2013.07.18

グアルディオラは“3冠王者”をどう変えるのか…トレーニングから改革を読み解く

[ワールドサッカーキング0801号掲載]

ジョゼップ・グアルディオラ新監督を迎えたバイエルンは、6月26日の初練習を皮切りに、イアリアでのキャンプ、練習試合と新シーズンの準備を精力的に進めている。そのトレーニング内容から、グアルディオラが着手した“バイエルン改革”を読み解く。
グアルディオラ
文=マルテイン・グリューナー Text by Martin GRUENER / KICKER
翻訳=阿部 浩 アレクサンダー Translation by Alexander Hiroshi ABE
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

新体制の始動は順調そのもの

「今すぐすべてを変えることなどできないし、変える必要もない」

 バイエルンのSDを務めるマティアス・ザマーは群がる記者に向かって何度もこう語った。ジョゼップ・グアルディオラ新監督が就任して以来、クラブの周辺が大騒ぎになっている中で、彼は性急な改革を期待する論調に釘を刺したのだ。DFB(ドイツサッカー連盟)でユース育成の最高責任者を務めていた時、「グアルディオラのバルセロナはフットボールの理想形だ」と公言していたあのザマーが、である。彼がそこまでして新指揮官へのプレッシャーを取り除こうとしているのは、裏を返せば、新シーズンのバイエルンにそれだけの注目と期待が集まっているということでもある。

 そんな中でスタートしたグアルディオラの新体制は、ここまでは順調そのものだ。就任会見では、ニューヨーク滞在中に「何かに取りつかれたように」猛勉強していたドイツ語の成果を披露し、バルサの成功を引き合いに出す記者の問いかけに、「バルサとバイエルンを比べて何かを語るつもりはない」と(もちろんドイツ語で)述べた。これには、バイエルンの選手も胸をなで下ろしたことだろう。いかに彼らがドイツ屈指のプレーヤーだとしても、リオネル・メッシやチャビ、アンドレス・イニエスタとの比較は荷が重すぎる。

 グアルディオラはまず、選手全員と個別に話し合いの場を持ち、選手の考えをヒアリングすることから始めた。対話はキャプテンのフィリップ・ラームに始まり、まだ19歳のエムレ・ツァンに至るまで、全員に公平に時間を割いたというから、いかにもグアルディオラらしい。就任前に指摘された「ドイツ語が話せないことによるコミュニケーション不足」という課題を、彼は早々にクリアしてしまったことになる。

守備強化から始めたグアルディオラ

 グアルディオラは就任に当たって、バルサから2人のスタッフを連れてきた。アシスタントコーチのドメネク・トレントと、ビデオ撮影・分析を担当するカルラス・プランシャルト。2007年からバルサで仕事を続けてきた仲間とともに、グアルディオラはバイエルンのチーム改革に着手した。

 既に始動したキャンプや練習試合の内容を見る限り、新指揮官のメニューは非常に独特なものだ。トレーニングの模様をビデオで撮影しながら指導を行い、何度も動きを中断しては映像をチェックする。そして「このプレーは効果的だ」、「この動きは問題だ」などとその場で細かく指摘しながら、問題を解決するためのメニューを柔軟に変えていくのだ。バルサでは当たり前の方法なのかもしれないが、少なくとも私は、ドイツでこんなトレーニングをしているクラブを見たことはない。

 特に集中的に行っていたのは、小さく区切られたピッチでの守備練習だった。相手を囲い込み、パスコースを消して確実にボールを奪うプレスの方法論はバルサに近い。特に最終ラインの前方にスペースを与えないように、DFとMF全員を連動させるポジショニングについては、細かく、繰り返し実行されていた。昨シーズンのバイエルンは敗戦がわずか1、失点は18。どちらもリーグ記録を塗り替えたのに、グアルディオラはバルサに就任した時と同様、極めて慎重に、守備の強化から始めた。これは、彼がバイエルンの「改革」を一つずつ、手を抜かずに進めていこうと考えている証拠ではないだろうか。

下部リーグのアマチュアクラブとの練習試合で、グアルディオラが試した2つの新システムとは? 続きは、ワールドサッカーキング0801号でチェック!