FOLLOW US

バスクの誇りを胸に…ユーヴェ移籍のジョレンテが胸中を激白

2013.04.18

[ワールドサッカーキング0502号掲載]
昨夏、新たなチャレンジを望んで契約延長を拒否。フェルナンド・ジョレンテはクラブとの溝を埋められないままユヴェントスへの移籍を決断した。自身の成長を強く望むバスクの点取り屋は、率直な言葉で現在の心境を語ってくれた。
フェルナンド・ジョレンテ
インタビュー・文=ホセ・フェリックス・ディアス Interview and text by Jose Felix Diaz
翻訳・構成=高山 港 Translation and organization by Minato TAKAYAMA
写真=ムツ・カワモリ、アフロ、ゲッティ イメージズ Photo by Mutsu KAWAMORI, AFLO, Getty Images

契約が切れる瞬間までチームに貢献したい

君は今シーズン終了後にユヴェントスへ移籍することが決まっている。ユヴェントスとの交渉が成立した経緯を教えてくれないかな?

ジョレンテ(以下L)――今シーズンが始まる前にユーヴェは俺を獲得する意思をアスレティック(ビルバオ)側に伝えた。だけど、クラブはユーヴェとの交渉に応じようとはしなかった。そこで、俺は待つことを選択したんだ。ユーヴェも、俺とアスレティックの契約が切れるまで待つと言ってくれたからね。そして今年の1月、契約切れまで残り6カ月を切ったから、俺は自分の意思でシーズン終了後にユーヴェに移籍するということを発表したのさ。

一連の“移籍騒動”によって君とクラブの間には深い溝ができてしまったよね。なぜ、このような状況になってしまったのだろう?

L――アスレティックがユーヴェの交渉に応じてくれれば、こんな形でチームを去ることにならなかったと思う。ユーヴェは誠意をもって交渉を求めたけど、クラブは彼らの言い分すら聞こうともしなかったんだ。

契約延長を拒否して移籍を希望したことで、ファンに「裏切り行為」と見なされたことはどう感じている?

L――残念という言葉しかないよ。俺は人をだましたわけじゃない。それなのに「裏切り者」や「守銭奴」呼ばわりされるのは我慢できない。俺は「新しい挑戦をしたい」という自分の正直な気持ちをクラブに伝えただけなのに。

クラブやファンがそういう受け取り方をするのは、“純血主義”を貫くA・ビルバオというクラブの特殊性にもよることなのかな?

L――アスレティックはすごく特別なクラブだ。バスクで生まれた俺にとっては、生涯愛し続けるクラブであることは確かさ。だから、クラブに恩返しをしたいと考えていたんだけどね……。

昨夏に移籍したハビ・マルティネスは約40億円もの移籍金をクラブにもたらした。君も同じ時期に移籍していれば、“恩返し”をできたはずだよね。

L――クラブにとっても俺にとっても昨夏のタイミングで移籍することがベストだったと思う。でも(ホス)ウルティア会長は立場上それを認めることができなかったのさ。そんなことをしたら、彼がファンからの批判の矢面に立たされることになるからね。

主力選手の移籍を認めないクラブの姿勢について君はどう思っている?

L――今回の一件は選手に良いメッセージを与えたとは思えない。このことでチームメート全員が将来に関して疑心暗鬼になっている。俺や(フェルナンド)アモレビエタの問題が、将来、自分の問題になる可能性があるわけだからね。

ユーヴェへの移籍が決まった後、マルセロ・ビエルサ監督やチームメートの反応はどうだった?

L――チームメートとは何の問題もなかったし、これから先も、問題はないと思っている。全員がこうなることを知っていたからね。俺とビエルサの関係? 2人ともプロフェッショナルだよ。彼が命令を出し、俺はその命令に従って動く、それだけのことさ。確かに今の俺は出番が少ない。それが監督の決断だということだ。

スタメンでピッチに立てない日が続いていることに不満はないの?

L――それがサッカーの世界なんだ。俺とクラブは契約更新の合意に至らなかった。その結果、監督は一つの決断を下した。近い将来移籍することが決まっている“不確定”な選手の代わりに他のFWを起用する決断を下したのさ。監督はあくまでチームの利益を考えて決断を下したんだろう。だから、俺としても認めざるを得ないんだ。

A・ビルバオは昨シーズンの好調がうそのように低迷している。君がスタメンを外れていること以外にどんな原因があると思う?

L――昨シーズンの長くて厳しい戦いで、チーム全体が疲弊してしまったことが一番の原因だと思う。ヨーロッパリーグとコパ・デル・レイの決勝に進出した昨シーズンは、俺たちにとってはこれ以上はないというシーズンだった。でも、その疲れを取り除くだけの時間的余裕がなかったんだ。それにプレシーズンのキャンプで、監督の要求は更に大きなものになっていた。彼が指示する厳しいトレーニングをこなせる選手は少なかったし、中途半端な形でシーズンに臨むことになってしまったんだ。

残りのシーズン、君は何をすべきだと考えている?

