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失意のシーズンを振り返るカカー「満足なんてできるわけがない」

2013.06.21

[ワールドサッカーキング0704号掲載]

ビッグタイトルを逃したレアル・マドリーとともに、カカーは“失意のシーズン”を過ごした。「ここで戦えることを、もう一度、証明したい」という偽らざる本音の言葉に、彼の決意が凝縮されている。
カカー
インタビュー・文=ホセ・フェリックス・ディアス Interview and text by Jose Felix Diaz
翻訳=高山 港 Translation by Minato TAKAYAMA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

 優等生の彼には似合わない、幾分の“毒”を含んだ言葉。そのフレーズからも、2012-13シーズンがカカーにとって、いかに不本意なものであったかが伝わってくる。「これで満足なんてできるわけがない」

 公式戦27試合の出場、レアル・マドリー加入後で最少となるリーグ戦3得点で終えたシーズンを、彼はそう振り返る。

 確執もうわさされたジョゼ・モウリーニョ前監督との関係、コンフェデレーションズカップのメンバーから落選したブラジル代表への思い、ささやかれる母国復帰の可能性について、カカーは取り繕うことなく“本音”の言葉をつむぐ。

 すべては自らの存在意義を再び証明するために。カカーの挑戦は、まだ終わらない。

ベンチで味わう敗北は本当に空しいもの

――早速だけど、まずは今シーズンを振り返ってもらえるかな?

カカー 本来なら、最高のシーズンになるはずだった。でも、リーガ序盤戦での戦いですべてが終わってしまった。そういう感じのシーズンだった。スタートの出遅れが最後まで響いてしまったからね。序盤戦でバルサに8ポイントもの大差を付けられるとは思わなかった。「たられば」の話をするのはこの世界では御法度だけど、もしスタートダッシュに成功していれば……あの段階で、どうしようもなくなってしまったと言えるね。リーガでバルサを上回るためには、好スタートを切ることがすごく重要になる。今シーズンのマドリーはそれができなかった。結果としては、それがすべてさ。

――コパ・デル・レイも決勝でアトレティコ・マドリーに敗れてしまったね。

カカー そうだね、僕らにとっては落胆の結果に終わった。決勝がサンティアゴ・ベルナベウでの開催ということもあったから、好結果を期待していたんだけどね。結局、12-13シーズン、レアル・マドリーはスペイン・スーパーカップのタイトルを一つ取るだけで終わってしまった。マドリーのような名門にとっては、とても満足のいくものではないね。

――大失敗のシーズンだったと言えるのかな?

カカー 「大失敗」というのはさすがに言いすぎだよ。僕らはコパ・デル・レイの決勝に進出したし、チャンピオンズリーグ(CL)では準決勝まで勝ち進んだ。この結果は「それなりの評価」と呼べるものだと思う。ただし、問題はリーガだ。僕らはリーガでの戦いで、本来の力の半分も出し切れなかった。本当に残念に思っているよ。

――君自身の出来についてはどう評価している?

カカー もちろん、落胆している。そもそも、プレーする機会自体が少なかったからね。これで満足なんてできるわけがない。もっとプレーしたかったし、もっといいプレーがしたかった。重要な試合では、ほとんど出番をもらえなかった。これは選手にとって一番つらいことだ。何らかの形でチームの勝利に貢献したいと願っていたんだけどね。コンディションはとても良かったんだ。90分間フルにプレーできるだけのコンディションにあった。ただし、監督が決めることは絶対だからね。ベンチという場所が監督の指示であれば、選手はそれを受け入れなくてはならない。チームスポーツとはそういうものさ。

――先ほど話が出たA・マドリーとのコパ・デル・レイ決勝について、もう少し詳しく振り返ってもらえるかな?

