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2014.03.14

“メッシ依存”からの脱却…バルセロナのチーム事情が生んだ改善の兆しとは

[ワールドサッカーキング2014年4月号掲載]

スコアラーとしてのリオネル・メッシの存在感が高まれば高まるほど、チーム内における“メッシ依存”の傾向は顕著となっていく。しかし、本人の負傷離脱が文字どおり“ケガの巧妙”となり、依存症には改善の兆しが見て取れる。
メッシ、A・サンチェス、ネイマール
文=北川紳也 Texit by Shinya KITAGAWA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

メッシの離脱を機にアタッカー陣が奮起

「この数シーズン、メッシはほぼすべてのゲームでプレーし、誰よりもゴールを量産してきた。近年のバルサが彼に依存してきたというのは正しい指摘だと思う」

 今シーズンの開幕前にセスク・ファブレガスがこう認めたように、リオネル・メッシへの依存度の高さはここ数年のバルセロナにとって解消すべき課題であった。特に昨シーズンのメッシは、リーガで19試合連続ゴールという前人未到の偉業を達成。過去数シーズン以上にメッシに頼る傾向が顕著だった。

 ところが、今シーズンはそうした問題に悩まされることがほとんどない。当の本人が開幕から3度も故障を繰り返し、昨年末には2カ月にわたって戦列を離れていたのだ。この間、新加入のネイマールがメッシに代わって“偽9番”の役割を担い、たびたび決定的な活躍を披露していた。昨シーズンはゴール数が物足りなかったアレクシス・サンチェスとペドロ・ロドリゲスもコンスタントにゴールを量産。そしてバルセロナ復帰3シーズン目となるセスクは、本職の中盤起用が増えたことで本来のダイナミズム溢れるプレーが復活、ゴールとアシストの両面でチームに貢献している。

 もちろん、チーム自体も国内外のコンペティションで3冠の可能性を残しているように、決して悪くない。

目に見えて減少したメッシの占有率

 チーム内の得点ランキングを見てみると、3月上旬時点でトップはA・サンチェスの16ゴール。それを1ゴール差でメッシが追い、ペドロは13ゴール、セスクは8ゴール、新加入のネイマールが7ゴールと続く。総得点に対するメッシの占有率はわずか20パーセント程度でしかなく、これはメッシが偽9番のポジションに定着した10-11シーズン以降では極端に低い数字だ。

 もちろん前述したように、今シーズンのメッシは長期離脱によって出場試合数自体が少ないから、このデータをもって完全に「依存症を克服した」と結論づけるのは時期尚早だ。だが、解決へ向かう兆候は確実に見られると言って差し支えないだろう。

 その兆候は、ヘラルド・マルティーノ監督のローテーション採用による各選手のメンタル面の変化、そしてメッシ自身のプレースタイルの変化とも結びつけられる。今シーズンからバルサの指揮を執るマルティーノは、徹底したローテーション制を敷き、たとえメッシであってもベンチに置くことをいとわない。このやり方は、各選手のコンディションを均等に管理するという狙いに加え、メッシを特別視しないことで、選手全員にチームの一員としての自覚を促す効果もある。

 そうした指揮官の意向に応えるように、前線の選手たちには昨シーズンまで見られたメッシに対する遠慮が少なくなり、よりダイレクトに相手ゴールへ向かうプレーが増えた。もちろん、メッシを意識はするが、その優先度が以前のように絶対的なものではなくなっているのだ。

自らがおとりに。メッシ自身の変化

 メッシ自身にも昨シーズンからの変化が見て取れる。今シーズンは彼自身がアシスト役として振る舞うようになってきたのだ。グアルディオラによる偽9番へのコンバート以降、メッシは超精密なゴールマシンと化し、数々の得点記録を塗り替えてきた。しかし一方で、フィニッシュへの意識が強いあまり、味方からのパスがこなければ苛立ちを隠さず、皮肉にもそれが依存性を高める一因となっていた。ところが、今シーズンは前半戦の度重なるケガの影響もあってか、1月の復帰以降は無理な態勢からゴールを狙うことを避け、自らをおとりに使ってアシストを重ねるシーンが目立っている。

 1月22日に行われたコパ・デル・レイ準々決勝ファーストレグのレバンテ戦では、バルセロナで自身初となる1試合3アシストをマークした。リーグ戦でのアシスト数は3月上旬時点で9アシスト。これはチームで2番目に多い数字である。

 シーズンの山場を迎えつつある今、例えばチャンピオンズリーグのような大舞台では当然メッシの力に頼る場面も増えるだろう。とはいえ、チームが最大の武器を生かそうとするのは、どのクラブにとっても当たり前のことだ。マルティーノ監督のブレのないマネジメントとメッシ自身のプレースタイルの微妙な変化によって、他の選手たちが躍動する。この事実こそ、バルサが“脱メッシ依存”へ向かっている確かな証拠と言えるのではないだろうか。

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