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GAKU-MC「ヨルダンで僕はフットボールの新しい魅力に気付くことが出来たんだ」

2013.05.28

3月26日、日本は敵地でヨルダンに敗れ、FIFAワールドカップ2014 ブラジル大会の出場決定を逃した。当日、サッカーフリークとして知られるラッパー、GAKU-MCが現地で試合を観戦。ワールドカップ出場という歴史の瞬間に立ち会うことは出来なかったが、改めてサッカーの魅力に気づくことが出来たという。音楽とフットボールを融合し、人と人を繋ぐ場所として「MIFA」(Music Interact Football for All)を立ち上げ、今年、自身の音楽活動と平行し僚友の桜井和寿(Mr.Children)と「UKASUKA-G」を結成し、フットボールをテーマした楽曲を発表。自らのフィールドを巧みに使い日本サッカーの発展、普及啓蒙のために尽力するGAKU-MCの言葉で、改めてアウェーのヨルダン戦を振り返る。

GAKU-MC

 僕らはそれで繋がれる。

 ヨルダンに行ってました。

 歴史の一ページ。その扉が開く瞬間を今度こそ体現する為に。

 最終予選突破は、日本フットボール界としてはもしかしたら最大のイベントかもしれません(本戦で優勝は実際あと半世紀位はかかるだろうなあ。生きてる間にあるといいなあ)。未来を感じながら、最高の結果をみんなで喜ぶあの瞬間。僕はそれが大好きなのです。

 2010南アフリカ大会出場を決めたウズベキスタン戦の岡崎選手のゴールには胸が躍った。2006ドイツ大会へと僕らを連れて行ってくれたのは柳沢選手と大黒選手の2トップ。北朝鮮相手にスカッとする勝利。気持ちよかった。初めてのワールドカップ出場決定の瞬間。98フランス大会。岡野選手のVゴール(懐かしい)はレコーディングスタジオで作業の手を止めて見ていた。仕事なんかしている場合じゃなかったし、決まった瞬間はサッカーを愛する者として、新しい扉が開いたことを本当に喜んだ。

 勝利のその瞬間、そこにいたい。歴史が動くその場所で選手やスタッフ、そして同じ気持ちをもった多くのサポーターと歓喜を分かち合いたい。サッカーを愛する者として、テレビではなく、現場にいくことをだから僕は決めた。

 ヨルダン。遠かったなあ。いろいろな場所を、音楽やフットボールを目的として旅してきたけれど、その経験の中でも1.2.を争う遠さ。距離もそうだけれど、”なじみ”という点に置いて遠かった。未知の大陸。未知の人。宗教的背景。その全てに馴染みがなく、言い換えれば、

「申し訳ないが興味のなかった国」

 その一つがまさに中東の小国、ヨルダン。

 2013年3月26日 ヨルダンVS日本代表。

 結果はご存知の通り、負け。惜敗。2-1。

 アウェーの戦いの難しさが現れた厳しい内容。日本から駆けつけた多くのサポーター同様、僕も悔しくって悔しくってたまらなかった。ワールドカップ世界最速出場を記念して配られたおめでとうTシャツは僕のバッグの中で、出番のなかったサブみたいに意気消沈していた。

 勝利に沸くヨルダンの街。試合が行われた首都アンマン。まるでイタリアセリエAの降格圏定席チームがスクデッドをとったかのような大騒ぎ。日本でも渋谷のスクランブル交差点が荒れるけれど、あんなもんじゃなかった。これ以上ない盛り上がりで、僕ら日本人サポーターをのせたバス、動きませんでした。現地の人、我々を見つける度に大はしゃぎ。

「どうだ、日本人。ヨルダンやったでしょ?! ワールドカップ行っちゃうよ! 一緒に行こうよ! ブラジルへ行こう!」

 試合をテレビで見ていた友人、そして報道を見ていた家族から、危険を感じなかったのか、心配されたりもした。

「危なくなかったの? 」

 レーザービームが選手にあてられたり、悪意に満ちたチェスチャーをするサポータがいたり、試合終了後にはかなりの数の観客がピッチになだれこんだりしていたその試合。でもね、嫌な気持ちには全然ならなかった。身の危険を感じる程の物騒な空気というワケではなかったし。どこの国だってやんちゃな奴は少なからずいるもの。試合に負けたのは本当に悔しかったけれど、不条理な気持ちにはならなかった。本気で応援していたら多少の小競り合い位あるのがフットボール。世界事情から比べればかわいいもんではないか、と(全ての国のサッカーを見たわけではないのでエラそうなことはいえまんせんが)。

 ヨルダンの旅。負けたけれど、僕はとても楽しかった。未知の街で感じた気持ち。特に人。どいつもこいつも人懐っこい。街を歩けば声をかけてくる。試合前日は、

「我々が勝つよ」

「ホンダは出ないのかい?!」

「カガーワ!」

ただ歩いているだけで人々が笑顔で話しかけてくる。

試合翌日は、「ブラジル一緒に行こうよ!」握手を求めてくる人もいた。

 とにかくかの地では、誰もが我々の代表のことをよく知っていた。間違いなく我が日本は強豪国として認識されていた。ワールドカップに行くことが当たり前。ヨーロッパでプレーする選手も多くいるサッカー大国。だからあれほどの盛り上がり。納得。

 試合に負けた夜、ヨルダンの街に飲みに行った。たまたま隣に座ったヨルダン人と店内に流れていたBGMの酷さに話が合って、乾杯をした。お互いカタコトの英語を駆使し、その日のフットボールの結果について、議論を交わした。夢を語り合った。馴染みのない国の片隅で、杯を交わし、共に唄い、そして最後はブラジルでの再会を誓った。

 フットボールの魅力ってなんだろう。

 シュートの爽快感。パスサッカーの素晴らしさ。戦術。挫折からの復活等のドラマ。筋書きがないその物語に多くの人が魅了される。僕はその魅力にもう一つ、「出逢い」を加えたい。フットボールは出逢い。言葉なんか通じなくったって、僕らはそれで一つになれる。全く馴染みのない者同士を一瞬にして近づける魔法のボール。ワールドカップ出場という歴史の瞬間をみることは出来なかったけれど、それに気付くことが出来た旅。ヨルダンで僕はフットボールの新しい魅力に気付くことが出来たんだ。僕らはそれで誰とだって繋がれるんだ。

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