2013.02.24

4種のレフェリーは子どもたちと一緒に、サッカーを楽しむ気持ちで試合に臨んでほしい

4種のレフェリーは子どもたちと一緒に、サッカーを楽しむ気持ちで試合に臨んでほしい
 レフェリーはサッカーの試合になくてはならない存在。子どもたちの試合では、サッカー経験の有無にかかわらず、保護者の方がレフェリーを務めることも少なくありません。やってみたいけど自信がない、やってはみたけれど不安が大きい、そんな声にお応えして、サカイクでは町クラブのお父さん審判の声を紹介しましたが、今回はその第二弾。審判資格を認定する立場の協会はどう考えているの?
 というわけで、日本サッカー協会審判委員会で普及部会長を務められている高橋武良さんに、4種のレフェリーについてお聞きしました。

■子どもたちの試合で笛を吹くということ

「みんなでサッカーを楽しみましょう」

 高橋さんのメッセージは明快です。

「レフェリーのトップはもちろん国際審判員やJリーグで笛を吹くレフェリー。そのほかにも地域リーグや都道府県リーグを支えているレフェリーがいますが、サッカーをするお子さんを持つ保護者の方々も参加される4種のレフェリーは、いわばサッカー全体を支えてくれる人たちです」

 日本サッカー協会(JFA)ではトップレフェリーの育成に力を入れ、南アフリカ大会で4試合の主審を務めた西村雄一さんをはじめ、これまでに4人のレフェリーがW杯で主審を務めています。しかし、それと同じくらい、子どもたちの試合で笛を吹く、レフェリーは大切なのだと高橋さんは言います。

「プロのレフェリーや、それを目指す層とは求められている目標が違いますから単純に比較はできませんが、レフェリーの役割は同じ。『サッカーを競技規則に則って、正しく試合を進めていこう』この根っこの部分は変わりません」

 レフェリングが成長段階の子どもたちのプレーに影響することもあるそうです。
「たとえば『ボールタッチを増やしていこう』というプレーの目標があったとします。そのためにはなるべくファルが少ない試合が望ましく、ファウルをせずにボールを奪う技術が必要になります。しかし、レフェリーが試合中にどのプレーがファウルか? なんて考えていたのでは遅いのです。プレーヤーである子どもたちが迷ってしまいます。レフェリーと指導者の方があらかじめファウルの基準をしっかり把握して、その基準の下に選手に指導することが必要です。また、保護者の方にも共通理解の下で単に勝ち負けだけではなく、いいプレーを褒める、ジャッジを受け入れる、そういった環境作りが理想ですね」

 JFAでは、指導者や保護者にむけたルール講習会などを通じて、ルール、さらにはサッカーをもっとよく知ってもらおうという活動を準備しています。
「主審、副審をやらない保護者の方もルールを学ぶとサッカーがもっと楽しくなりますよ。同じ見るでも、子どもたちのやっていることをきちんとわかった上で試合を見てみると、また新しい発見があるものだと思います」

4種のレフェリーは子どもたちと一緒に、サッカーを楽しむ気持ちで試合に臨んでほしい
■8人制=主審1人制にあらず

 巷で話題? の8人制導入による1人制審判についてもお話をお聞きしました。これについては少し誤解があるようで・・・・・・。

「8人制になったからと言って、すべての試合を1人制審判にしなさいということではないんです。子どもたちのサッカーとはいえ、1人ですべてを見るのは大変です。特に資格を取ったばかりのレフェリーにいきなり1人で主審をやれと言うのは無理があります。ある程度経験を積んでいただいてからチャレンジということになるでしょう。全日本少年サッカー大会でも1人制と3人制をラウンドごとに分けて実施しています。大会で1人で主審を務めているのは、3級のなかでも経験を積み、更に上のクラスで吹きたいという意欲のあるユース審判員です」

 かなり経験を積んでからではないと難しいという主審1人でのゲームコントロール。お父さんレフェリーはやはりアシスタントレフェリーから始めるのが良さそうです。

「まずはアシスタントレフェリーですよね。横から見ていてオフサイドがわかるようになって、次のステップとして主審をやってみる。笛を吹いてみるということですね。ピッチのなかで笛を吹いて音を出すというのは、意外に大変なことなんです。そこがまず第一歩ですね」

 とはいえ、やる気のある方はどんどんチャレンジして欲しいと言う高橋さん。「もちろんお子さんのサッカーをきっかけに1人で主審ができるお父さんが増えてくれるとうれしいですね」と笑います。

 経験の浅い人がアシスタントレフェリーに入るときは主審に経験豊富な人を配置する。逆に初めて主審を務める人が笛を吹く場合は、アシスタントにベテランを据える。こんな工夫だけでも、ずいぶん安心してレフェリングができそうです。また、1人制審判を導入するにはレフェリーの技量だけでなく、プレーヤーの協力が必要です。

子どもたちにもファウルだと思ってもプレーを止めない、逆にファウルをしないでボールを奪うといった意識を芽生えさせることによって、結果として技術面でも上手く、強い選手を育てることになるはずです。

「今日のレフェリーはどうだということよりも、レフェリーの影響を受けない、しっかりとしたプレーができる子どもたちが増えることで、サッカーの質も向上していくのではないでしょうか」

■レフェリーもサッカーファミリーの一員

 これから審判を始めようという人、もう少し上を目指そうという人に必要なことってなんでしょう? 素朴な質問をぶつけて返ってきたのが冒頭の言葉でした。

「サッカーを楽しむことです。審判目線というのを意識するあまりガチガチになって子どもたちへの接し方も堅いものになってしまう。そんな主審が笛を吹く試合はやっぱり堅くてつまらないものになってしまいます。『楽しむぞ』という気持ちで試合に臨んでいるレフェリーは端から見ても雰囲気でわかりますよね。選手にも自然と声をかけて、一緒にサッカーを楽しむ。これが原点なのではないでしょうか」

 確かに、子どもたちが楽しむはずのサッカーなのに、やたらと高圧的だったり、杓子定規だったり、見ていてこちらも緊張してしまうようなレフェリーっていますよね。役割は違っても、レフェリーも、選手も、観ている人も、ひとつの試合を作り上げるサッカーファミリー。楽しむことを忘れてはいけません。

「これはトップクラスのレフェリーにも言うことですが『自分でもプレーをしよう』ということなんですね。レフェリーになっても、サッカーはやめない。どのレベルでもいいからボールを蹴っている。プレーヤーの気持ちを忘れずに笛を吹く、これがレフェリーにとって一番大切なことです」

 ルールを知ることは、サッカーを知ること。サッカーを知ることは、よりサッカーを楽しむこと。子どもたちとより深くサッカーを楽しむためにレフェリーを始めてみませんか?

4種のレフェリーは子どもたちと一緒に、サッカーを楽しむ気持ちで試合に臨んでほしい
高橋 武良(たかはし たけよし)//
1961年8月23日生まれ、東京都出身。1998年から日本サッカー協会審判委員会(指導育成部会部員)、2006年から日本サッカー協会審判委員会(委員/登録部会長,普及部会長)。現役の東京都公立中学校教諭でもある。

取材・文/大塚一樹 写真/サカイク編集部
サカイク

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