カカー 内容としては、とてもいいゲームだったと思う。ただ、だからこそ同時に、大きな落胆を味わった。あの日は“マドリディスモの祭典”になるはずだった。僕ら選手も、サポーターも、みんなが“フェスタ”を予定していたんだ。ベルナベウでの決勝、熱狂的なサポーターの声援を受けての試合……誰もがマドリーの勝利を予想していたはずさ。僕らはアトレティコとの相性も良かったしね。

――確かに、R・マドリーは14年間、A・マドリーに負けていなかった。

カカー  14年ぶりの敗戦が、よりによって、コパ・デル・レイの決勝で起こるなんてね。本当に信じられないよ。

――「勝たなくてはならない」という気持ちが強すぎたのだろうか? あるいは油断?

カカー 勝負を軽んじていたつもりはない。でも、サッカーの世界では、時として予期せぬことが起こるものなんだ。僕らは明らかにゲームを支配していた。ゴールチャンスもたくさんあった。ただ、マドリーのシュートがアトレティコのゴールネットを2度揺らすことはなかった。シュートがポストに弾かれるシーンもあったし、ツキにも見放されていたのかな。特に同点で迎えた後半の45分間、マドリーはとても素晴らしいサッカーを展開した。でも、90分間でゲームを決めることはできなかった。そして、延長でゴールを奪われてタイトルを失ったのさ。

――チームとして、必要以上のプレッシャーを感じていたのかな?

カカー かなりのプレッシャーを感じていたことは否定しない。でも、プロにとってノープレッシャーのゲームなんて存在しないし、プレッシャーはサッカーにつきものだ。それを克服しなければ、勝利を手にすることはできない。アトレティコは敵地でプレーするという重圧を克服した。一方、マドリーは“すべきこと”ができなかった。敗因は自分たちにあるということさ。あの敗戦を僕はベンチで見守るしかなかった。ベンチで味わう決勝での敗北は、本当に空しいものだったよ。

ジョゼの決断について何も言う必要がない

――ジョゼ・モウリーニョがマドリッドを去るという決断を下したけど、この件については?

カカー 僕ら選手は常にジョゼとともにあった。マドリーを去るというのは、あくまで彼自身の決断だ。ジョゼは勝利を義務づけられた指揮官でもある。そんな彼にとって、今シーズンは不本意なものだっただろう。彼の決断も、ある意味、当然のことなのかもしれない。

――メンバーの間に驚きはあったのかな?

カカー 驚きよりも、ジョゼの新天地での成功を願う気持ちのほうが大きい。彼は、彼自身にとってもクラブにとっても“ベストの道”を選択したんじゃないかな。チェルシーはジョゼの力でビッグクラブの仲間入りを果たしたチームだ。彼にとってもやりやすい環境だと思う。

――彼はR・マドリーで指揮官としての能力をフルに発揮したと言えるのかな?

カカー  ジョゼはマドリーにリーガ優勝とコパ・デル・レイのタイトルをもたらしてくれた。ただ、クラブにとって最大の目標であるCL優勝を成し遂げることはできなかった。彼の本来の力からすれば、不満の残る結果だったと言えるかもしれないね。

――モウリーニョ退団を悲しむ選手も多いのではないかな?

カカー 僕らは彼の決断を受け入れるしかない。一つ言えるのは、ジョゼと(フロレンティーノ)ペレス会長が話し合い、マドリーにとって最良の決断を下したということ。結果、名監督がマドリッドを去ったということさ。

――正直に答えてほしい。君はモウリーニョの采配に不満を抱いていたのではないかな?

カカー ジョゼとはいろいろな時期を過ごした。いい時期もあったし、あまり良くない時期もあった。今シーズンは、あまり出番をもらえなかったけど、もっとチャンスをもらえれば、チームの勝利に貢献できたという思いはある。ただ、ジョゼの決断について僕は何もコメントできないし、何も言う必要がないと思っている。彼の話はこれくらいで終わりにしようよ。

失意のシーズンを送ったカカーだが、「この地でやり残したことがある」と語り、来シーズンの活躍を誓った。カカーのインタビューの続きはワールドサッカーキング0704号でチェック!

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