2013.04.05

大きな決断を迫られるチェルシー、“鉄人”ランパード放出の是非

[ワールドサッカーキング0418号掲載]
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文=フットメディア Text by Footmedia
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

2001年の入団以来、12シーズンで積み上げてきたゴールは200。チェルシーの栄光の中心には常にフランク・ランパードの姿があった。そんな“レジェンド”も、クラブとの契約期間は残りわずか数カ月。契約延長か、放出か。チェルシーは大きな決断を迫られている。

クラブの思惑とは裏腹に存在感を増すベテラン

 昨シーズンのチャンピオンズリーグ優勝後、チェルシーのチーフ・エグゼクティブを務めるロン・グーレイは、2013年夏で満了するフランク・ランパードの契約問題について、「9月には解決する」と話した。だが、待てど暮らせど、サポーターに契約延長の吉報は届かず、「退団」の二文字がまことしやかにささやかれた。火のないところに煙は立たない。クリスマスを迎えた頃、ランパードはクラブから「契約を更新しない」と通告された。

 その事実が明るみに出て以降、アメリカのLAギャラクシー、中国の貴州人和といった新興勢力が獲得に興味を示し、資金力を持つモナコやパリ・サンジェルマン、更にはフリートランスファーという好条件に誘われたマンチェスター・ユナイテッドやアーセナルまで、様々なクラブの名が浮かんでは消えていった。

 しかし、当の本人は去就に関して一切口をつぐみ、ただゴールネットを揺らし続けている。愛するクラブから“不要”のレッテルを貼られながら、ポーカーフェイスを貫ける理由は一つだけ。それは、ランパードが「チェルシー残留」を諦めていないからだ。

 所属クラブとの契約期間が残り半年を切った選手は、他クラブと自由に交渉することが可能だが、ランパードの場合はどのクラブとの交渉も進展の報は聞こえてこない。クラブ・ワールドカップ後のプレミアリーグ13試合で8ゴールと、調子は目に見えて上がっている。3月17日のウェストハム戦ではチェルシーでの公式戦通算200ゴールをマークし、ボビー・タンブリングが持つクラブ歴代最多記録の202得点まであと一歩に迫った。クラブの決定を覆し、新契約を勝ち取るには、黙って結果を出すしかない。それを誰よりも分かっているからこそ、ランパードはまるで職人のように粛々とプレーができるのだ。

オーナーを翻意させた2つのファクター

 ランパードの目覚ましい活躍を受け、2月にデイリー・メール紙が「チェルシー、ランパードと契約延長交渉を開始」というスクープを打った。チームの若返りのためにベテランの放出を決めたロマン・アブラモヴィッチが翻意し、1年の契約延長をオファーすべく話し合いを始めたという内容だ。チェルシー側は「選手との契約に関してはコメントしない」と話し、記事を肯定も否定もしなかったが、“放出予定”だった年末時点と比べれば再評価されているのは間違いない。早ければシーズン中にも、契約延長の公式発表があると見ていい。

 オーナーの心変わりを確信できる理由は大まかに2つある。まず、本人が国外移籍を嫌っていることだ。チェルシーでは不動のレギュラーではなくなったとはいえ、ランパードは今なおイングランド代表の主力として目前に迫った代表100キャップ達成、そして2014年ワールドカップ出場を目標としている。代表監督のロイ・ホジソンからは、「視察の目が届くイングランドにとどまってほしい」と請われており、今夏の国外移籍は極めて可能性が低い。

 これまでの貢献に感謝した上で国外に送り出すのがオーナーの当初のシナリオであり、タイトルを争う国内のライバルに譲り渡すのは明らかに想定外。ましてや、数々のベテランを輝かせてきたアレックス・ファーガソン率いるユナイテッドで活躍されるリスクは絶対に避けたいところだ。

 もう一つは、ラファエル・ベニテスの招聘がサポーターの怒りを買った矢先にランパードの退団騒動が表に出たこと。これにより、オーナーの求心力は著しく低下し、ここ数カ月、クラブの公式ツイッターやウェブサイトには多数の抗議が寄せられているという。昨年12月以降、スタンフォード・ブリッジでは度々「Sign himup」(彼と契約しろ)というチャントが聞かれ、2月にテレグラフ紙が行った「ランパードに新契約をオファーすべきか」というアンケートでも、実に85パーセントのウェブユーザーが「イエス」と答えている。オーナーもスタジアムの空気感、ファンの心情や世論の変化は感じている。クラブのアイドルを残留させることは、そうした問題の“火消し”になるはずだ。

ベテランの活用術をライバルから学べ

 政治的な面を抜きにしても、ランパードが価値ある人材であることは疑いようがない。6月で35歳になる“鉄人”は、ベンチを温めることも認めており、出場機会の減少に不満を述べることは決してない。一方で、ピッチに立てば常に100パーセントのプレーとフィットネスを約束してくれる。盟友ジョン・テリーは、この業界随一のプロフェッショナルが「チェルシーのライアン・ギグスになれる」と太鼓判を押している。また、良きライバルであるスティーヴン・ジェラードも、「もしチェルシーが彼を放出しても、あと2年はトップレベルで活躍するだろう。彼のような選手は、いなくなって初めて重要性が分かるのさ」とコメントしている。

 クラブからすれば、30代半ばを過ぎたベテランに複数年契約をオファーするのは難しい。しかし、誰もが認める結果を出し、本人が残留を望んでいる限り、単年契約という形ででもそれは報われなければいけない。もちろん、ランパードという“指南役”の存在が、結果としてスムーズなチームの若返りをもたらし得ることもクラブは考慮すべきだろう。そうやって成功してきたのがプレミアの盟主ユナイテッドである。チェルシーを真のビッグクラブにしたいのなら、アブラモヴィッチはファーガソンのメソッドに学ぶべきだ。

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