2014.04.19

[アーセナル、覚醒の歴史]デニス・ベルカンプ…不遇の時を乗り越え輝いた希代の天才

[ワールドサッカーキング1405号掲載]

レジェンドとしてクラブ史に悠然と名を残す彼らも、始めからサポーターに愛される存在だったわけではない。試練を乗り越えた末の“覚醒”――そして彼らは伝説になった。
Norwich v Arsenal
文=フットメディア Text by Footmedia
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

 敵陣ペナルティーアークの中でパスを受けた背番号10は、背負っていた相手DFの裏にワンタッチでボールをコントロール、自らも軽やかに反転して相手DFと入れ代わると、最後は冷静沈着にフィニッシュした。2002年のニューカッスル戦でベルカンプが決めた伝説のビューティフルゴール――。このゴールは彼の技術、アイデア、判断力のすべてが結集した完璧な一発であったと同時に、ファンが選ぶアーセナルの歴代ベストゴールでもある。

 ベルカンプは母国オランダで若くして名声を手に入れたものの、イタリアでは全く力を示せず「セリエA最大の無駄遣い」とまで酷評された。それでも、インテルを追われるようにしてたどり着いたアーセナルで転機が訪れる。「技術でゲームを支配する」ことをモットーとするヴェンゲルとの運命の出会い。唯一無二のテクニックを持つオランダ人は、“アーセナル流”の象徴的存在として一気に輝きを増していった。

 口数は少なく、決して愛想のいい選手ではなかった。「ノンフライング・ダッチマン」と呼ばれるほどの大の飛行機嫌いで、遠征時には一人別行動をとる変わり者だった。だが、ひとたびピッチに立てば、繊細なボールタッチと数々の美技でサポーターを魅了し続けた。それは希代のテクニシャンと“アーセナル流”との出会いが生んだ奇跡の時間だった。