L――俺はアスレティックに対しては感謝の気持ちしかない。契約が切れる瞬間までチームに貢献したいと思っている。そのための準備は怠らないつもりだ。

A・ビルバオでプレーして得たもの、学んだことはどんなこと?

L――チームカラーへの愛、クラブのエンブレムへの愛だろうね。これだけはどこのチームでプレーしようとも絶対に変わることはない。アスレティックは俺たちバスク人にとっては単なるサッカークラブじゃないんだ。

“バスク純血主義”についてはどう思っている?

L――チームの強化という面では他のチームに劣ることもあると思う。だが、これが俺たちバスク人の人生哲学であり、サッカーの“解釈”でもあるんだ。

つまり、君はA・ビルバオのクラブポリシーを理想的なものと感じているということ?

L――理想的とは言えないかもしれない。それもサッカーの理解の方法の一つだと言うことさ。問題は俺たちの周囲でグローバル化がどんどん進んでいるということだ。周囲の国際化が進む中で、独自の哲学を貫くことが年々難しくなっていると思う。

それは「クラブが主力選手を移籍させることも考えるべき」という意味も含まれているのかな?

L――そうだね。それにスペインの経済不況というシビアな側面もある。今やスペインの中小クラブのほとんどが、経営難に陥っている。高額なオファーがあれば、主力であっても放出せざるを得ない状況にあるんだ。

自分が更なる高みに到達できると信じている

ここからは新天地への話を聞かせてほしい。多くのオファーがあった中で、なぜユヴェントスを選んだの?

L――最も積極的に誘ってくれたのがユーヴェだったんだ。それに、ユーヴェがヨーロッパで最も偉大なクラブの一つだということもある。ユーヴェは降格を体験した後、常に成長を続けて、セリエAの地位を取り戻し、再びヨーロッパの頂上に返り咲こうとしている。伝統のあるクラブの新たな歴史を作る手助けをしたいと思ったんだ。

君のプレースタイルはプレミアリーグ向きだと言う声が多いけど、プレミア行きという選択はなかったのかな?

L――プレミアリーグは確かに俺には合うかもしれない。でも、俺にとって最も大事なことは、俺を本当に必要としているかなんだ。ユーヴェはそれを示してくれた。だから、俺にはユーヴェ以外のオプションは存在しなかったのさ。

今シーズン、君の出場機会は少ない。試合勘など、コンディションの面で不安はない?

L――ベストな状態でないことは認めざるを得ない。今シーズンはリーガで先発出場したのがわずか2試合だけだからね。でも、俺にとって幸いだったのは既にユーヴェへの移籍が決まっていることだ。コンディションを整える時間はもちろん、戦術に適応する時間も十分あると思っている。

ユヴェントスのサマーキャンプは過酷なことで有名らしいけど。

L――ビエルサのトレーニングも厳しかったから、その点については全く不安はないね。

ユヴェントスでは君の特長であるパワーを生かしたポストプレーが主な仕事になるのかな?

L――ユーヴェが、単に高さや強さを生かして前線で競り合う選手を求めていたら、俺にオファーなど出さなかっただろう。イタリアには俺よりも屈強な選手がたくさんいるからね。

では、どんな役割だと思う?

L――俺はボールスキルにも自信を持っている。単に体格を生かして相手と競り合うだけの選手だとは思っていない。俺は“フットボール”ができるつもりでいる。パワーだけじゃなく、インテリジェンスも活用してゴールを決めたいと思っている。

君はどんなタイプのストライカーになりたいの?

L――より完璧なストライカー、よりうまいストライカーになりたいね。

フェルナンド・ジョレンテにとって、理想のストライカーは誰なの?

L――現時点で名前を挙げるなら、(リオネル)メッシと(クリスチアーノ)ロナウドの2人しかいないだろう。メッシはパワーとテクニックを兼ね備えた選手だ。ハーフウェーラインでボールをもらって、それをゴールまで持っていくというのは、底知れない力がある証拠さ。彼ほど決定力のある選手は他にいない。決めるべきところを確実に決める。それに、野心溢れる選手だ。言うことなしだよ。ロナウドはパワーだけじゃない。スピードとテクニックに加え、独特のキック力を持っている。メッシとロナウドを足して2で割るようなストライカーが俺の理想だね。

セリエAは君がその理想像に近づくために最適な環境だと思う?

L――イタリアは強力な守備が特徴のリーグだ。厳しいマークにさらされるストライカーにとってはかなりタフな環境だと言える。でも、俺はそんなことを恐れたりはしない。ここでなら、自分が更なる高みに到達できると信じている。

できる限りのことをしてユーヴェの勝利に貢献したい

イタリアで新しいキャリアをスタートさせるジョレンテが思い描く「目標」とは? 続きは『ワールドサッカーキング0502号』にて!

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

RANKING今、読まれている記事

  • Daily

  • Weekly

  • Monthly

SOCCERKING VIDEO