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好調の要因を語るローマのMFピアニッチ「団結力が強さの秘密」

2013.11.25

[ワールドサッカーキング1121号掲載]

驚異の開幕10連勝を達成し、ローマがセリエAの主役に躍り出た。その快進撃の中心にはミラレム・ピアニッチの姿がある。イタリアに渡って3年目、ついに本領を発揮し始めた天才は悲願のスクデット、そしてワールドカップの舞台を見据えている。
ピアニッチ
インタビュー・文=ピエロ・トーリ 翻訳=高山 港 写真=ゲッティ イメージズ

 ローマの勢いが止まらない。開幕から破竹の勢いで勝利を重ね、セリエA新記録となる開幕10連勝を達成。そして、この快進撃の立役者としてフランチェスコ・トッティとともにたびたび名前を挙げられるのが、23歳のMFミラレム・ピアニッチだ。

 2011年夏、ピアニッチの潜在能力を高く評価したローマは、彼の獲得に1100万ユーロ(約14億円)もの大金を費やした。しかしこの投資は、少なくともこの2年間は不毛なものだと思われていた。彼がローマでの2年間で記録したゴールはわずかに6。本人にとっても到底満足できない数字だ。

 しかし今シーズン、新監督ルディ・ガルシアの下でついにその才能が開花。ピアニッチの卓越したゲームメークはローマをリーグ首位に押し上げる原動力となっている。ボスニア・ヘルツェゴヴィナを初のワールドカップ(W杯)出場に導いて勢いに乗る若きMFは、早くもスクデットの獲得を視野に入れている。

ラツィオ戦を境に僕らは生まれ変わった

――君のサッカー人生において、今が最も輝いている時期だと言えるのでは?

ピアニッチ 確かに最高の時期を過ごしていると言えるね。結果を見ればそれは明らかだ。特にボスニア・ヘルツェゴヴィナ代表の一員としてブラジルW杯出場を決めたことは僕の人生で最高の瞬間になった。もちろん、ローマが快進撃を続けていることも素晴らしいよ。チームは開幕10連勝を飾ってリーグ記録を更新し、セリエAで首位に立っている。今のところはすべてが完璧に機能しているという感じだ。ローマが偉大なチームであること、大きな未来を感じさせるチームであることを示せたんじゃないかな。

――ローマに来て3年目になるけど、過去2年間は決して成功と言えるものではなかった。

ピアニッチ 残念ながら、そのとおりだね。この2年間、ローマは周囲の期待に応えるだけの成績を残すことができなかったし、僕自身も満足のいくパフォーマンスを見せることはできなかった。その挙句、昨シーズンはコッパイタリア決勝でラツィオに敗れた。最悪の瞬間だったよ。でも、ローマにとっての最悪の時期はあの敗戦を最後に幕を閉じた。あの日を境に僕らは生まれ変わったのさ。今の僕らは意欲に溢れている。今シーズンが最高の結果になるものと確信しているよ。

――ローマは短期間でブーイングを浴びるチームから称賛されるチームへと変貌を遂げた。要因を挙げるとしたら?

ピアニッチ 功労者を1人だけ挙げろと言われたら、迷うことなくガルシア監督の名前を挙げる。チームを取り巻く環境は長い間、緊張状態にあった。ローマのティフォージは常にチームに“最大限”を求めるから、それが選手にとって大きなプレッシャーになっていたんだ。でも、ガルシア監督はそんな環境を正常な状態に戻してくれた。チームの団結力を高めると同時に、個々の選手の再評価に努めてくれたんだ。彼のおかげでチームは大きく成長したよ。

――ガルシア監督は君の潜在能力も引き出してくれたようだ。

ピアニッチ 彼は選手を信頼するというシンプルな方法で僕の能力を引き出してくれた。選手にとって、監督の信頼を感じることはすごく重要なんだ。しかも、そう感じているのは僕だけじゃない。ガルシアは(フランチェスコ)トッティからプリマヴェーラ上がりの若手に至るまで、全員に信頼を寄せているんだ。

――ズデネク・ゼマンとの間にはこの種の信頼関係が存在しなかったと言うことかな?

ピアニッチ そうは言っていない。ただ、昨シーズンはピッチ内外で何かが機能していなかったことは確かだね。

――ガルシアは君に攻撃の構築を託している。君にとって理想的な役割だと言えるのでは?

ピアニッチ どのポジションでプレーしたいなんて言えないけど、今のポジションで心地良くプレーさせてもらっているのは確かだね。このポジションでは絶えずプレーに参加できるから、常にボールに触れていたい僕にとっては理想的かもしれない。機を見て攻撃に参加できること、ゴールを狙えるポジションでプレーすることは、僕にとって重要なことなんだ。

「最も美しい」のはヴェローナ戦のゴール

――ガルシアは戦術的にもローマに変化をもたらしたのでは?

