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林野 宏(株式会社クレディセゾン 社長)×澤 穂希(INAC神戸レオネッサ)「努力は決して裏切らない」

2013.09.26

2011年女子ワールドカップで世界の頂点に立ったなでしこジャパン。世界一が“夢”に過ぎなかった時代から、彼女たちのサポートを続けてきたのがクレジットカード業界のリーディングカンパニー、クレディセゾンだ。“努力”というキーワードの下、深い共感とリスペクトを抱く両者が語り合った。

インタビュー=岩本義弘 写真=山脇佳代 サムライサッカーキング10月号掲載(9月12日発売)

──クレディセゾンがサッカー日本代表のサポートを始めたのが2001年。11年にはなでしこジャパンのワールドカップ優勝という最高の形で結実していますが、改めてサポートに至った理由をお聞かせください。

林野 理由は2つあって、一つはビジネスとしての判断です。クレジットカードというものは、いずれ機能の差別化ができなくなると考えています。そうするとイメージが大切になってくる。国際的な競技人口やサポーターの数を見ても、サッカーはスポーツの王様です。つまり、サッカーをサポートしていくことが、カードのイメージアップにつながると考えたわけです。もう一つは、ある種の思い入れですね。個人的に「努力して勝つことに報いたい」という気持ちがありました。なでしこの皆さんのように努力して勝った人には最大限報いたい、という思いです。

──澤さんは代表で20年のキャリアをお持ちです。代表をサポートしている企業に対し、選手たちはどんな気持ちを抱いていますか?

澤 選手としては、たくさんの方々のサポートあっての自分たちだと思っています。特に今のなでしこの中では自分が年齢的にも一番上で、女子サッカーの苦しい時代も見てきたつもりですし、「現状が当たり前ではない」という思いが強くあるんです。遠征費も自費で、スパイクも自分で買う時代を経験してきましたから。多くのスポンサーがいなければ普通にサッカーをすることもできないですし、本当に感謝しています。

──なでしこはW杯優勝という結果によって、環境面含め女子サッカー全体を変えましたよね。

澤 環境も良くなりましたし、たくさんの方々に注目されるようになりました。選手それぞれプレッシャーはあるかもしれませんが、見られている分、自分たちの責任感なども強くなりました。

林野 宏(りんの・ひろし) 1942年、京都府生まれ。65年に西武百貨店に入社、82年に西武クレジット(現クレディセゾン)に転籍。他社にさきがけ数々のサービスを発案し、“業界のパイオニア”と称されるに至る。2000年の社長就任後、01年よりサッカー日本代表サポーティングカンパニーに。浦和育ちで、「小学校の時から、毎朝サッカーをやっていましたよ」と明かす。

──林野さん、あの勝利はサポートする立場の人にとっても大きかったのではないですか?

林野 「こんなことがこの世で起こるんだ」と思いましたよ。やはり「あきらめてはいけない」ということ。その姿勢がどれだけ日本に勇気を与えたか。企業も「勝ちに行く」という点ではサッカーと同じですから、私自身も勇気をもらいました。企業の本質は競争です。競争だから勝たなければいけません。現在のようにマーケットが低成長だとパイの取り合いになりますから、そこで勝ち続けることの難しさは私たちも同じです。

──林野さんは著作で「努力すればツキが回ってくる」という指摘をされていますが、これは結果を残した選手もよく口にする言葉です。サッカーとビジネスの共通点と言えるでしょうか?

林野 そう思います。以前、『運とツキの法則』という本にそのことを書きました。こんなタイトルだと、「何もしなくても読むだけで運が良くなる本」と思うかもしれませんが、そんな話ではありません。誰にでも平等にチャンスは来るけど、それをつかめるかどうかは日頃から努力している人や組織次第であって、努力していなければチャンスが来たこと自体分からないんだよ、という話です。

澤 それはすごく感じます。多くの人は目の前の結果を求めたがりますが、結果はすぐには出ないんです。何年、何十年かかってもあきらめずに努力を続けることが大切で、自分自身、18年目でやっと夢が叶いましたから。努力は裏切らないですし、誰にでも絶対にチャンスはあるので、それをものにできるかは自分次第だと思います。

澤 穂希(さわ・ほまれ) 1978年、東京都生まれ。2011年の女子ワールドカップでは日本代表キャプテンとしてチームを世界制覇に導き、得点王とMVPに輝く。12年にはロンドン五輪で銀メダルを獲得、同年アジア人初となるFIFA最優秀選手賞に選出された。15歳で代表に初選出されて以来、20年にわたり日の丸を背負い続ける日本サッカー界の“顔”である。

──なでしこと澤さんの今後について、林野さんはどんな期待を持たれていますか?

林野 なでしこには、やはり勝つチームを作ってもらいたいですね。過程よりも結果が最大の目的であるし、澤さんにはそれを若い人たちに教えていってほしい。澤さんほどの努力をした人はいないと思います。「厳しい努力の先にしか勝利はない」ということを、身を持って伝えてほしいですね。

──激しく温かい檄を受けて、澤さんはいかがですか?

澤 本当に結果がすべてだと思います。サッカーは一人だけでは勝てないし、11人だけでも勝てない。チーム一丸となり一つの目標に向かってやらないと勝てないんですよね。奥深いですが、すごく楽しいスポーツでもあるので、やっている以上は目標を高く設定してやりたいなと思います。

林野 せっかく一度、世界一を取ったんだから。一度だけだともったいないよね。

澤 だからその後の五輪は欲が出ちゃいました。W杯はアメリカが圧倒していたけど自分たちが勝って、五輪は自分たちが試合を支配していたのに勝てなかった。内容が良くても結果が残らなければ結局は負けです……でも、銀メダルだってすごいんですよ(笑)。

林野 いやもちろん、五輪の銀メダルだってすごいことですよ。

──林野さんは以前、なでしこが優勝するたびに褒賞金を用意すると発言されていましたね。

林野 努力して勝った人には報いたい、と言ったでしょう? もちろん実行しますよ(笑)。

澤 それは選手たちもモチベーションが上がりますよ(笑)。もう一度欲を出して、勝利を目指していきたいと思います。

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