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主力選手流出も巻き返しに成功、アッレグリはミラン復権に自信

2013.04.22

during the Serie A match between Atalanta BC and AC Milan at Stadio Atleti Azzurri d'Italia on January 27, 2013 in Bergamo, Italy.

[ワールドサッカーキング0502号掲載]
選手時代「ごく平凡なMF」だった男は今、イタリアを代表する名門クラブを率いている。プロヴィンチャの監督からミランの指揮官へと“出世”を果たし、チームの改革を推し進める「平凡ではない指揮官」アッレグリの言葉に迫る。
アッレグリ
インタビュー=サイモン・スネンティ Interview by Simone STENTI
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

ミラン、セリエAの将来はとても明るい

あなたはスクデットを獲得し、“パンキーナ・ドーロ”(セリエAの年間最優秀監督に与えられる“金のベンチ賞”)も2回手に入れています。にもかかわらず、シルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長と今でも議論を戦わせなくてはならない。不満はありませんか?

アッレグリ(以下A)――彼とはいつも戦術や選手に関する話をしている。ベルルスコーニは25年間、カルチョに携わっている。いわば、サッカーのエキスパートだ。彼は様々なアドバイスをくれる。決して命令ではないし(笑)、もちろん不満もない。

あなたとベルルスコーニは2011年にアンドレア・ピルロの放出に関して意見の一致を見ていたようですね。実際のところは、どうだったのですか?

A――実際のところ? 何も隠すことなどないよ。10-11シーズン、アンドレアは何度かケガをして戦列を離れた。シーズン終了後、ミランは30歳以上の選手全員に1年間の契約延長オファーを出した。だが、アンドレアは複数年契約を望んでいた。そんな中、ユヴェントスが3年契約のオファーを提示し、最終的にアンドレアはユヴェントスを選択した。それだけのことだ。

今のミランには、ピルロに代わってマリオ・バロテッリがいますね。

A――マリオが欲しい、私の中でその思いは常にあった。彼がイングランドでプレーしている間も、ミランの首脳陣は何度となく彼とコンタクトを取ったが、マリオを獲得するというオペレーションは非常に困難なものだった。少なくとも、冬のマーケットの最終日を迎えるまで、それは不可能なミッションだと思われていた。だが、土壇場で状況が変わり、ミランはマリオの獲得に成功した。ミランへの加入は、マリオにとっても最高のチャンスになるはずだ。インテルや(マンチェスター)シティーでプレーしていた時、マリオは有能な選手の一人に過ぎなかった。しかし、今のマリオはミランで特別な選手になっている。

確かに、彼はミランのスターになりました。しかし、今のミランは経済的な理由もあり、若手に頼らざるを得ない状況とも言えますよね?

A――ミランの未来が暗いなんて話を始めるつもりじゃないだろうね(笑)。昨夏、我々はズラタン・イブラヒモヴィッチとチアーゴ・シウヴァを放出した。しかし今は、マリオに加え、将来を嘱望される若きタレントを2人も発掘した。ステファン・エル・シャーラウィとマッティア・デ・シーリオだ。ミラン、更に言えば、セリエAの将来はとても明るいと私は見ているよ。

今、名前を挙げた3名はイタリア代表の新戦力としても期待を集めています。代表監督への興味はありますか?

A――すべての監督にとって、代表監督は、ある意味、“究極の目標”だと思う。もちろん、私もいつの日かアッズーリの指揮を執ってみたい。

海外への興味はどうですか?

A――もちろん、興味はある。幸いなことに、私はミランでイタリア最高峰のチームの監督を経験している。当然、海外であっても、そのリーグのトップのチームで指揮を執りたいと思う。

では、テレビの前のソファでくつろいでいると仮定してください。間もなく、プレミアリーグとリーガ・エスパニョーラの中継が始まります。どちらの試合を選びますか?

A――レオナルドは常々、「誰もリーグ・アンに注目してくれない」と言っているが、彼の言葉は正しいようだね(笑)。まあそれはさておき、私は恐らく、プレミアリーグの試合を見るだろう。プレミアの試合は常に満員だし、監督のマナーや、選手たちのレフェリーへの敬意を、私はとても好ましく感じている。イングランドでは、レフェリーが勝敗の行方を左右するなど誰も考えていない。例えば、オールドトラッフォードでのチャンピオンズリーグ(以下CL)、(マンチェスター)ユナイテッド対レアル・マドリー戦でナーニが一発退場となったが、もし、あのレッドカードがイタリアのチームの選手に出されていたとしたら、イタリア人はもはやゲームそのものを論ずることすらなくなるだろう。クネイト・カキル主審に関する論争ですべてが終わるはずだ。

20歳のプレーヤーの気持ちを理解できる

ここからはあなたのキャリアについて聞かせてください。これまでに「悪夢」と呼べるようなゲームを経験したことはありますか?

A―― 昨シーズン、私はCL決勝に進出することを確信していた。そんな時、私にとって最悪の事態が生じた。今から1年前の3月31日、カターニアでの一戦だ。その時点で、ミランはセリエAの首位に立ち、バルセロナとのCL準々決勝ファーストレグを0-0で終えていた。しかし、我々はカターニア戦で勝ち点3を取り損ねた。ユヴェントスは「ミランがスクデット争いから後退した」と考えたはずだ。更にその3日後、我々はカンプ・ノウでバルセロナに1-3で敗れ、CLからの敗退が決定した。カターニアでのドローがすべてを台無しにした。我々はあのドローでスクデットとビッグイヤーを同時に失ったようなものだ。極端かもしれないが、そこにサッカーの難しさがある。

確かに、振り返ってみると、カターニア戦のドローがターニングポイントになりましたね。ところで、あなたは選手としての経験も豊富ですが、現役時代に憧れていた選手はいますか?

A――子供の頃はユヴェントスのファンだった。憧れたのは、もちろんミシェル・プラティニだ。プラティニはテクニックとインテリジェンスを兼ね備えたプレーヤーだった。そこが、ディエゴ・マラドーナとの違いだったと私は思っている。マラドーナはサッカー選手としての“とびきりの資質”を持って生まれてきた天才だが、インテリジェンスという点ではどうかな? あくまで個人的な意見だが、彼らの違いは引退後の2人を見れば明らかだと思うけどね。

では、名手に憧れる後輩たち、若きアッレグリたちにアドバイスを送るとしたらどんなことですか?

A――若きアッレグリたちへのアドバイスか、なるほど、いい質問だね(笑)。何より大切なのは、自己犠牲の精神だ。現役時代、私は若きアッレグリをたくさん見てきた。監督となった今でも、私の下には野心に溢れる若きアッレグリがいる。私はごく平凡なMFだったが、幸いなことに、あの頃の自分があるから、今も20歳のプレーヤーの気持ちを理解することができるんだ。

もし今、あなたが20歳だったら、エル・シャーラウィやバロテッリのような奇抜なヘアスタイルにしますか?

A――答えはノーだ。モヒカンヘアなど絶対にあり得ない。私が毎日のように、彼らに「髪を切れ」と言っているなんて、君は信じてくれないだろう。だが、私は毎日、彼らに言い続けているんだ。「その“トサカ”を切れ」とね(笑)。しかし残念なことに、彼らはまだ若い。ゆえに私の考えが理解できないでいるんだ。まあ、いずれ分かってもらえる日が来るだろう。前言を覆すようで申し訳ないが、そういう意味では、私の若手への理解度も「まだまだ」と言えるのかもしれないね(笑)。

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