ピアニッチ 4-3-3というシステム自体は昨シーズンもやっていたけど、その中身は全く別物だと思っている。これまでと比較して、より攻守のバランスを重視しているんだ。特にサイドバックの動きには明確な違いがある。ウチのサイドバックは(フェデリコ)バルザレッティにしてもマイコンにしても、積極的なオーバーラップを持ち味にしているけど、2人が同時に攻め上がってはいけないという約束事がある。1人が攻め上がったら、もう1人は必ず最終ラインに残って数的不利な状況を避けるよう気を配るんだ。昨シーズンはカウンターから何度となく失点したけど、今シーズンはそれがなくなった。チーム全体に守備の意識があるんだ。バランスが良いからこそ、ここまでわずか2失点という驚異的な数字を残せているんじゃないかな。

――確かにローマは変わった。でも、監督の力でだけでここまでチームが劇的に変わるとは思えないけど。

ピアニッチ 夏の移籍市場でクラブがいい仕事をしてくれたことも大きな要因だよ。素晴らしい選手たちが加わり、ローマは確実にレベルアップを果たした。チームが質、量ともに強化されたんだ。

――例えば、ケヴィン・ストロートマンの加入はローマの中盤に厚みをもたらしたよね。

ピアニッチ ストロートマンは偉大な選手だよ。彼が加わったことで、僕と(ダニエレ)デ・ロッシの3人で最高の中盤トリオができ上がった。今のMF陣はボールを持っている時も、ボールを持っていない時も、質、量の両面でいい動きができている。ストロートマンは僕と同じ23歳とまだ若いけど、MFに必要な資質をすべて持っているんだ。特に左足のボールコントロールは素晴らしいし、チームの利益を最優先するプレーヤーでもある。彼の加入でローマの中盤がレベルアップしたことは間違いないよ。

――アデム・リャイッチの加入も大きいのでは?

ピアニッチ リャイッチも僕らと同様に若い選手だけど、ポテンシャルの高さは群を抜いている。今の彼に必要なのは時間だろうね。辛抱強く待っていれば、近い将来、違いを生み出せる偉大な選手になると確信しているよ。今のローマは彼が更にレベルアップする上で理想的なチームだと思う。何度も言うけど、クラブは今夏の移籍市場で最高の仕事をした。ストロートマンやリャイッチ以外にも、素晴らしい仲間が加わったしね。

――それは誰のことかな?

ピアニッチ 全員だよ。例えば、メフディ・ベナティアの獲得は大ヒットだったよね。入団当時、彼の加入はほとんど話題に上がらなかったけど、シーズン開幕と同時にピッチ上で能力の高さを示した。守備面で言えば、モルガン・デ・サンクティスの加入も重要なポイントだった。昨シーズンの僕らはGKのミスで失点することも多かったからね。マイコンは素晴らしいテクニックと豊富な経験を持っているし、ジェルヴィーニョは得点を奪うこともできて、前線でしっかり守備もこなしてくれる。18歳のティン・イェドヴァイも近い将来、注目を集める選手になると確信している。要するに、今シーズンのローマには強力なメンバーがそろったということさ。

――偉大な監督がいて、トッティのようなカンピオーネがいて、更にチームには団結力がある。その中でも、君の存在感は際立っているね。

ピアニッチ 僕のパフォーマンスは別にして、チームの団結力は日に日に高まっている。団結力こそが今のローマの強さの秘密なんだ。僕はその中で自分の仕事をするだけさ。

――君はナポリとの大一番でドッピエッタ(2得点)を決めた。今シーズンの君は以前と比べて積極的にシュート打っているように見えるけど。

ピアニッチ 以前から積極的に打つように心掛けていたつもりだけど、これまでは結果が伴わなかった。イタリアに来てからの2年間で6ゴールは少ないよね。でも、今シーズンは既に3ゴールを挙げている。このままゴールを量産できればと思っているよ。

――これまでのキャリアの中で最も美しいゴールは?

ピアニッチ ボスニアをW杯出場に導いたいくつかのゴールは、僕にとって重要なものだった。ただ、「最も美しい」という意味では、やはり第2節のヴェローナ戦で決めたゴールを挙げないわけにはいかない。エリアの外から決めたループシュートさ。最高のキックで、最高のゴールを決めたという感じだった。試合後にはトッティからもお褒めの言葉をもらった。トッティに褒められるなんて、すごいことだよね。

好調を維持するチームに手応えを示したピアニッチが、W杯への初出場を決めたボスニア・ヘルツェゴヴィナ代表に言及。続きは、インタビューの続きは、ワールドサッカーキング1121号でチェック!

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