成長は、ギリシャのような相手にしっかり勝てるかどうかで分かると思います。今の日本の“個の力”と“組織力”を考えれば、僕はそれができると期待しています」

“圧倒的な個”ファルカオの存在はコロンビアのアキレス腱!?

――さて、第3戦はグループ最強と目されているポッドA(第1シード)のコロンビアと対戦します。

「個人的な意見としては、コロンビアはかなりいいチームに仕上がっているという印象です。僕は2011年コパ・アメリカのテレビ中継で解説を務めさせていただいたのですが、決勝トーナメント1回戦で敗れたとはいえ、非常に可能性を秘めたチームであると感じました。その後の南米予選や親善試合を見ても、着実にチーム力を上げている。『かなり強い』というのが、正直なところですね」

――コロンビアにはかなり優秀なタレントが揃っていると言われています。まさに“個の能力”を武器とするチームだと思うのですが。

「強さの秘密は、そうした圧倒的な“個の能力”が、ペケルマン監督によって整えられた強固な組織の上に成り立っているということですよね。だからこそ、絶対的なエースであるラダメル・ファルカオ(モナコ)のケガによる離脱は痛い」

――現時点では「本大会に間に合わない」と言われています。

「それが本当なら、日本が戦い方を考える上で大きなポイントになると思います。得点能力はアルゼンチンのリオネル・メッシ(バルセロナ)やポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリー)と同格と言っても過言じゃない」

――つまり、もしファルカオが欠場するなら、コロンビアは世界最高レベルの“個の力”を失うということになりますね。

「そうですね。コロンビアは少なからず彼の得点力に依存してきた部分もあるので、現状のチームには“どうやって戦うか”という迷いが見られる気もします。ただし、ファルカオ以外の選手、例えば司令塔のハメス・ロドリゲス(モナコ)やフレディ・グアリン(インテル)など優れた“個の能力”を持った選手が各ポジションにいるので、警戒が必要ですね。いずれにしても、組織でしっかり対応して、状況によっては『勝ち点1をもぎ取る』という考え方に徹してもいいかもしれません」

――第3戦が決勝トーナメント進出を懸けた試合であることを考えると、確かに、したたかに“計算どおり”の結果を得ることも重要ですよね。

「間違いないですね。コートジボワール戦とギリシャ戦で、いかに“態勢”を整えられるかが最も重要なこと。ただし、今の日本は『グループステージ突破』を最終的な目標としているわけではありません。メンタル的、フィジカル的な余力を持って決勝トーナメントに進出する。それが、“その先”につなげるための大きなポイントになるでしょうね」

――ありがとうございました。「ボランチ」と「個の能力」と「組織」。この3つのポイントに注目することで、グループステージの戦いをより面白く、より深く展望することができそうですね。

「そうですね。この本を読んでいただければ、この3試合に限らず、すべての試合を様々な観点から展望することができると思います。もちろん、W杯だけでなく、サッカーそのものの奥深さと面白さを理解してもらうための手助けになればいいですね」

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