FOLLOW US

ギャンブルに女遊び、逮捕歴まで…ハッセルバインクがファンの質問に本音で答える

2013.07.23

[ワールドサッカーキング0801号掲載]

リーズ時代のオレアリー監督を許せる? ギャンブルで大金を失ったって本当? なぜいつもダウニングに怒鳴っていたの? プレミアリーグで2度の得点王に輝いたレジェンドが、ファンの質問に答える。
ハッセルバインク
インタビュー・文=クレール・ブルームフィールド Interview by Claire BlOOMFIELD
写真=スチュアート・ウッド、ゲッティ イメージズ Photo by Stuart WOOD, Getty Images

 ジミー・フロイト・ハッセルバインクが最後にプレーしてから――2008年のFAカップ決勝だ――もう5年が経った。しかし、ふざけながら壁に向かってボールを蹴っているその姿は、すぐ近くで待機している我々に恐怖を与えるに十分なものだった。彼が蹴ったボールは壁に当たると、パーンと強烈な音を響かせた。ジャージの下には、並外れて発達した太ももが一目で確認できる。何と言っても、彼はかつてシュート速度のプレミアリーグ記録を持っていたストライカーなのだ。

 ありがたいことに、高価なカメラ機材を抱えた撮影スタッフが到着し、我々は危険を脱することができた。彼はボールを拾い上げ、快活に笑う。その明るい笑顔は、読者からの質問に答えている間も続いた。ピッチ上でそんな表情を見せたことはないように記憶しているが……。

「そうだね。私はピッチに一歩でも入ったら、常に自分の限界を超えようとしていた」と彼は言う。しかし、本来の彼は無愛想でも怒りっぽくもなく、むしろ真逆の性格だ。答えにくい質問もあったはずだが、ハッセルバインクは魅力的な笑顔を見せながら、ユーモアに溢れた答えを返してくれた。

私は本当にダメなプレーヤーだった

――あなたの本名は「ジェレル」らしいですね。なぜ「ジミー・フロイト」と呼ばれているんですか? アントン・ウェスト(Eメール)

ハッセルバインク 「フロイト」は本名だよ。だけど「ジミー」は1995年、オランダからポルトガルに移籍した時についたニックネームだ。カンポマイオレンセというクラブでプレーしてたんだけど、そこの会長が私を「ジミー」と呼び始めてね。それが登録名になったんだ。

――君の幼少期はかなり波瀾万丈だったと想像しているんだけど、実際はどうだった? ジョー・バック(ノリッチ)

ハッセルバインク 私はスリナムで生まれ、5歳の時に母と一緒にオランダにやってきた。育った環境が恵まれていたとは言えないね。だけど、私はその生活から多くのことを学んだ。貴重な経験だったよ。

――フットボールが少年時代を救ってくれた、と言える? レオ・ヒューソン(Eメール)

ハッセルバインク 間違いない。少年時代には夢中になれる何かが必要なものだし、私にとってはグラウンドが情熱を解放してくれる場所だったよ。フットボールが私の人生を正しい方向に導いてくれたんだ。その道を選んだ私は幸せ者さ。

――あなたはオランダ時代、いくつかのトラブルで逮捕されたそうですね。「パブリック・エナミー」のチケットを盗んで捕まったとか……本当の話でしょうか? ミヒャエル・シュナイダー(タンワース)

ハッセルバインク 懐かしいね(笑)。捕まったのは本当さ。私は若くて、愚かで、いつも良くない連中とつるんでいた。記憶が定かじゃないが、その夜は「パブリック・エナミー」のライブを見た気がするな。どうやって会場に入ったのかは覚えてないけどね(笑)。

――あなたは10代でプロデビューしたのに、20代前半でAZを解雇されてアマチュアクラブでプレーした。もう一度トップレベルに戻れるという自信を失わなかったの? ジェーン・コリンズ(ミシガン)

ハッセルバインク 私は本当にダメなプレーヤーだった。才能がなかったとは思わないけど、向上心がなかったんだね。トレーニングにも全力で取り組んでいなかった。でも、「全力で練習すれば、もう一度、フットボーラーとして生きていける」と信じていた。アマチュアクラブでやり直す機会をもらえたんだから、私はむしろラッキーだったんだ。

――アマチュアクラブでプレーしていた頃、フットボールをやめようとは思わなかった? もしやめていたら、今頃は何をしていた? ジョージ・シモンズ(エセックス)

ハッセルバインク 何度もくじけそうになったよ。そんな時はぐっすり寝て、それから鏡を見て自分に聞くんだ。「お前は何がしたいんだ?」ってね。答えはフットボール、それしかなかった。誰だって落ち込む時はあるし、何もかもうまくはいかない。だけど、人間はそういう時に何ができるかで決まるんだ。フットボールをやめていたら? どうだろうな……私が当時つるんでいた連中がどんなだったかを考えると、そっちの人生はあまり想像したくないね(笑)。

――95年にポルトガルのクラブに移籍した時、適応するのは大変だったのでは? トレヴ・ムーア(Facebook)

ハッセルバインク そう、大変だった。ポルトガルに行ったのは23歳の時で、当時の私はまだ実家を出たこともなかった。それがいきなり外国で暮らすことになったんだから! でも、私は言葉を覚え、友達を作り、練習に打ち込み、やがて自立した人間になった。ポルトガルは今でも大好きだよ。フットボールも、食事も、人々も大好きだ。

エイドゥルは親友だったんだ

――あなたは強かった頃のリーズの一員でした。当時、リーズを成功に導いたキーマンは誰だったと思いますか? エイミー・ロブソン(マンチェスター)

ハッセルバインク 私、と言いたいところだけど(笑)、実際はハリー・キューウェルやロド・ウォレス、アラン・スミス、リー・ボウヤー……みんながキープレーヤーだった。エネルギッシュなプレーヤーが大勢いて、とんでもないリズムでプレーしていた。ほとんどの対戦相手は、私たちのスピードに対処できていなかったね。

――リーズで2シーズンを過ごした後、君は契約延長を拒否してアトレティコ・マドリーに移籍した。クラブに1000万ポンド(約15億円)の利益をもたらしたのに、ファンに裏切り者と呼ばれるのはつらかった? キム・スミス(ハロゲート)

ハッセルバインク リーズのファンは素晴らしかったよ……私がチームを去るまではね(笑)。確かに移籍する時は騒がれたけど、それは仕方ないことさ。あのクラブには最高の思い出がたくさんある。当時のジョージ・グレアム監督の下で、私たちはがっちりと団結したグループを作り上げていた。忘れ難いクラブだよ。

――デイヴィッド・オレアリー元監督がリーズ時代を振り返った本の中で、君は「全力でプレーしていなかった」と書かれている。87試合で42ゴールも決めたのに! オレアリ―は間違っているよね? ドン・ルイス(Facebook)

ハッセルバインク 気にしないよ(笑)。彼とは今でも時々会うしね。彼は私を売った監督だから、その理由をファンに説明する必要があったんだろう。だけど、真実は逆さ。私は怠惰なプレーヤーだから売られたんじゃなくて、全力でプレーしていたからアトレティコとの契約を勝ち取れたんだよ。

――君が26歳までオランダ代表に呼ばれなかったなんて信じられない。フース・ヒディンク監督から初招集を受けた時のことを覚えている? ヘンリー・コルビー(Eメール)

ハッセルバインク リーズ時代、コヴェントリー戦でヒディンクがスタンドにいた。その試合で2ゴールを決めたら、98年のワールドカップ(W杯)に向けたメンバー候補30人の中に選ばれたんだ。だけど、それでも自分が23人の最終メンバーに残れるなんて少しも思っていなくて、合宿が終わったら家に帰るつもりだった。そんな私がW杯に出ることになったんだよ! 人生であんなに喜んだことはない(笑)。一度も代表に呼ばれたことがなかったのに、いきなりW杯だからね。どうやら、ヒディンクは代表未経験の、全く新しいプレーヤーを入れたがっていたらしいんだ。それまで代表に呼ばれていなくて良かったよ(笑)。

――アトレティコからチェルシーに移籍した時、あなたとエイドゥル・グジョンセンはプレミア最高のコンビと呼ばれました。2人はどうしてあんなに息の合ったプレーができたんですか? 現役時代を振り返って、最高のパートナーはやはりグジョンセン? ロブ・スティーヴンズ(オックスフォード)

ハッセルバインク 間違いない。彼は私の一番好きなパートナーだった。エイドゥルはオランダ語が上手で、楽しいヤツで、ピッチ外でも親友だったんだ。良いパートナーの条件は、ともに相手の成功を望んでいるってことさ。私と彼は弱点を補い合って、お互いにゴールを奪い、アシストし合った。アシストは彼のほうが上手だったけどね!

――あなたはチェルシー時代、グジョンセンと一緒にギャンブルに熱中していたそうですね。グジョンセンは一晩で40万ポンド(約6000万円)、あなたは100万ポンド(約1億5000万円)も負けたことがあるって本当ですか? ヤコブ・フォード(シンガポール)

ハッセルバインク 誰がそんなこと言ったんだ?(笑) 確かに私たちはギャンブルを楽しんだけど、自分を見失うほどのめり込んだことはない。当時の私は独身で、カジノに行ったり、女遊びしたり……適度に息抜きしていただけさ。まあ、独身だったんだからいいじゃないか!

チェルシー退団後は、ミドルスブラやカーディフでプレー。当時のビッグゲームや、現役時代のベストゴールを振り返る。また、自身の指導者キャリアについても言及。ファン参加型インタビューの続きは、ワールドサッカーキング0801号でチェック!

SHARE

RANKING今、読まれている記事

  • Daily

  • Weekly

  • Monthly

SOCCERKING VIDEO